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【P-005】マーケティングは昭和のプロレスに学んだ(4)

プロレスラーの製品差別化戦略

現在のプロレスは、多種多様な団体が存在し、そこで活躍するレスラーも個性に溢れています。技や動きもさることながら、髪型やコスチュームまで、色々と凝っています。ここまで差別化出来るとキャラクターとして確立し、例えばグッズ展開等もしやすくなります。その辺も十分に考えられているのでしょう。

このようになったのは、やはりファンの声、要望を反映した結果です。その時代に応じて変化し、進化しなければ生き残れないので、プロレスは、マーケティングがしっかり機能しているわけです。
昭和のプロレスは、ここまでの進化はありませんでしたが、しっかりと差別化されていたので、マーケティングのセンスは素晴らしいものがあったと思います。

差別化1)タイツの色

強さの象徴・黒のタイツ

昭和のプロレスでは、タイツの色でレスラーを語ることが出来ました。日本のプロレスの父である力道山は、黒のロングタイツとシューズというスタイルで有名です。
アントニオ猪木は、黒いショートタイツとシューズ姿の印象が強いです。師匠である力道山のそれを引き継いだのかはわかりませんが、新日本プロレス旗揚げ後の猪木の印象は「黒」です。テレビ中継での古館アナの「…黒のショートタイツ姿で…」というフレーズで印象が強くなった部分は多いにありますが、とにかく「黒」です。

猪木には、強くなるためにひたすら練習する、というイメージがあります。ファンもその辺を理解していたので、練習したから強くなったという説得力も十分でした。

過度の演出は不要という格好良さ。

黒いタイツとシューズというシンプルなスタイルは、強さを際立だせるための最高のブランドになっていったのです。

昭和の頃は、デビューしたての若手選手は、ほとんどが黒でした。
自分より格上の選手よりも目立ってはいけない、という時代です。‘プロレスリングマスター’こと武藤敬司も若手時代は、坊主頭に黒タイツでした。若手時代を経て、海外遠征し、数年後にメインイベンターとして凱旋帰国する、というパターンは、非常に分かりやすい育成プランでしたが、時代が変わってしまいました。

さて、ジャンボ鶴田も黒いタイツのイメージが強いですが、デビューから10年くらいは、カラフルなタイツをはいていました。キャリアから見れば十分に強かった鶴田ですが、世界の強豪相手に互角に渡り合うも、もう一歩のところで結果を出せない時期が続いていました。俗に言う「善戦マン」と呼ばれていた頃です。
そんな時にタイツの色を「黒」に変更します。ルーテーズ直伝のバックドロップをマスターした鶴田は、当時の世界3大タイトルのひとつであるAWA世界ヘビー級のベルトを巻くことになります。
王者ニックボックウィンクルから、バックドロップホールドで、3カウントを取ったのです。これ以降、プロレス中継では「世界を獲ったバックドロップ!」と形容されるようになりました。
強いレスラーは、とにかく黒なのです。
現代においては、単に地味にしか見えないので、何とも寂しいです。

差別化2)入場テーマ曲

やはり、プロレスは会場で観戦したいです。選手入場時、会場での盛り上がり、観客の一体感は、その場でしか味わえません。
そして、その瞬間は各選手の入場テーマ曲が流れることによって作り出されます。

日本で初めて‘選手の入場テーマ曲’が使われたのは、国際プロレスです。‘選手の’と断ったのは、それまでもテレビ局のスポーツ中継のテーマ曲等が入場時に使われることはありましたが、その選手用として使われたのは、昭和49年にIWA世界王者として初来日したスーパースター・ビリーグラハムが初めてだからです。

その数年後にミル・マスカラスの‘スカイハイ’、そしてアントニオ猪木の‘炎のファイター(イノキ・ボンバイエ)’が出てきます。

テンションが上がる名曲がズラリ!

アントニオ猪木の「炎のファイター(イノキ・ボンバイエ)」
長州力の「パワーホール」
前田日明の「キャプチュード」
ミル・マスカラスの「スカイハイ」
ジャンボ鶴田の「J」
天龍源一郎の「サンダーストーム」
橋本真也の「爆勝宣言」
三沢光晴の「スパルタンX」 等々

人気選手の入場テーマのイントロが流れた瞬間、会場全体が「おぉ~!!」となるのは、ファンが、個々のレスラーを理解し、心の底から応援しているからこそ起こる現象です。その試合に至るまでの経緯(物語)があるからこそ、期待し、その期待の表れが会場の熱気につながるのです。まさに物語(ストーリー)で売る!というプロレスのマーケティング力です。

この入場テーマ曲は、入場の時だけでなく、その選手が勝利した瞬間にも流れます。この時の爆発力も凄いですし、最高に気持ちがいいのです。会場に観に行って良かったぁ、と思うのです。

今でも自分の気分を上げたい時には、「爆勝宣言」を聴きます。最初の5秒を聴いただけでテンションが上がります(笑)。曲が良いこともありますが、同時に橋本真也の闘いっぷりが脳裏をよぎるのです。

今は、派手な格好ばかりのレスラーが多くなったので、より昔と比較してしまいます。これも現代に合わせての変化、進化なので、受け入れないといけないのでしょう。

マーケティングは、売れる仕組みを作ること、究極は売ることさえしないこと(でも売上は上がる)、と言われます。昭和のプロレスには、我々をいつの間にか「そうさせた」様々なマーケティング要素があります。もう少し追いかけたいと思います。 


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