「流れていく時間の中で」
午後7時過ぎ、薄暗くなった部屋
古い扇風機が首を振るたびに
カチ、カチ、という音が響いている
何だか電灯をつけそびれたまま
そっとベランダに出て
まだ青の残る空を見ていた
いつの間にか昼間の暑さが和らいで
涼やかな風が頬を撫でていく
くすんでいく空色の端に
恥じらうような夕焼け
不思議とみんな柔らかい色に変わっていく
夜の世界が始まろうとしている
さぁ、部屋に戻って灯りをつけよう
扇風機を少し休ませて
もう少し網戸のままで
遠くで車やバイクの音がする
これから帰る人、これから行く人
それぞれの生活を、ふと、思う
そうして、ああ、わたしもまた
この流れていく時間の中で
今日という日の夜を迎えようとしている
【詩集】「黄昏月幻想」つきの より
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