見出し画像

住み心地のよい街とは

2023年5月。
香川県多度津町を訪ねた際に、北米のとある大都市に住む方とお話する機会を得ました。
その方がおっしゃるには、いまお住まいの街はどうも住み心地が良くないとのこと。理由を尋ねると、再開発が繰り返される都市であるためか町並みや風景から街の歴史的民俗的背景を感じにくく落ち着かない、ということをおっしゃっていました。

とても興味深い視点です。
その方は考古学の研究をされていることもあってそうした面への関心がとりわけ強いのだろうと思いますが、街の姿から歴史的民俗的背景を感じやすいかどうかが住み心地を左右するならば、その点において強みになるものは“田舎”と呼ばれる地域にも数多く存在しています。

多度津でも、この地域の歴史的民俗的背景を感じる風景に出会いました。
至る所にため池がある平らな土地、黄金色に染まる麦畑、そしてその中に佇むうどん店。
この風景からは、雨の多すぎない瀬戸内海式気候のもと、歴史的に麦の生産が盛んな地域であり、それも一つの要因となって「うどん県」と称するような文化が出来上がったという一連の繋がりを感じます。
(現在、うどん原料の多くはオーストラリア産小麦だそうですが)

私の住む八幡浜も、風景から歴史的民俗的背景を感じやすいところだと考えています。
リアス式海岸が南北に連なる宇和海沿岸の入り組んだ地形の中、海辺にはフェリーターミナルと大きな魚市場が並び、狭い平地にはほとんど水田が見られず、代わりに山の斜面がみかん畑として大規模に耕作されている光景。
この街の姿は、半農半漁の寒村に始まり自給自足よりは商品作物の生産と流通拠点としての機能を追い求めていった「みかんと魚のまち」の歴史を色濃く伝えています。

さて、そういった“街の姿”と歴史的民俗的背景の間の繋がりを語れる人は、その地域にどれだけいらっしゃるでしょうか。
そしてその繋がりを学べる機会は、地域の中にどれだけ用意されているでしょうか。

地域の強みをより活用していきたいならば、ぜひ考えた方がいい視点だと思っています。

いりこ出汁の利いたとっても美味しいぶっかけうどんでした

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?