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異語り 111 学校童子

コトガタリ 111 ガッコウワラシ

子供の修学旅行の写真販売が始まった。
上の子の時は、学校まで出向き廊下に貼り出された千枚以上の写真の中から我が子を探す、かなり難易度高めのミッションだった。
今は、ネットでゆっくりと選んでそのまま注文も会計もできるのでとても楽だ。

普段はあんまり見ない友達と一緒の笑顔などを眺めつつ、我が子を成長ぶりに少しウルッとしたり。
顔つきが変わってきたお友達をじっくりと観察したりしてみる。

こういう写真は不公平にならないように、大体まんべんなく(もしくは順番に)撮ってあるはず。


そんな中はやたらと写り込んでいる子に気がついた。

我が子でもないその子に気がついたのは格好がとても派手だったから。
山吹色のフード付きジャンパーと赤いTシャツ姿。
隅っこにちょっと見切れるだけでもすごく目につくのだ。

写りたがりでカメラマンさんの周りをチョロチョロしているような感じではなく、大きく映る子供達の後ろをたまたま通りがかった風の写真が多い。

写真は何となくクラスごとに撮影されているのだけど、各クラスにまんべんなく写り込んでいるような気がした。


興味が湧いたので何組なのか突き止めてやろう、とクラス写真を探してみることにした。
でもこれが見つからない
ジャンパーを脱いでしまったのか、着替えたのか、黄色と赤の組み合わせはどのクラスにもいないのだ。
しょうがないので顔を覚えてじっとにらめっこする。
ありがたいことにネットの写真は拡大まで出来るからとても探しやすい。


でも見つけられなかった。

もうお手上げだと思い子供を呼んで直接聞いてみた。
「この子何組の子知ってる?」
「うーん」
かなりしっかりと写真を見つめて、ゆっくりと首を傾げた。
「見たことはある気がするけど、名前とか何組とかは知らない」
「そっか、残念」
「なんで?」
「いっぱい写真に写ってるし、目立ってたから気になったんだ」
「ふーん、あんま話したことないからよく知らないや」
「でも、学校にはいるんだよね」
「……いたと思うよ」
なぜかちょっと自信なさげに微笑まれた。

昔話として、子供だけで遊んでいるといつの間にか1人増えている。なんて話をよく聞く。
全員知っている顔なのに数えると1人多いらしい。
ぬらりひょんと言う妖怪も気がついたら仲間に入り込んでいるらしいが、子供だから座敷童子かな? 座敷じゃなくて学校だけど……。

写真の中のその子の顔は、他の子と同じように楽しそうに笑っている。
普段から学校にいて一緒に遊んでいるのかも知れない。 

そういえば、うちの学校はこの少子化の時代にもかかわらず徐々に生徒数が増えてきている。

今年の新1年生は6クラスもあったそうだ。
学校童子様のご利益かな?

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