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32/何故、偽物の方が好かれるのか?

第4章 キッチュ


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【記事のポイント】『キッチュ』という名称は、『アヴァンギャルド』『デカダンス』に比べると認知度はグッと落ちるはずですが、近代的な時間意識を考える上では、とても大切なキーワードです。


1. 悲しい本物と楽しい偽物


この章では、キッチュの考察とあわせて、第二次世界対戦以降の時代を徐々に見ていきます。
第5章では、1970年代を1年ごとに見ていきますが、その助走です。


第二次世界大戦が終ってしばらくすると、ペギー・グッゲンハイムは大好きな街ヴェネチアへと帰っていきました。
その行動は、まさしくヨーロッパ生まれの前衛芸術家と同じでした。
ニューヨークは、ペギーが生まれ育った街でしたが、彼女にとっては終生異郷だったのかも知れません。

ヴェネチアに移る時には、二人目の夫マックス・エルンストとも離婚していました。

ニューヨークの美術状況も様変わりしたので、あまり思い残すこともなかったのでしょう。
ペギーは、ヨーロッパの前衛芸術をアメリカに紹介し、それによって刺激されたアメリカ人の若手芸術家たち、中でもジャクスン・ポロックを大切に育てました。


しかし、価値が認められるやいなや、現代美術の作品はまたたくまに投資の対象になり、状況は一変してしまったのです。
作品の内容ではなく、値段の変動が人々を引きつけました。
ペギーはその状況を嘆きながらも、そうなる前に自分の大切なコレクションが形成できたことを、喜びとともに回想しています。

文化的な価値判断は、元来細やかな違いを認識できることでした。
絵画に隠された意味を丹念に追いかけたワーブルク研究所のモットー「神は細部に宿る」は、その信念のあらわれです。

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