見出し画像

総合商社と専門商社、真の割安商社株はどの銘柄か? 割安株の探し方 vol.33

 閲覧ありがとうございます。
 株まとめ@元証券マンと言います。良かったら、いいねやコメント、フォローなど頂けると嬉しいです。

⚫︎プロフィール記事はこちら➡︎ 『【プロフィール記事】元証券マンだからこそ、正しい投資の知識を伝えたい!』

⚫︎割安株分析の記事リストはこちら➡︎『割安株の探し方シリーズ(記事まとめ)』

⚫︎Twitterのアカウントはこちら➡︎株まとめ@元証券マン

 

 

 vol.32の記事で、2019年12月6日の株価により、以下の基準で銘柄スクリーニングを行いました。

(1)東証一部上場
(2)予想PERが8倍以下 
   ※8倍以下の理由はこちら
(3)実績PBRが1倍以下 
   
※1倍以下の理由はこちら
(4)配当利回りが4%以上 
   ※配当利回りの注意点はこちら
(5)1単元が100万円以内


 その結果、13業種35社が抽出されました。

 今回の記事では、その中で最も一業種当たりの抽出数が多かった、卸売業の銘柄について見ていきたいと思います。




①卸売業セクターの概要

 卸売業セクターには、就活でも非常に人気のある商社株が名を連ねます。

 商社は幅広い商品・サービスを扱う総合商社と特定の商材を扱う専門商社に区分されます。

 特に5大総合商社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠、丸紅)と言うと馴染み深いでしょう。

 一方で、特定分野の商材に特化しており、売上の50%以上が特定の商品である場合に、専門商社と呼ばれます。


 商社が行う卸売業自体は仕入れて売るという昔ながらのビジネスです。

 原油や石炭などの資源や、穀物などの食料品を扱っているイメージが強いかもしれません。

 しかし、(特に総合商社は)扱う商材が多岐に渡ることや、卸売業以外にも投資会社のような性格も強く、何をやっている会社なのか実態把握が難しい面もあります。


 ちなみに、卸売業の時価総額上位3社は以下のようになっています。(2019年12月9日終値時点)

(1)三菱商事:4兆6,462億円 PER 8.5倍、PBR 0.81倍
(2)伊藤忠商事:3兆8,932億円 PER 7.3倍、PBR 1.23倍
(3)三井物産:3兆4,461億円 PER 7.6倍、PBR 0.81倍

 ※2019年11月末、卸売業平均:PER 13.2倍、PBR 0.9倍
 ※2019年11月末、東証一部平均:PER 17.4倍、PBR 1.2倍


 卸売業平均自体が、東証一部平均より若干低めですね。

 では次に、具体的な銘柄について見ていきましょう。



②スクリーニングにより抽出された具体的な卸売業の銘柄は?

 vol.32の記事(2019年12月6日付)でスクリーニングを行った結果、以下の商社株が抽出されました。

※時価総額は2019年12月6日時点の終値です。


(8031)三井物産 3兆4,191億円 
(8053)住友商事 2兆0,641
(8002)丸紅 1兆4,336億円

ーーーーーーーー5大総合商社の壁


(2768)双日 4,455億円 ※総合商社

(9810)日鉄物産
 1,673億円 ※日本製鉄系列の鉄鋼専門商社

(8020)兼松
 1,229億円 ※電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント

(7414)小野建
 301億円 ※鋼材、建設機材の専門商社

(8075)神鋼商事
 235億円 ※神戸製鋼系の鉄鋼専門商社

(8065)佐藤商事
 203億円 ※金属専門商社

(3023)ラサ商事
 117億円 ※鉱物、金属素材や特殊ポンプ等の専門商社

(8007)高島
 79億円 ※建材、物流(産業)資材の専門商社

(8091)ニチモウ
 75億円 ※水産品、漁網・漁具、食品加工機械

(3321)ミタチ産業
 59億円 ※車載用とアミューズメント向け電子部品、液晶の専門商社

 
 5大総合商社とそれ以外での規模の差が激しいですね。

 総合商社と専門商社では特徴が全く異なるので、商社株を分析する際は両者を分けて考える必要があります。



 

③各銘柄の業績及び配当推移は?

 それでは、各銘柄の一株あたり利益及び配当金の推移を見ていきましょう。


(8031)三井物産:一株利益及び配当共に右肩上がり
(8053)住友商事一株利益及び配当共に右肩上がり
(8002)丸紅一株利益及び配当共に右肩上がり
(2768)双日一株利益及び配当共に19.3期までは右肩上がりだが、その後横ばい
(9810)日鉄物産一株利益及び配当共に右肩上がり
(8020)兼松一株利益及び配当共に右肩上がり
(7414)小野建一株利益及び配当共に横ばい
(8075)神鋼商事一株利益及び配当共に横ばい
(8065)佐藤商事一株利益及び配当共に横ばい
(3023)ラサ商事一株利益は横ばい、配当やや右肩上がり
(8007)高島一株利益及び配当共に横ばい
(8091)ニチモウ一株利益は波が激しい、配当横ばい
(3321)ミタチ産業一株利益及び配当共に波がある


 見て頂けるとわかるかと思いますが、時価総額が高い企業ほど業績と配当が右肩上がりで、低い企業ほど横ばいの傾向があります。


 それではなぜ、これらの商社株は割安のまま放置されているのでしょうか。

 総合商社と専門商社に分けて見ていきたいと思います。




④なぜ総合商社の投資指標は割安なのか?

 ではまずは総合商社に絞って、割安な理由を見ていきましょう。

 理由は大きく3つあります。

※こちらは以前書いた記事からの引用になります。


(理由1)収益構造がわかりにくいから

 例えば三菱商事であれば、2019年3月期時点で連結対象会社(子会社+持分法適用会社)が1400社以上もあります。
 
 グループ会社が多ければ多いほどビジネスモデルは多角化し、会社の理解が難しくなります。

 また総合商社という形態自体が日本特有のものであり、日本株の保有率の約3割を占める外国人法人等にとってはさらに理解しにくい企業群となっています。
 参考)2018年度株式分布状況調査の調査結果について

 株価はあくまで買い手と売り手との間の需要と供給により決定されますので、理解しにくい企業の分析に時間を使うよりは、もっと理解しやすく成長期待が持てるその他の業種に、資金が集まるというわけです。


(理由2)投資会社化しつつあり、利益の割に手元現金が少ないから

 三菱商事を例に挙げますと、実に1400社ほどのグループ会社がありますが、その中には子会社だけではなく、持分法適用関連会社と言って、利益は親会社の決算に反映させるものの、現金・預金などは親会社ではなくその関連会社自身に帰属するという性質の会社があります。
 
 この持分法適用関連会社が大きく利益を上げたとしても、親会社である三菱商事には配当金など限られた手段でしかキャッシュを移すことができず、三菱商事の連結決算ではかなり利益が出ているように見えても、実際のキャッシュはそこまでないという状態になります。
 
 株主が重視するポイントの一つに配当による還元がありますが、手元キャッシュが少ないと物理的に配当金に回す資金が足りなくなるため、その点を懸念して株価が伸び悩んでいるという面もあります。

 この点は、ファンド収益の占める比率の高いソフトバンクグループでも同じことが言えるかもしれません。


(理由3)資源価格等の外部要因で株価が動きやすいから

 これは特に資源を扱う総合商社に当てはまるポイントですが、例えば三菱商事の株価は原油価格の上げ下げに非常に影響を受けます。

 原油のような資源の価格を予想することは非常に難しいので、その点も商社のリスクとしてネガティブに捉えられがちです。



⑤なぜ専門商社の投資指標は割安なのか?

 次に専門商社に絞って、割安な理由を見ていきます。

 大きく理由は2つあります。


(理由1)専門商社不要論が現実化するリスクがあるため

 全ての専門商社ではありませんが、あまり専門的知識やノウハウを持たず、ほとんど代理店としての機能しかない専門商社も中には存在します。

 そのような専門商社は、言わばメーカーと小売業者の間に入って中抜きをしているにすぎないため、その状態を嫌って、年々メーカーと小売り業との直取引が増えてきています。

 一方で、総合商社は純粋な卸売り業者というよりもはや投資会社の性質が強いため、このような商社不要論はあまり当てはまりません。

PRESIDENT ONLINE『総合商社が"不要論"を乗り越えられた理由』


(理由2)海外進出がうまくいくのか懐疑的であるため

 すぐに業績悪化するというリスクは低いですが、日本国内の卸売り市場は頭打ちのため、長期的には海外進出できなければ衰退していくと考えられています。

 ただ、一言で海外進出と言ってもそう簡単にはいきません。

 日本とは全く異なるマーケットですし、 その国の法規制などのリーガル面のノウハウも必要になりますし、そもそも現地法人が競合になります。

 総合商社ほどの規模とネットワークがあれば良いですが、特に独立系の専門商社はなかなか難しいのではと思います。



⑥買い検討可能な商社株はあるか?

 ここまで、総合商社・専門商社それぞれのリスクについて見てきました。

 その上で、以下の銘柄は買い検討可能だと考えます。

(8031)三井物産
(8053)住友商事
(8002)丸紅
(9810)日鉄物産
(8020)兼松

 理由としては、一株利益及び配当が堅調に右肩上がりになっているからです。

 前述の通りリスクはありますが、日経全体が上昇している今、数少ない割安銘柄だと思いますので、1社ずつ丁寧に見ていきたいと思います。



⑦まとめ

 今回は、商社株について見てきました。

 総合商社・専門商社、それぞれ特有の割安の理由がありましたね。

 次回の記事では、総合商社の1つ、(8031)三井物産について詳細を見ていきたいと思います。




⚫︎プロフィール記事はこちら➡︎ 『【プロフィール記事】元証券マンだからこそ、正しい投資の知識を伝えたい!』

⚫︎今までの記事はこちら⇒『割安株の探し方シリーズ(記事まとめ)』

❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
ここまで読んで頂きありがとうございます。わかりやすく読みやすい文章を心がけて、自分にとっても皆様にとっても投資判断の一助になるように、日々情報発信をしていきたいと思っています。

良かったら、いいねやコメント、フォローなど頂けると嬉しいです。
今後とも宜しくお願い致します。
 (Twitterのアカウントはこちら➡︎株まとめ@元証券マン


#株式投資 #株 #投資 #資産運用   #ビジネス #割安株 #割安銘柄 #バリュー株 #バリュー投資 #商社 #総合商社 #専門商社

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?