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「親子」

わたしはずっと
親であり、子でもあったのだけど
今はもう
子ではなくなってしまった

誰かの子どもでいるという
それだけで
最後に帰る場所があるような気がしていた
家はまだ、其処にあるけれど
祖母も両親も、もう其処にはいない


わたしは子ではなくなったけど
わたしはまだ親だ
親であるというのもまた
心配やもどかしさが絶えないもので
それは、それほどに大切に思っているから

大切に思うものが増えれば増えるほど
人は守ろうとするし弱くもなる
「まえがみ太郎」の火の鳥のように
抱え込みすぎると飛べなくなるけど
それを愚かとは今は言えない


すっかり背の高くなった息子たち
囲まれていれば
一番小さいのはわたし
まるで、わたしが子どもみたい、と
クスッと笑ってみたり


ねぇ
皆それぞれ自由に自分の道を、どうか

……幸せにおなり

わたしは子どもで
わたしは親で

それはとても幸せなことだったのだと

空を見上げながら、今になって、思う


【詩集】「満月音匣」つきの より

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