異なる側面を覆ってしまうビジネスモデル

認知バイアスとビジネスの関係性

認知バイアスとは、物事の一方の側面だけで、本質とは異なる理解をしてしまうことです。

物事の表面だけ捉えてしまい、隠れた性質を無視、あるいは気づかずに判断してしまうことを指します。

この認知バイアスをマーケティングに応用したものが、行動経済学です。

行列ができるラーメン屋さんについ入ってしまうのも、
高速のサービスエリアでソフトクリームを食べてしまうのも、
この認知バイアスによってお金を払わされているというわけです。

「行列ができているから美味しく見えた」とか、
「旅行の非日常感を味わいたくてレジャー感を満喫したい」とか、
そういった理由に隠れて、デメリットである側面が存在感を消しています。

この例では、「寒い中並ばないといけない」「店内が狭い」「美味しくない」「値段が高い」「カロリーが高い」などの別の側面があることを度外視して、購入するという経済行動を読んでいます。

これは認知バイアスの一種であり、社会心理学用語でいうところの、ハロー効果とも呼び、目立った特徴が、その他の特徴を覆ってしまうという事象です。

非合理的な行動をしてしまうことで、得をする場合もありますが、損をする場合もあり、客観的な判断をしたいものです。

非合理な判断を避けるための合言葉

認知バイアスによる「認知の歪み」を避けるために意識したい場合のシンプルな考え方として、「物事には必ず別の側面がある」という合言葉があります。

例えば、私が今取り組んでいうる出版業界の研究開発では、現状、本が一冊売れたときの出版社の取り分はその60%です。他は印刷会社、著者印税、書店に分配されます。

これを書店に収益化をもっと渡さないといけないよね、という思想で取り組んでいますが、そうなると、出版社の60%を切り崩していかないとならず、今度は出版社の取り分が減ることになり、あっちをたてればこっちがただず状態になります。

出版社は特段困っていない、という別な側面があり、そこを無視するわけにはいきません。


もう一つの事例は、私が長らく関わっているITエンジニアのSES業界にも見られます。辛い仕事やデスマーチのような、エンジニアが重労働に見舞われるシーンを多く目にしてきましたが、ここでも別の側面があります。

なんのためにそういった労働を強いられているのかといえば、その先に、システムやサービスを利用する人たちの明るい未来が待っているからです。

便利なサービスやこれまでになかった画期的なシステムは、人の生活を豊かにします。そのシステムの構築に関わってきた人口よりもずっと多い人々にサービスを提供するわけですから、その結果生まれる経済的な価値は計り知れない、そういった可能性がITシステムにはあるはずです。

ついつい目の前の苦しい仕事のことばかり考えてしまうものですが、よくよく行く末を想像してみると当たり前のそんなことを忘れてしまいがちです。

認知バイアスとビジネスモデル設計

行動経済学として認知バイアスをマーケティングに活用されていると冒頭で述べましたが、ビジネスを設計するにあたっても「物事には必ず別の側面がある」という意識は重要です。

ビジネスには登場人物が多く関わります。

・従業員
・取引先
・顧客
・株主
・地域
・社会
・国
・経営者

ざっとこれだけの登場人物がいます。国や社会は人ではありませんが、それを構築し、恩恵を受けているのは人に他なりませんから、そういったものにも少なからず働きかけることになるのが事業です。

これらを事業に関係する「ステークホルダー」と称しますが、彼ら全てに対してなんらかのプラスの影響を及ぼすようビジネスは設計されるべきである、という考え方を端的に「八方よし」と言います。

先の例をもとに、認知バイアスはどういった別の側面を覆っていたかをもとに考えてみます。

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