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【企業分析】 株式会社ユーキャン

「生涯学習」のキーワードで通信講座業界を牽引する株式会社ユーキャンを企業分析し、自身なりのアイデアを発散する。(2023/9/10時点)

※ 本投稿は、BBT大学大学院で学んだRTOCSを修了後も継続するために、同メソッドを自身なりにアレンジして作成しています。あくまでも個人的な分析と見解です。
https://www.ohmae.ac.jp/mbaswitch/_digest_rtocs1/


ファクト

ファクト情報を3C(自社・競合・市場)の観点で情報分析してみる。

自社

  • 代表取締役社長
    品川 泰一
    2001年から大手広告代理店で営業として2006年に入社し、2010年より現職
    https://feel.u-can.jp/article21/

  • 所在地
    東京都新宿区高田馬場4-2-38

  • 創立
    1954年(昭和29年)6月

  • 従業員数
    550人

  • 資本金
    9,000万円

  • 売上高
    358億円(2022年度)

  • 事業

    • 通信講座部門
      約130の講座を、年間約60万人に提供
      売上高構成比:41.4%

      • 資格講座:行政書士、宅地建物取引士、医療事務、保育士など

      • 実用講座:実用ボールペン字、料理、英会話、書道など

      • 趣味講座:ビーズアクセサリー、色えんぴつ画、デッサン、囲碁など

    • 通信販売
      見て聴いて知る、感動と喜び。知的・文化的コンテンツを開発・出版
      売上高構成比:56.5%

      • ビデオ・DVD:美しき日本の歌、昭和と戦争、世界遺産、京都逍遥、さだまさし『のちのおもひに』

      • CD・カセット:美空ひばりの世界、ミュージック・オブ・ドリーム、モタさんの楽ラク人生術、さだまさしの世界

      • 書籍・雑誌:日本大地図、城、美しき日本の自然、日本歴史紀行、ルーブル美術館名品集

  • 沿革
    1954年 東京人形学院を渋谷区松濤町に設立
    1955年 東京人形学院 通信教育部を新設。「日本人形講座」を開講
    1973年 書写技能講座スタート
    1974年 関係法人を統合、(株)日本通信教育連盟と改称
    1976年 音楽系講座がスタート
    1978年 音楽系商品の通信販売スタート、資格系講座がスタート、美術系講座がスタート、第1回「総合書道展」開催
    1993年 生涯学習局が開設され、教養系講座がスタート
    2002年 「生涯学習のユーキャン」ブランドスタート
    2011年 生活・実用用品など新たな分野の物品販売を行う「ユーキャン通販事業部」が本格稼動
    2012年 海外受講サービスを開始、海外進出の第一弾として、中国四川省成都市に合弁会社「成都生涯科技有限公司」を設立し2013年1月より通信教育の事業をスタート
    2022年 海外受講サービスの新規受付を終了、アメリカ法人「U-CAN Americas」を解散、中国法人「成都生涯科技有限公司」を解散
    2023年 (株)博報堂とJVでリスキリングプラットフォームの構築を軸に新たな人材事業を展開する新会社「(株)HUG」を設立

ダイレクトマーケティングに強みを持つ
広告で提案:TV・新聞・折込チラシ・雑誌・インターネット・ダイレクトメールなどの情報メディアを通じてお客様に商品・サービスをご提案
ご購入:小売店や販売代理店を介さず、ダイレクトにお客様から資料請求やお申込みといったレスポンスをいただく

競合

社会人向け資格取得を目的とした競合企業を確認する。

  • 資格スクエア
    https://www.shikaku-square.com/
    法律系資格
    主な講座:司法試験予備試験講座、弁理士講座、行政書士講座
    料金例:司法試験予備試験講座 合格フルパッケージ:75万9,000円

  • スタディング
    https://studying.jp/
    資格に短期間で合格している人の学習方法や、心理学・脳科学などを研究し作り上げた、独自のスタディングメソッド
    主な講座:中小企業診断士
    料金例:中小企業診断士 1次2次合格コースミニマム:48,400円

  • たのまな
    https://www.tanomana.com/
    13カテゴリーにわたる250の講座が用意されている
    主な講座:ITパスポート試験対策講座、医療事務講座、ヘルシー&ビューティー フードアドバイザー3級講座
    27万人の実績
    料金例:ITパスポート試験対策講座:18,700円

  • 資格の大原
    https://www.o-hara.jp/
    Webライブ・Web通信・DVD通信・資料通信という4種類の通信講座
    主な講座:FP3級合格コースWeb通信、旅行業務取扱管理者 国内旅行合格コースWeb通信、色彩検定
    料金例:FP3級合格コースWeb通信:17,300円

  • アガルートアカデミー
    最小限の講義で資格合格といった目標を達成できるよう構成されている
    主な講座:宅地建物取引士試験、TOEIC、広告実務講座
    料金例:宅地建物取引士試験 入門総合カリキュラム:54,780円

  • JTEX
    https://www.challenge-jtex.com/
    専門技術系の通信講座
    主な講座:電気主任技術者、電気工事施工管理技士、技術士、高圧ガス製造保安責任者
    40,000社・200講座・200万人の実績

  • LEC
    https://www.lec-jp.com/
    各種国家資格・公務員試験受験指導
    主な講座:司法試験、司法書士、弁理士、公務員試験、社会保険労務士
    料金例:司法試験 初学者向け 1,160,000円

  • TAC
    https://www.tac-school.co.jp/
    企業理念:プロフェッションの養成を通して社会に貢献
    主な講座:公認会計士、税理士、司法書士、行政書士、公務員
    料金例:公認会計士 [初学]1.5年L本科生:770,000円

  • (参考)自社の料金例
    食生活アドバイザー(R)(2級・3級)合格指導講座:一括39,000円


隣接業界としてEdTech企業についても確認してみる。

  • ENAGEED for Biz(株式会社エナジード)
    https://www.enageed.jp/business
    組織の生産性を最大化する能動人材・組織開発プログラム

  • レアジョブ英会話(株式会社レアジョブ)
    https://www.rarejob.com/
    マンツーマン方式のオンライン英会話サービス
    東南アジア諸国でも事業を展開
    会員数:80万人、登録講師:約6,000人

  • Schoo(株式会社Schoo)
    https://schoo.jp/
    オンライン生放送コミュニティサービス
    大学の教授やベンチャー会社の社長・俳優・ミュージシャンといったあらゆるジャンルの人が講師となり、ほぼ毎日、生放送での授業を実施

  • UMU(ユームテクノロジージャパン株式会社)
    https://umujapan.co.jp/
    誰もが指導者にも学習者にもなることができる学習プラットフォーム
    学習者から提出された動画などを即座にAIが分析し、FBして学習者へスムーズな自主学習を促す

  • STUDYing(KIYOラーニング株式会社)
    https://studying.jp/
    弁護士の司法試験や中小企業診断士といった、士業の難関資格を取得するための個人向けオンライン資格講座サービス
    BtoB向けには、社員研修や社内のノウハウの伝授という場面で活用されているAirCourse(エアコース)を展開


市場

  • 学習人口(社会人向け受講者)は2,000万人超存在

  • リカレント教育の増加

  • 教育的月謝は減少傾向、月謝類の消費者物価指数は上昇傾向

  • 本業界のサービスに対する家計支出は減少

  • シニア・プレシニア(50-70代)の学び・趣味の実施状況

    • ほとんど毎日:10.9%

    • 週に数日:22.3%

    • 月に2-3日:26.3%

    • 年に数回:16.1%

    • ほとんど無し:24.4%

  • EdTechが教育現場に与える変化

    • オンライン学習

    • アダプティブラーニング

    • 効率化

    • 教育のSTEAM化

    • VR×メタバース


ファクトの整理

3Cの観点で確認したファクト情報を元に、SWOTの観点で整理する。

S(自社の強み)

  • 約130の講座を、年間約60万人に提供

  • 内製のダイレクトマーケティング

W(自社の弱み)

  • DX化の遅れ

  • 専門性が無く他と比較されやすい

O(市場の機会)

  • リカレント教育の増加

  • アクティブシニアの増加

市場の機会に関しては、同時に顧客の目的関数も確認しておく。

  • 軸1:自分の好きな時間に学びたい(時間/場所/タイミング)

  • 軸2:手軽に学びたい(金額/手続)

  • 軸3:自分の能力に合った学びを受けたい

T(市場の脅威)

  • EdTechの拡大

  • 専門性のある教育サービスの増加


問題と課題の抽出

これまでの分析から、本質的な問題と、取り組むべき課題を設定する。

本質的問題と課題:DX化

DX化の遅れにより顧客獲得機会を逃している
→ EdTechサービスの台頭に対する対抗措置を取っていく必要がある

関連するKBF(Key Buying Factor)とKFS(Key Factor for Success)
KBF:手軽に好きな時間に自分らしい学びをしたい
KFS:DXを活用して顧客利便性の高い教育サービスの提供
KFSとのギャップ:過去の手法通りの通信講座の提供に留まっている

本質的問題と課題:専門性

専門的な学びを提供する企業との差別化ができていない
→ 競合が多い中で顧客から選ばれるサービスを提供する必要がある

関連するKBF(Key Buying Factor)とKFS(Key Factor for Success)
KBF:自分が学びたい講座を提供するサービスを選択する
KFS:顧客が求めるカリキュラムの提供
KFSとのギャップ:定型化された教育サービスを提供、顧客へのフィット度は弱い


方向性案の検討

整理した本質的問題と課題へ対応するための方向性案を、SWOT分析によるアウトプットから検討する。

「DX化」への方向性案

案1:EdTechサービスの自社開発(TxS)
案2:EdTechベンチャーとの連携・買収(TxW)

「専門性」への方向性案

案3:社会人・アクティブシニアに合わせた教育講座の充実(OxS)
案4:専門性のある教育講座の開発(OxW)

※ 括弧内のSWOT分析の検討軸
OxS(積極化戦略の可能性視点での考案のポイント)
OxW(弱点強化戦略の可能性視点での考案のポイント)
TxS(差別化戦略の可能性視点での考案のポイント)
TxW(防衛策、撤退戦略の可能性視点での考案のポイント)


方向性案の評価

検討した方向性案に対して、次の軸で評価を行い、どの方向性案を採用すべきかを選択する。
評価軸①・・・経済性
評価軸②・・・実現可能性
評価軸③・・・速効性
評価軸④・・・長期的展望
評価軸⑤・・・ユニークネス(独自路線)

案1:EdTechサービスの自社開発
評価軸①・・・△ 評価軸②・・・△  評価軸③・・・△ 評価軸④・・・◎ 評価軸⑤・・・◎
<理由>
長期的に考えて開発は大なり小なり進めるべきではあるが、投資体力を要する

案2:EdTechベンチャーとの連携・買収
評価軸①・・・△ 評価軸②・・・○  評価軸③・・・◎ 評価軸④・・・◎ 評価軸⑤・・・○
<理由>
短期的に考えると得策ではある、買収資金の調達が必要

案3:社会人・アクティブシニアに合わせた教育講座の充実
評価軸①・・・○ 評価軸②・・・◎  評価軸③・・・◎ 評価軸④・・・◎ 評価軸⑤・・・◎
<理由>
専門性の高いサービスとの差別化ができれば効果はある

案4:専門性のある教育講座の開発
評価軸①・・・△ 評価軸②・・・○  評価軸③・・・△ 評価軸④・・・◎ 評価軸⑤・・・◎
<理由>
競合他社の収益性を見ると取り組むべきだが、ノウハウが必要であり適切なパートナー探しが求められる


自身が経営トップとして実行する最優先の方向性案とその具体策

ここまでの分析結果を踏まえて、仮に自身が経営トップだった場合に取るべき方向性案とその具体策は次の通り。

案2:EdTechベンチャーとの連携・買収

HRTech企業との連携を図り、自社の教育コンテンツを提供していく。HRTechの中でも、求人・マッチング領域と、タレントマネジメント領域のTech企業と連携する。

求人・マッチング領域では、WantedlyやGreeenなどの企業と連携。応募者側の機能と連携することで、「このような求人が出ているので、その求人に応募できるように、このような学びをしましょう」とレコメンドしていく。レコメンドのロジックには自社がダイレクトマーケティングで培ったノウハウを織り込むことで、独自のマッチング精度を実現していく。
HRTech企業としてはマッチング率向上がメリットとなり、自社にとっては既存コンテンツを他社チャネル上で自動的に提供してくれるメリットがある。

タレントマネジメント領域では、全社での事業や業務の状況からキャリアチェンジやリカレントさせたいHRTech上の人材と、自社のコンテンツとをマッチングする。HRTech企業としては離職率の低下や従業員満足度向上といった実績数値を向上できるメリットがある。自社にとっては前述と同じく既存コンテンツを活用できる。
また対象人材は企業内での学びだけでなく、趣味も旺盛になるため、導入企業従業員向け割引制度を提供するなどして、企業から従業員を囲い込んでいく。


参照情報と出典

(閲覧日:2023/8/31)
ユーキャン企業サイト
https://www.u-can.co.jp/

通信講座おすすめ15選【2023年最新版】社会人向けも解説(コエテコcampus)
https://coeteco.jp/articles/11967

【2023年最新】通信講座のおすすめや人気を徹底比較!目的別の選び方
https://www.kushim.co.jp/media/correspondence-course-osusume

たのまな
https://www.tanomana.com/

JTEX
https://www.challenge-jtex.com/

EdTech(エドテック)の注目企業11社をご紹介!教育をITで進化させるサービスとは?
https://www.geekly.co.jp/column/cat-technology/edtech-company/

総務省統計局『家計調査報告』、『消費者物価指数』

HRテック/ HRTechとは?【業界カオスマップ】企業一覧
https://www.kaonavi.jp/dictionary/hr-tech/

シニア・プレシニア向けアンケート調査結果
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shakai_shien/jinsei100nenjidaisyakaisannka.files/04-04_seniorpreseniormukeannke-tokekka.pdf

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