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ヒトデはクモよりなぜ強い
こんにちは。クモといえば幻影旅団を思い出しちゃう、たけぶち(@k_takebuchii)です。
今回はこちら。「ヒトデはクモよりなぜ強い」を紹介します!
一見すると、生物学の本みたいですが、内容は組織モデルを「クモ」と「ヒトデ」に例えて、それぞれの特徴を比較するものです。
それでは見ていきましょう!
「クモ」と「ヒトデ」の違いとは?
早速ですが、組織モデルを「クモ」と「ヒトデ」に例えるとはどういうことなのか?
結論から言うと、中央集権型組織(クモ)と権限分散型組織(ヒトデ)のことを指しています。
はい、急に漢字増えてきましたね。解説します。
本書における中央集権型組織(クモ)は、いわゆる大企業や官公庁を指します。役割/立場、責任の所在、意思決定プロセスがはっきりと決まっている。組織の秩序を維持し、効率をあげ、規則をつくって管理することが重要だったりします。
こんな感じの組織図ですね。比較的イメージつきやすいかと。
![中央集権的](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32137711/picture_pc_67a602546c6845b782e209ee350c50f9.png)
それに対して、権限分散型組織(ヒトデ)は、文字通り権限が分散している状態を指します。ヒエラルキーや明確な意思決定プロセスはないが、かといって無政府状態(アナーキー)でもない。規則の代わりに、規範がある。
本書では、Wikipediaやバーニングマン、アルコホリック・アノニマス、クレイグズリスト、アルカイダといった様々な事例を挙げながら丁寧に説明しています。
権限分散型組織(ヒトデ)の大きな特徴として「攻撃を受けると、より権限が分散される」といったことがあります。クモは頭を切り落とされると死んでしまいますが、ヒトデは半分に切り離すと、死ぬどころか2つになるんです😲
これは、ヒトデが中枢器官を持たず、細胞のネットワークでできていることによります。
クモのような頭を持たないヒトデは、分権型のネットワークとして機能する。つまり、ヒトデが動こうと思ったら、腕のうちの一本が、他の腕に、「動こうよ」と説得しなくてはならない。一本の腕が動き始めると、まだ完全に解明されていない事態が起きて、他の腕も「協力」して動き始める。脳が「進め」「止まれ」と命令するわけではない。「進め」「止まれ」と命令する脳の存在すらない。ヒトデには中枢器官というものがないのだ。(p.35)
本書では以上の2つの組織モデルの違いを、以下のようにまとめています(p.57)。
![比較表](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32137775/picture_pc_f84877e206b867d7dcc81e406fb5b5f4.png)
また、それぞれの組織モデルの中心人物として、中央集権型組織(クモ)にはCEO、権限分散型組織(ヒトデ)には触媒といった存在が挙げられています(p.144)。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32160575/picture_pc_b59a91c057fa801bcd45ded40bf4434b.png)
「ヒトデ」の弱点・倒し方
そんな一見すると良い感じにみえる権限分散型組織(ヒトデ)の弱点と倒し方についても、本書では記されています。
まず弱点としては、いわゆる「収益」を出しづらい組織モデルである点が挙げられています。
業界内で権力が分散すると、全体の利益が減少する。ヒトデ型組織を導入するのは、利益をあきらめるのに等しい。だからこそ、業界全体を取り囲むヒトデの出現には、注意が必要なのだ。
(p.46)
利益を出すには、そのサービスのしくみをある程度中央集権的にし、広告収入を得るか、ユーザーから使用料を取らなくてはならない。課金するには、なんらかのシステムが必要で、それは権限の集中につながる。しかし、権限を束ねるために事務所を構えたり、利益を上げたりしたら、その瞬間に、MGMのような大企業につけねらわれることになる。ここにジレンマがある。ある程度は集権的なしくみにして、訴えられてもしかたないとあきらめるか、完全に分権型のままでいて、利益を求めないか、どちらかしかないのだ。
(p.61,62)
組織やコミュニティの目的を達成するうえで(あるいは維持してうえでも)、一定の収益が必要です。ところが、収益を増やすためには中央集権化する必要性があります。これだとヒトデの良さが失われかねません。
本書の第6章「分権型組織と戦う」でも、権限分散型組織(ヒトデ)への対抗策として「権利を集中させて中央集権化させる」が提案されています。
人々は、いったん財産を手にすると、それが牛だろうと本の印税だろうと、すぐに、利益を守るために集権的なシステムを求めるようになる。自分の財産のことになると、人はそれを管理し、体制をととのえ、きちんと報告してほしくなるものなのだ。(p.168)
組織に所有権という概念が入ってくると、その途端に全てが変わる。ヒトデ型組織がクモ型組織に変わるのだ。組織を集権型にしたいと思ったら、触媒に財産を与え、資源を好きなように分配しなさいと言えばいい。所有権をめぐる権力を手にした触媒は、CEOに姿を変え、サークル同士も競合するようになる。(p.169)
もし権限分散型組織(ヒトデ)を維持したいのであれば、こうした課題や弱点についても把握しなければいけません。
「クモ」と「ヒトデ」のハイブリッドモデル
ここまで中央集権型組織(クモ)と権限分散型組織(ヒトデ)の比較をしながら見てきましたが、世の中にはこの2つをうまくハイブリッドして顧客経験価値を分散させた中央集権型の企業/サービスもあります。
本書では具体例としてイーベイが紹介されていますが、ここではより身近なメルカリを題材に説明したいと思います。
メルカリは、ユーザー同士が直接取引を行うC2Cプラットフォームです。ユーザー間の取引/評価を分権化する一方で、顧客情報の管理や決済システムは中央集権的なつくりになっています。
また、メルカリに関する質問を投稿できるQ&Aサービス「メルカリボックス」も、分権化されているサービスとして機能しています。メルカリ事務局が率先してQ&Aを仕切るというよりは、ユーザー同士で助け合う場を提供しているという感じです。
プラットフォームビジネスの台頭には、こうしたハイブリットのバランスが肝になっていると個人的に感じました。
個人的な見解
上記で触れたとおり、中央集権型組織(クモ)と権限分散型組織(ヒトデ)には、それぞれに強み/弱みがあります。これからの時代はそれぞれの良さをいかにハイブリッドしていくかが重要になりそうです。
権限を持つと、それを手放すのが怖くなるし、いかに管理するかで頭がいっぱいになります。
だからこそ「どの権限を手放していくかを決める」ことが、これからの組織のキーパーソンに求められることだと思います。
余談:そう考えると、クロロ(幻影旅団の団長)はリーダーの鏡ですね。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32208057/picture_pc_ecc5f85b31152b6c9d48e007909148bc.png)
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