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プロフェッショナルの矜持③~須賀川特撮アーカイブセンター訪問記

前2作は、下記のリンクからどうぞ!

プロフェッショナルの矜持①

プロフェッショナルの矜持②

最終回は、視聴覚室で観覧した、「巨神兵東京に現わる」についてです。

巨神兵東京に現わる

さて、二日目最大のお楽しみは『巨神兵東京に現る』でしょうか。
11/6日は途中道に迷いかけて到着が遅くなったので、この作品の上映時間とタイミングが合わず、翌日出直したのです。

今回のリポートに当たって、改めて調べて知ったのですが、2012年7月10日より開催されていた展覧会の特撮短編映画だったのですね。

監督:樋口正嗣
脚本:庵野秀明
制作:小林毅
ナレーター:林原めぐみ
美術監督:三池敏夫
巨神兵操演:村本明久

等など……。
特撮や映画の知識はさっぱりなのですが、とにかく豪華な布陣だというのは、私でも分かりました。
2012年11月17日からは劇場版として公開され、『エヴァンゲリヲン新劇場版:Q』との同時上映ということもあり、注目されたようです。

ストーリーは

東京に一人で暮らしている女性の「私」のところに、突然弟がやってきて「明日、この街は滅ぶ」と予言めいたことを言い出す。いつもはそんなことを言わない弟を訝しく思いながらも取り合わない「私」だったが、翌日に突然異形の巨人「巨神兵」たちが東京に現れ、街を焼き尽くしていく。

Wikipediaより

というものです。
ストーリー自体は抽象的なので、「風の谷のナウシカ」の原作を知っていないと、理解が難しいかもしれません。

あまりネタバレするのもなんですが、ナウシカの原作の世界では、巨神兵は「調停・裁定者としての神」なんですよね。
この辺りは、映画版のナウシカとは大分異なります。

以下、同作品のナレーションからの引用になります。
(知恵袋等で調べたことを、白状します^^;)

創造主ばかりが神ではない。 自分の願いや祈りを聞き届け、叶えてくれる存在だけが神というわけでもない。 大きな災厄が人間と似た形で空から降りてきて、私たちには判る。 畏れこそが神の本質なのだ。 だから人間たちは、自分たちに危害を加え、命を奪おうとするものにも手を合わせ、膝を折り、拝み、祈る。

世界には寿命がある。 なのに、僕たちに任せても世界がダラダラと延命するだけなので、 世界は強引にあいつらを召還する。 そのとき僕たちは、全てが終わるべくして終わるんだと知る。 でも僕たちはひたすら生き続けたかったのだ。世界を終わらせたくなかったのだ。

創造の神は七日間でこの世界を創ったらしい。 僕たちだってこの世にいろんなものを作ってきた。 こんなふうに一瞬にしていろいろ壊されてくように見えるけど、 たぶん壊すほうにだって同じくらい時間がかかるに違いない。 炎が世界を壊すのに七日間かかるなら、それだけ逃げるチャンスもある。 逃げろ。生き延びろ。新しい世界を自分で創ればいいんだ。 世界の意思なんて知るものか。神の気持ちなんて構うものか。

「第一の日、人と地上の生き物が消える。」
「第二の日、この世から全ての生き物がいなくなる。」
「第三の日、太陽と月が壊され昼も夜もなくなる。」
「第四の日、地が沈み、全ては水になる。」
「第五の日、水も空も失せる。」
「第六の日、光が消え、すべては闇と混沌に包まれる。」
「第七の日、災いは仕事を終え、安息の喜びの中で静かに泣く。」
「これが、これから始まる火の七日間である。」

終わる世界の中で、私以外の存在に希望を抱きながら、私は生き、 逃げながら待っている。 新世界の訪れの前の、巨大な炎がやってくる。

時間にすれば、わずか数分のセリフ。
ですが、巨神兵の本質が、このセリフに詰められているのではないでしょうか。
映画版ではなく、コミック版ナウシカの「巨神兵」を知っている人であれば、尚更そう感じるのかもしれません。

そして彼らがすごいのが、この短編を撮影するに当たって、「CGを使わずに、アナログの手法で仕上げている」こと。

メイキング映像も本編の後に視聴できるのですが、メイキングによると、ミニチュアセットを組んで、「巨神兵」のパペットを二人羽織の要領で操って撮影されたそうです。

メイキング映像では、巨神兵の背後にアシスタントの方がブルーシートを被り(これを、後で消すのです)、巨神兵を操っていました。
また、火薬なども使い、巨神兵の「滅亡の光輪」も特殊効果を使いながら、うまく再現していました。

このミニチュアセットも、現実の東京の下町辺りでありそうな光景ではないでしょうか。

視聴覚室は撮影禁止なので、画像を下記記事から拝借しました。

この有名なシーンも、先程の人形を使って再現されています。
東京の街を巨神兵が容赦なく破壊していく様は、正に圧巻。

彼らがアナログにこだわった理由

技術はもちろん素晴らしいです。
ですが、私は「あえてアナログ」の手法にこだわった理由に感銘を受けました。

それは、
「技術が消え去ることへの危機感と、伝承を絶やさないため」

CGの発達などにより、近年は特撮の技術を活用しなくてもそれなりの映像を作れるのでしょう。
ですが円谷監督を始めとして、特撮技術を築き上げ継承してきた人たちの想いと、自分たちの技術を両立することも可能なのではないでしょうか。

先人たちへのオマージュ。

それをなくして、今の自分達はありえない。

先人たちの築き上げてきたものを、守るだけでなく自分たちのものとせよ。

それが、クリエイターのプライドである。

そんなメッセージを、この作品から感じました。

自分の身に置き換えて

仮に、自分が同じ立場に立ったのならば。
やはり、先人の知恵を拝借しつつ、自分の持てる全ての力を注ぎ込んだ作品作りに、臨むかもしれません。
それが、作品の受け手に対する礼儀だろうと、私は思うのです。

そして、自分の作品にプライドを持て。

自分でしか作り得ないものを、粗末にするな。

そんな叱咤激励を受けた気がします。


特撮アーカイブセンターを訪問して感じたのは、「一流のクリエイターとしてのプライドが、凝縮された施設」。
展示物の素晴らしさは言うまでもありませんが、そうした精神スピリッツも楽しんでいただければいいな~と、地元民としては思うのです。


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