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「眼鏡」

眼鏡をかけるとよく見える
ボヤけていたものはハッキリして
世界は一段階、明るさを増すようだ
それはとても嬉しいこと

だけどわたしは
いつもは眼鏡をかけていない
コンタクトをしているわけでもない
わたしの世界はいつも輪郭が滲んでいる

世の中には見たくないもの
というのもあって
いたたまれないような
直視したくないような時があって

そんな時、この裸眼の世界に
わたしは救われるのだ
何もかもが見えすぎてしまうことに
耐えられないわたしの脆い心は

もう、いいだろう
今まで色々なものを見てきたのだもの
もう、自分が見たいものだけ
ハッキリと見られたら充分だ

美しいもの、愛おしいものを見るために
わたしは眼鏡をかける

そして

明るくなった優しい世界に
そっと、微笑む


【詩集】「満月音匣」つきの より

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