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エンジニアリング組織論への招待③~アジャイルなチームの原理~

こんにちは。たけぶち(@k_takebuchii)です。

今日は「エンジニアリング組織論への招待」(著:広木大地さん)について共有します!!

インプットの量が多いので、章ごとに重要なポイントをまとめていきます。今回は第三章「アジャイルなチームの原理」について。
第一章第二章はこちら。

アジャイル・・・agile(鋭敏な)。本書では「チームが環境に適応して、不確実性を最も効率よく削減できている状態」を指しています。


アジャイルをするな、アジャイルになれ

「agile(俊敏な)」は形容詞なので、「Do agile」というより「Be agile」が適当です。これはアジャイルという言葉が「行動」というより「状態」を指していることを意味します。具体的には以下の状態を指します。

・情報の非対称性が小さい
・認知の歪みが少ない
・チームより小さい限定合理性が働かない
・対人リスクを取れていて心理的安全性が高い
・課題・不安に向きあい不確実性の削減が効率よくできている
・チーム全体のゴール認識レベルが高い

何のために作るのか?は目的不確実性。どのように作るのか?は方法不確実性。他人の不確実性は通信不確実性。コミュニケーションの不確実性は、情報の非対称性や限定合理性を生じさせます。

これらの「不確実性(わからないこと)」が少ない状態をどうやって実現するのか?この問いこそが、アジャイルな方法論の根本にある部分です。


ダブル・ループ学習

では具体的に、どうしたら「不確実性(わからないこと)」が少ない状態を実現できるのでしょうか?

本書では様々な考え方やアプローチを掲載しています。その中でも、個人的にはダブル・ループ学習が印象に残りましたので、紹介します。

本書でも取り上げられている『失敗の本質』(戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾考生、村井友秀、野中 郁次郎 著、中央公論社、1991年)では、「なぜ日本軍は第二次世界大戦で負けたのか」という分析を組織学習の観点から分析しています。

学習理論の観点から見れば、日本軍の組織学習は、目標と問題構造を所与ないし一定としたうえで、最適解を選び出すという学習プレセス、つまり「シングル・ループ学習(single loop learning)」であった。しかし、本来学習とはその段階にとどまるものではない。必要に応じて、目標や問題の基本構造そのものをも再定義し変革するという、よりダイナミックなプロセスが存在する。組織が長期的に環境に適応していくためには、自己の行動をたえず変化する現実に照らして修正し、さらに進んで、学習する主体としての自己自体をつくり変えていくという自己革新的ないし自己超越的な行動を含んだ「ダブル・ループ学習(double loop learning)」が不可欠である。日本軍は、この点で決定的な欠陥を持っていたといえる。

出典:『失敗の本質』(戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾考生、村井友秀、野中 郁次郎 著、中央公論社、1991年)p.332

「シングル・ループ学習」とは、過去の学習を通じて獲得した「ものの見方・考え方」に基づいて改善を繰り返す学習を指します。それに対して、「ダブル・ループ学習」は、シンプル・ループ学習に、環境の不確実性を取り込んで、今まで前提としていた前提を変えていく学習です。

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戦時中以上に変化が加速している現代だからこそ、環境の不確実性を思考に取り入れる必要性は確実にあるなーと思っています。

本書ではこれ以外にも、「アジャイルが必要とされている理由」「アジャイルの歴史」「アジャイルをめぐる誤解」「アジャイルの格率」といった様々な切り口から、アジャイルの意義や手法について論じています。ぜひ読んでみてください!


個人的な見解

繰り返しになりますが、アジャイルの根底には、「いかに不確実性を減らしていくか?」という問いがあります。さらにそれは、第一章の経験主義や仮説思考、第二章のリフレーミングや心理的安全性と深く結びついています。

ここまで読んできて、本書の構成が少しずつ見えてきた感じがしています。第一章と第二章で「不確実性」に対する基本的な前提知識と対処法をインプットし、第三章以降でさらに応用的な手法論を学ぶ。いずれにせよ、焦って第一章と第二章を読み飛ばすのは、本末転倒になりそうだなと思いました(-_-;)



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