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いい意味で「人たらし」を目指す ~顧客対応の実践~

「人たらし」 ーなんとなくネガティブな印象を持つ言葉ですね。

それもそのはずです。辞書を引くと人たらしには「人を騙す人」という意味が込められているからです。

そういう文脈で使われがちではありますが、決して悪い事ばかりでもないと僕は思うのです。なぜなら、人たらしにはもう一つのプラスな意味が含まれているからです。

というわけで今日は「素敵な人たらしのススメ」的な記事です。特に後半では、コールセンターなどの顧客対応に携わっている方に活用していただけるようなちょっとしたテクニックも紹介したいと思います。

※なお、俗世を離れて独りで生きていく決意を固めている方は、ブラウザの「戻る」ボタンをどうぞ。

「人たらし」のもう一つの意味

あまり引っ張ってもアレなので、結論から申し上げます。

「人たらし」には、「人の心をつかむのが上手な人」という意味でも使われます。

これ、全然悪い事ではないです。社会的な生き物である人間として生きるのであれば、関わる人たちに気持ちよくなってもらったり、喜んでもらったりする行為はむしろ重要なスキルのひとつです。

何も、「とにかく媚びを売れ」というわけではありません。仕事でかかわる同僚や、接するお客さんに喜んでもらうために知恵を働かせる、という至ってポジティブな行為なのです。

そしてこれはある意味、マーケティングに通じる考え方とも言えます。なぜなら、顧客の求めるものを提供するための知性が要求されるからです。

ただやみくもにサービスを提供したり、御用聞きをしたり、ヘコヘコしたりしたって無意味です(下手をすると、自分の価値を貶めることにもなりますから要注意です)。

むしろ、相手にとって今必要な支援は何なのか、もしかしたら相手自身も気づいていない潜在的な困りごと(ニーズ)に思いを巡らせ、適切なリアクションをしていかなければならないわけです。

接客で人たらしを極めるためのテクニック

さて、早速ですがすぐにでも実行できる手法を二つほど列挙していきます。

1) いい声・いい表情でコミュニケーションを図る

対面接客であれば、まずは笑顔をつくることです。

コールセンターなどの声のやり取りがメインの場であれば、語尾をはっきり言うことで印象はグッと変わります。さらに、抑揚・間(ま)といったところへの意識が加わるとだいぶ違ってきます。

「…なんだ、そんな事か」と思ったあなた。これが出来ている人はそう多くないですよ。

マスク越しでも表情はある程度伝わるものです。相手の情緒に敏感すぎるくらい敏感な日本人どうしであれば、目が笑っているかどうかすらも相手に分かってしまいますから、おろそかにしてはいけません。

声に関して言えば、(個人的にはあまり好きな表現ではありませんが)「笑声(えごえ)」と言ったりするくらい、声にも表情が出るものです。顔が笑っていれば、やっぱり声も笑うんですよ。

これで、多少のクレームが解消します。というのも、暗い声のオペレーターって何となくクレームをつけたくなるものなんです。もちろんシリアスなシチュエーションでも空気を読まずハイテンションを続けていると逆効果ではありますが(笑)、基本的には「感じの良い対応」を保つことが不要なクレームを防止してくれるものと心得てください。


とはいえ、「自分では一生懸命やっているつもりである」という方が少なくないでしょう。そんな方にぜひやってみてほしいことがあります。

自分の声を録音して、客観的に聞いてみることです。

一般的なコールセンターの現場では当たり前のようにやることではありますが、新人の頃、僕も自分の実際の顧客対応の録音を聞かされたものです。…なかなか辛い時間でした(笑)。

最初は聞くに堪えませんでした。というのも、自分の声のトーンというものは、自分が思っている2段階くらい低いものなんです。同じように、多くの人はショックを受けると思います。

それからは、多少歯が浮くような思いと葛藤しながらも意識して明るい声で電話に出ることにしました。数か月後、やっと自分の対応音声を聞くことが嫌ではなくなってきました。

2) 口答えしない

これは、クレーム対応において特に言えることです。また、相手がこちらのサービスや製品に対して意見や要望を伝えてくるような場合も同じです。

残念ですが、基本的に、相手を言い負かしたところで得るものはありません。

「本当は違うのに…」「こちらもこちらなりに色々手を尽くしているのに…」と、つい反論したくなってしまうのが人間です。自分の仕事にプライドを持っていればなおさらです。

ですが、とにかくまず第一声はお詫びしたほうが得策であると僕は思います。僕も経験上、顧客対応においてこちらの主張を早い段階でぶつけてみたことは何度かあります。が、だいたいそこで無駄に押し問答が長引いてしまうだけです。

己のちっぽけなプライドはいったん脇に置いておきましょう。第一声は「おっしゃる通りでございます」「申し訳ございません」でOKなのです。むしろ最初にいったん受け止めておいた方が、あとあとになってこちらの言い分も聞いてくれる余地が生まれてきたりするものなのです。「さっきはあんな事をいって申し訳なかったけど…」と、相手の方から態度を軟化させてくれるんですね。

※アリストテレスも「弁論術」で同じようなことを言っています。

もう一つ、忘れてはいけない事実があります。まれに全くの言いがかりをつけられることもありますが、ほとんどの場合、クレーム・意見・要望には一理あるものなんです。事実、「おっしゃる通り」なんですね。

部分的に反論したくなるようなことも言われるかもしれませんが、大筋間違っていない以上、素直に聞いておくべきでしょう。

ただし、あまりにも自分ごととして受け止めすぎてしまっても自分の心が必要以上に消耗してしまいますので、「これは自分に対するクレームではない。あくまでも会社やサービス・製品に対するものなんだ」と心に言い聞かせてください。

その場では「そうですよね」と相槌を打ち、あとになって仲間にだけは「でも●●って本当はこうなんだけどね…」とそっと愚痴るのが良きです。

僕の後輩には、さらなる上級者が存在します。

10年ほど昔のことですが、彼女はとあるクレーム対応の締めくくりに、相手の方にこう伝えていたんです。
「お客様が今回このようなご意見をくださったおかげで、(サービスが改善されて)他の多くのお客様が救われると思います。ありがとうございました。」と。

なかなか言えないセリフですが、確かに事実ですよね、これ。

社内でも人たらしになる

今回はおもに対外的な人たらし術について触れてきましたが、何も外部に限ったスキルではありません。

社内の同僚に対しても、存分に人たらし力を発揮していきたいものです。

そういう僕もそこまで人たらしのプロフェッショナルではないのですが(笑)、接していて気持ちのいいコミュニケーションは心がけているつもりです。

しかし、超・基本的ではあるものの、実はできていない人が一定数いるのが、あいさつです。

・相手の目を見る
・相手に聞こえる声量で伝える

リモート勤務が拡大してきて、リアルで対面する機会が社員どうしであっても減ってきたからこそ、この辺はしっかりできるようでありたいですよね。

誰しもが生まれながらの陽キャではないと思います。とは言え、「自分陰キャなんで…」と言い訳していては何も生まれませんし、そこで成長のチャンスを自ら放棄しているようなもの。そこは四の五の言わず動くべし、です。

ということで、社内・社外を問わず、あなたもちょっとだけ「人たらし」を目指してみませんか?

さて、今週も頑張りましょう。

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