読書感想文~「人はなぜ他人を許せないのか」
以前、中野信子さんの著書について読書感想文を書かせて頂きました。
今回ご紹介するのは、それよりもさらにSNSと「正義中毒」の関連性について触れられている本です。
それだけではなく、前回ご紹介した「生贄探し」の内容も含まれていますが、昨年私の身の回りで多発した「コメント欄荒らし事件」については、こちらの方が参考になるかと思います。
SNSによって可視化された争い
皆様、SNSの誕生って覚えていますでしょうか?
ワタシの年齢がますますバレますが、Windows95からネットを利用している私は、何となくSNSと「掲示板」の端境期も覚えがあります。
中野さんも触れていますが、2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる)が活発だった頃って、インターネットはある意味アンダーグラウンドの世界だったのですよ。
私が利用していたのはYahooの掲示板でしたが、あの頃は、投稿者も「ネットに投稿するというのは、パブリックに意見を述べるもの」という空気が強かった気がします。
もちろん炎上は当時からあったのですが、現実社会とのパラレルワールドという共通認識はありました。
ですが、SNSはより趣味や嗜好が特化した社会。そこでうっかり不正義・不正確とみなされる情報をSNSで公開すると、他人から詰られるようになりました。
中野さんは、SNSで攻撃的になる人は、
「誰かを許さないことで自己を肯定化したい」「自分の正しさを認めてもらいたい」という欲求の裏返しなのだと指摘しています。
言い換えれば、SNSを検索して自説と相反し、攻撃しやすそうな対象を見つけて喧嘩を吹っ掛ければ、それだけで自分は正しく生きる正義の味方であるという認知が得られるのだそう。
確かに、note内であちこちで議論をふっかけて回っている人や、やたら攻撃的な投稿・コメントを繰り返す人は、己の正義感に酔っているのだろうなあと、私も感じます。
そうした人々、つまり重度の正義中毒者にとって、「SNSは己の承認欲求を満たすための、手軽かつ魅力的なツール」という指摘は、何度か「荒らし」のリサーチを行った私も、納得できるものです。
ひどい例では、noteでは善人・良識ある人を装っていながら、10年以上前に、某掲示板で「有名人を叩いていた」例もありました。
「バカ」という単語を連発する人
さらに、こうした正義中毒の人を簡単に見分ける方法があります。
それは、自身の投稿やコメントなどで「バカ」を連発する人。
これは、私も既視感があります。
私がブロックしてきた人々(とは言っても一桁ですが)は、まず半数以上がこの言葉を使っていますね。
SNSの発達によって正義の中毒症状が全世界に公開される場が出現したことで、誰が「バカ」なのか、誰が自分より劣っているのかを常に気にし続けなければならない状況が誕生したとあります。
むやみやたらに攻撃的になる人は、自分がバカだと思われることを恐れ、自分がターゲットにならない為に、積極的に他人を叩くとのこと。
言ってみれば、小心者の裏返しとも言えます。
ワタシも、売られた喧嘩は3倍くらいにして返しますが、自分からは喧嘩を売りに行かない。
不快な投稿を目にしたとしても、自分が脅かされない限りはスルーしています。(ただし、目に余る場合はnoteに報告しますが)
身内ならば一種の甘えとして目を瞑ってもらえることもありますが、noteのようなSNSで、それをやれば周りから白い目で見られるのがオチですし。
さらに、正義中毒に陥った「アンチ」は、SNSを通じて、見たことも会ったこともない人に妬みと憎しみを重ね、場合によっては自ら社会正義の体現者であるかのように思い込み、実際に凶悪な犯罪行為に出てしまう可能性もあるとのこと。
これも、時折発生する「動機が不鮮明な凶悪犯罪」に、見出すことができるのではないでしょうか。
確証バイアスの罠
SNSは、似た者同士でつながりやすい特性を持っています。また、それだけでなく現代のネット社会においては、ユーザーの検索ワードなどをネット会社が把握。その検索ワードに基づいて次のクリックの「ターゲティング設定」を行っています。
そのため、自分と同じ様な思考をするグループから、自分が欲している情報だけを取り入れ、受け取るようになるのです。
結果、「自分の主張こそ正義であり、世の中の真実だ」と考える人々が出てきます。
これが、「確証バイアス」の実態です。
この仕組みについては、私自身も考えるところがあるのですが、基本的には、ネット社会にどっぷり浸かっている限り、この仕組から逃れられないとも言えます。
ネット企業や広告主は、いかにたくさん「クリックされるか」を追求しているだけなので(でないと、経営が成り立ちません)、確証バイアスを避けるには、自分が選択したはずの情報が、実は現敵的なものであると意識しなければなりません。
SNSでは「正義中毒」に陥らないように自覚を
本書は、必ずしもSNSだけに特化した内容ではないのですが、noteというSNSの場で発表させていただいている以上、どうしてもSNSについての言及に目がいきました。
昨年は私も色々ありましが、中野さんの著書を読んでから、明らかに自分に対して「喧嘩をふっかけている」投稿を目にしても、「ああ、あの人は今正義中毒でドーパミンが放出されている状態なのね」と、どこかで考えるようになりました。
不快感は残りますが、少なくても、感情的になって「コメントなどで反論し、泥沼化する」という事態は避けられます。
それに加えて、「時間ぐすり」「友好的な方々との交流」などがあれば、いちいち振り返って「自分の身に起こった悲劇」に陶酔しなくても、心の整理がつくものです。
一方的にふっかけられたネガティブな感情に振り回されて都度お付き合いするのは、自分の感情の無駄遣いに他なりません。
まあ、そんなわけでこの本は、「ネット上での人間関係に悩む」方々におすすめです。
今回は図書館から借りてやっと「読書感想文」にしましたが、これは自分でも買うかも。
そんな一冊です。
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