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「キミのいた風景」

もう今は無くなってしまった
路面電車の電停で
学生時代のわたしたちは
よく待ち合わせをしていた

別々の高校に通っていたから
一緒の電車に乗って
途中まで話しながら学校へ向かう朝は
楽しいひと時だったね

わたしの母校もキミの母校も
今は名前も変わり
場所も移転して
元の場所にはもう無い

銀天街は寂れてしまって
一緒によく行った本屋さんも
とうとうこの前、店を閉めた
こんな風に時間の残酷さを知る

キミと過ごした場所が
どんどん無くなっていく
キミがいなくなってからはせめて
風景の中にキミの姿を追っていたのに


丘の上の公園
学生服のキミとわたしが笑っている


キミは逝ってしまい
わたしだけが遺った


ながいながいとしつき


キミのいた風景の残像を見つめながら
わたしは想い出の中でひとり佇んでいる


【詩集】「満月音匣」つきの より

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