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令和2年国勢調査から見える愛媛県の状況 ~働き方編~

最新の国勢調査 (令和2年 = 2020年) の結果から愛媛県の各市町の状況を見てみようと思い立ち、公開されているデータを基にいくつかの表を作ってみました。

前回は高齢者についてのデータをご紹介しましたが、今回は”働き方”に関するデータをご紹介していきます。


1. 従事する産業別雇用者数

愛媛県内各市町の産業別雇用者数 (役員を含む) 1/3
愛媛県内各市町の産業別雇用者数 (役員を含む) 2/3
愛媛県内各市町の産業別雇用者数 (役員を含む) 3/3

各産業に従事する雇用者 (雇われて働く人) の人数と、雇用者の総数に対する割合を表示しています。
全国での数値と、愛媛県および愛媛県内20市町の数値を比較できるようにしました。

この表には、市町ごとの産業の特色がよく表れています。
「農業, 林業」の列は林業の盛んな久万高原町 (9.8%)、「漁業」の列は水産養殖業も盛んな宇和島市 (3.4%) や愛南町 (7.5%)、「製造業」の列は造船業と繊維工業の盛んな今治市 (26.6%) および隣接する上島町 (31.0%)、各種化学工業の盛んな新居浜市 (24.4%)、西条市 (26.1%)、四国中央市 (35.2%) の割合が高くなっていることが見て取れます。
原子力発電所の立地する伊方町で「電気・ガス・熱供給・水道業」従事者の割合が突出している (7.8%) こと、高齢化の進む市町で「医療, 福祉」従事者の割合が高いこと、人口の少ない町で「公務 (他に分類されるものを除く)」従事者の割合が高いことも、気になる項目です。
こうした特徴は、産業ごとの市況の推移や景気の動向、各種産業政策等による地域経済への影響を考えるにあたって欠かせない観点となります。
また、産業ごとに事業の収益性も大きく異なるため、産業の特色の違いは地域に住む一人ひとりの豊かさの差にも繋がってきます。

ところで、この表には表れていない方々がいらっしゃいます。
事業主の方々です。

2. 従業上の地位別就業者数

愛媛県内各市町の従業上の地位別就業者数

全国的には就業者のうち8割以上の方は雇われて働く「雇用者」です。
しかし地域によっては、その様相が大きく異なるところもあります。

愛媛県には「雇用者」の割合が7割を切る市町が複数存在しています。
これらの市町は柑橘栽培と漁業の盛んな伊方町 (61.2%) を筆頭に、総じて農林漁業従事者の多い市町 (伊方町の農林漁業従事者は30.0%) です。
事業規模は小さいところが多いため「雇人のない業主」「家族従業者」の割合も高くなっています。

こうした地域では、繁忙期と閑散期、時間帯別の労働力の調整が課題となっています。
みかんの収穫作業ほか期間限定、時間帯限定のパートタイム雇用の人手不足を嘆く声はよく耳にするのですが、生活圏内で様々な短時間雇用を組み合わせて生活できる額の収入を得られるほどには求人の種類と量が存在しないため、引き受けられる労働者の数はそう多くありません。
競争力があって比較的収益性の高い柑橘栽培については各事業者や農協、行政が資金を投じて地域外から労働力を集められていますが、その他の産業の人手不足感は容易には解決しない状況です。
この要因には製造業など収益性の高い産業が徐々に撤退していった歴史的経緯も関わっていますし、高齢化も関わっています。
そして、地域ごとの賃金格差。
愛媛県の最低賃金は897円であるのに対して、東京都では1,113円 (どちらも2023年12月21日時点)。
この差も深く関わっています。


割合の比較と対策の関係

割合が比較的高ければ対策が必要になるのか、というと、それは少し違うんじゃないかと思います。
割合が低くても、困難に面するおそれのある方が1人でもいらっしゃるのならば、社会として対策を考えておくに越したことはありません。

ではなぜ割合を比較するのか。
それは、優先順位と予算配分を考える指標になるからだと考えています。
様々な困難に面するおそれを全て0にすることは、どれだけ労力とお金を注いでもできません。
その上で、困難に面するおそれの比較的大きい課題には優先的に労力とお金を注いでいくことでバランスを取りながら、様々な課題の改善に並行して取り組んでいく。
そのために統計データを見て、割合を比較し、地域の特徴を考えることが役に立つのだと思っています。


もう1回また別の観点から、統計データに基づく愛媛県の状況を記事にしてみるつもりです。

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