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本屋納めと本屋始め

本好きにとって、その年の最後に行く本屋と、新しい年になって最初に行く本屋はやはりちょっと特別である。
年末は「これが最後の本屋か」となぜか襟を正すような気持ちになるし、年始に本屋に行くのはワクワクする。

2023年、私の本屋納めは12月30日だった。
朝、吐く息が白くなる寒さの中、なじみの古本屋に向かう。
道中の公園では、何匹もの鴨が寒い川に浮かんで年を超そうとしている。
見るとやる気がなく川に流されている鴨もいる。
古本屋の道すがら、公園を散歩するのは気持ちがいい。

古本屋は店内が年末特有のふわふわした雰囲気で満たされていて心地がよかった。
私は「本についての本」が好きなのだが、その棚が補充されていてホクホクとなりながら本を手に取っていく。
買った本は
『高円寺 古本酒場ものがたり』狩野俊
『「無能の人」のススメ』竹中直人(編)
『ヘンな本あります―ぼくはオンライン古本屋のおやじさん2』北尾トロ
『BRUTUS 2014年 1/15号(本特集2014)』

レジで店主と立ち話。
冬になるとお客さんが減るなど世間話。年末の挨拶をして別れる。

その後は街中の新刊書店へ。
実は、この店で買おうか迷ったある本がずっと心の片隅に残っていたのだ。
その本が出版されたのは2015年で、おそらく絶版。
ある古本屋の本なのだが、そこまで有名ではなく、その本ももしかしたら2015年からずっと棚に残っているのかもしれない(その証拠に背表紙が日焼けしていた)
半年ほど前、初めてこの本を見つけたときは「まさかこの本が新刊書店の棚に刺さってるとは」と驚いたもので、それからずっと心に残っていた。

改めて棚を訪れてみると、果たしてその本はあった。
もう私が買わないと、この本はずっとここにあるのではないか。
ただ、古本屋に行った後は新刊書店の本がやたらと高く感じる。
値段を見てみると税込み2,200円。古本が3冊買える。
この本もネットで古本として買えば安く買えるのだろうが、それでも私はその本をレジに持って行った。
棚で何年も過ごしたであろうこの本になんとも言えない親しみを感じてしまっていた。

そうして私は、その年最後の本屋を後にした。
心残りを来年に持ち越さず、しっかりと納めることができた。
そんなすがすがしさとともに。



年が明けて1月1日。
私は街中のブックオフの前にいた。
ブックオフは年明けにセールをやるのが恒例になっていて、今年は全品20%オフである。

今年初の本屋ということもあり、ワクワクしながら棚を徘徊する。
普段は110円の均一棚を見るのだが、セールで強気になった私はそれ以外の棚も見ていく。
そして気づく。今日はマンガ棚がいい。

『浅野いにお短編集 ばけものれっちゃん/きのこたけのこ』浅野いにお
『僕の小規模な失敗』福満しげゆき
『昼のセント酒 』久住昌之 , 魚乃目三太
『夜の太鼓』山川直人
『日常の淵 現代マンガ選集』ササキバラゴウ(編)
『1日外出録ハンチョウ』1,2巻 福本伸行, 萩原天晴, 上原求, 新井和也

を買った。

たくさん買ったけど、レジで20%オフになってなんとなくお得な気分。
帰り際、文庫の棚を軽く見ていると、荻原魚雷の『本と怠け者』を見つけた。
最近この荻原魚雷の、いい意味でやる気のない文章にハマっているのだが、初期の本は絶版になっており探していたのだ。
もちろん、ネットでなら簡単に買えるのだが、どうせなら地元の古本屋で買いたい。
そんな本が見つかったので、とてもうれしくなり、ホクホク顔でレジへ。

思わぬお年玉があった本屋始めとなり満足満足。
2024年も楽しい本のある生活が送れそうである。

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