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「悪気のない人」を許していると、あなたの人生が終わる

本当に腹が立つ。たまに殺意湧くんですよね。でも悪気がないからなんか、怒りづらいんですよね…ほんとタチ悪いんですよ

世の人たちと話していると、こういう話をよく聞く。そのほとんどは、親の課題が残っている人だ。
どうしようもなくムカつくが、なんか怒れない。相手に悪気がないから、なんか怒ったら自分が悪者になる気がする。周りの人間からもそう思われる気がする。だから怒れないんですよね…と。
共感しかない。私もつい最近までそういう人間だったから。
・怒っている自分が嫌だ
・悪気がない人に怒ったら、相手が傷つくかも
・悪気がないから、こちらが怒ること自体が筋違いで、周りから批判されるかも
・悪気がないから、逆にこちらにキレてきたら嫌だな、怖いな
・怒るのもそもそも疲れるし。だから他のことで気を紛らせば忘れるから、それでいいです
などなど、巧妙に自分に蓋をして逃げ続けてきた。自分の本音を騙し、自分を傷つけてきた。怒りは絶対に他のことで紛らすことはできない。忘れることもできない。ただただ溜まり続け、いつか爆発する。だからこの島国では人口が減り続けているのに、鬱病や依存症をはじめとした精神疾患者が増え続けているのだ。だから年間2万の自殺体の山が積み上がるのだ。

わたしは高校生の時に鬱病とパニック障害になった。そこからは薬やら何やらで誤魔化して生きてきた。親の課題が残ったまま、親の代理人たちが次々と目の前に現れ、その「悪気のない人」たちに囲まれ生き血を吸われ続け。「怒ると相手に悪いから」と思い込み、怒れずに。その実態は「怒ると自分に被害がきそうで怖い、だから逃げている」ということに薄々気づきながらも巧妙に自分を騙し続けてきた。だが逃げ切れるはずもなく、怒りが剣山のように心に刺さり続け、自殺寸前までいった。

・4歳の時。躾と称して母親から尻が赤くなるまで叩かれた。「この子が正しく育つために」という母親なりの正義のもと、悪気なく俺を叩いた
・5歳の時。公文式の塾に行かずに遊びたい、という俺の気持ちを踏み躙った。「この子の将来のために」という母親なりの善意のもと悪気なく、俺を拘束した
・8歳の時。父親と母親から、戦争のような喧嘩を見せつけられ続けた。「俺たちだって大変なんだ」という両親の言い訳のもと悪気なく、脳髄に突き刺さる怒号を浴びせられ続けた
・12歳の時。父親そっくりの陸上部の顧問から「本気で走ってないから」という理由で殴られた。「駿は才能があるからそれを無駄にしたくない」という善意のもと悪気なく、俺の自尊心を奪った
・18歳の時。うつ病とパニック障害になった際、「駿はどうしてこうなっちゃったんだろうね」と母親に言われた。「私は悪くないはずなのに、何でだろう」という純粋な疑問のもと悪気なく、無神経に俺は傷つけられた。父親から電話が来て、「おーい、しゅーん、大丈夫かー? なんかお母さんから、駿が頭おかしくなっちゃったって聞いたぞー?」と、クソ馬鹿な声で言われた。「離婚した後も離れた息子を気遣う立派な父親を演じたい」という純粋な気持ちのもと悪気なく、俺は「頭がおかしい奴」と親から認定された。
・20歳の時。バイト先のIT企業の社員から人前で「金井くんはサイコパスだからね〜」と言われて笑いが起きた。「若者をいじって場を楽しくしたい」という気遣いのもと悪気なく、俺を愚弄した。その社員は父親にそっくりだった。
・25歳の時。経営している福祉施設で自殺者が出た時、その知らせを受けても表情変えずに仕事をしていると、泣いている社員から、「金井さんは強いですね」と言われた。「ただそう思ったから」という無神経さのもと悪気なく、ただそう呟き、俺を愚弄した。その社員は母親にそっくりだった。

挙げ出したらキリがない。あと300個以上はゆうにあるだろう。
「悪気のない人」から心を刃物で刺され続けた。だが怒れない、怖くて怒れない。弱い自分に甘んじ、精神は堕ちていった。

人間が最初に出会う「悪気のない人」は親だ。そこから受けた傷を放置しておくと、親に似た無神経な人間たちがどんどん迫ってくる。そしてそれに甘んじていると、自分を取り囲む「悪気のない人」のレベルが上がってくる。傷つけられることに慣れているから、「レベルアップした悪気のない人」を知らぬうちに受け入れてしまうのだ。そして、奴らは死ぬまでこちらの生き血を吸ってくる。だがそんなこと、「本当の意味で親の課題に向き合うこと」を知らなかった俺が気付けるはずもない。

何でかわからないけど苦しい。多分このままだと自殺する。でも死にたくない。なんとかできるなら何だってやってやる

最後にこの思いだけが残っていた俺は、ひたすら民間のカウンセラー、コーチに当たりまくった。精神病院は何の役にも立たないことは学生時代に学んでいたから、民間で評判の良い人たち、表には現れない紹介だけの人たちにお願いしまくったのだ。合計で300万円近く使ったのに、どれもクソの役にも立たなかったが。

コーチの一人に、藤原健太郎という男がいた。38歳、180cm弱、浅黒い顔でニキビ跡が大量に残っている男だった。ガタイもまあまあよく、本人の話を聞くに信頼に足る男だと思ってしまっていた。藤原は自身が鬱で引きこもり状態を経験していたが、そこから復活して今は自身の経験をもとにカウンセリング、コーチングをしているという人間だ。熱量高く人と会話し、相手の心の機微に聡い。共感能力が高く情に厚い男。当時の私にはそのように見えた。私の、親からも誰からも理解してもらえなかった苦悩を、この男だけが唯一理解してくれた、と思わされていた。藤原が醸す雰囲気と実体験、そして某プロコーチ協会にも加盟しており、裏付けのあるメソッドだからどうのこうのという話に、衰弱しきっていた私は藁にも縋る思いでこの藤原に100万円以上の金を支払った。何度か面談を繰り返す中で藤原は、「こんなにも行動力があって、熱量があって、頭の良い金井くんなら絶対に変われるし、俺が変えてあげるから。だから一緒に頑張ろう」と、藤原は何度も言い切った。今思えば、何もかもがズレた気持ちの悪い男だったのにそれを見抜けなかった。

藤原のプレゼンは実に見事だった。そして100万円を支払った後、藤原のマンツーマンでの講習・コーチングが始まった。詳細な自己分析シート、親への怒りの書き出し、吐き出し。特に吐き出しについては強烈なアクションだった。防音の部屋で一人になり、書き出した怒りを喉が枯れるほどの大声で叫び、涙を流すほど感情を露わにするまで叫び続け、枕などを親に見立ててそれを殴り続けて、涙が枯れるほど、喉が枯れるほど出し切ったら完了、という宗教団体顔負けの強烈なワークだった。「怒りを吐き出しきれば、自然と親への感謝が生まれてくる。それが生まれたら、親への感謝を手書きで、手紙にしたためて、親の前で読み上げる」と藤原は言った。通常の生徒であれば一度でこれが完了するらしいが、俺は全く親への感謝が湧いてこなかった。藤原の言われた通りに、喉が枯れて涙をボロボロ流し、やり切ったのに。藤原から「そこまでやり切ればOK.よく頑張ったね」と言われたのに。
「んー…何でだろう」と藤原は首を傾げていた。もう一回やってみようと言われ二度目にトライしたが、それでも全く親への感謝が湧いてこなかった。ここでも藤原は、「んー…おかしいなぁ、なんでだろう」と汚い馬鹿面で首を傾げていた。

100万円払った。しかし結果は出ない、というかむしろ悪化している。違和感を覚えながらも、「誰も理解してくれなかった俺の気持ち」を理解してくれている、という藤原の洗脳は強力だった。だから俺はここでもまだ、藤原に縋ってしまっていた。半年近くコーチングを受ける中で、他の生徒が次々と辞めていき、分割払いだった生徒から金が払われずに揉めている実態を何件も目の当たりにしていたのに。
藤原は真剣な顔で、熱量高く、そして話すたびに的確に俺の心情を理解して寄り添ってくれる。本気で俺の状態をよくしようとしてくれている、という藤原の姿勢に、「この人は一生懸命やってくれている…もう少し頑張ってみよう」と、藤原のコーチングを続けていた。

だがある時、藤原をよく知る人から、実は藤原自身が親の課題をクリアしていないことを知らされた。そして、とある信頼している方から「完全に詐欺です。騙されてますよ」と洗脳を解いてもらうことができた。
この人に洗脳を解いてもらっていなければ、あのまま俺は状態が悪化していたはず。「んー、何でだろう…」と首を傾げながら、表面的には心に寄り添っている風の、悪気なく、本気で向き合っている風の藤原に騙され続け、自殺に追い込まれるところだった。

「こんなにも行動力があって、熱量があって頭の良い金井くんなら絶対に変われるし、俺が変えてあげるから。だから一緒に頑張ろう」
こう何度も言い切った藤原。しかし自身が本当の意味で親と向き合えていないこと、他の生徒たちから「結果が出ないので辞めます」と言われて大量に離反されていること。詐欺であることは明白だ。

本当の意味で親と向き合えた俺は、ようやくこの現実に気づいた。そして親の課題を放置していたから、親のように「ただ悪気なく、無神経な発言で俺を傷つけてくる」奴から更にパワーアップした、「悪気なく、金と時間と生きる気力を奪い取ってくる」藤原のような詐欺師たちに騙されていることに気づけた。

金を返せ
俺は藤原に言った。何度もやりとりをしたが、藤原は自分の詐欺を認めなかった。

志望校がどうだの、という的外れな答えが返ってきた。
・藤原自身が、コーチングを提供できる人間ではないこと(自分が課題と向き合えていない)
・にもかかわらず「絶対に変えてあげられる」と嘘をつき、多額の金を支払わせたこと
・案の定、価値を提供できず、むしろクライアントの状態を悪化させたこと
この事実から藤原は逃げた。再度追求していったが、藤原は俺の前から姿を消した。
藤原を仕留め切れなかった俺はその後、藤原よりも更にタチの悪い、頭の切れる「悪気なく人を騙し傷つけ、生き血を吸い取ってくる奴」に襲われた。だが師の支えのもと、許さずに対処することができた。

人間が最初に出会う「悪気のない人」は親だ。そこから受けた傷を放置しておくと、親に似た無神経な人間たちがどんどん迫ってくる。そしてそれに甘んじていると、自分を取り囲む「悪気のない人」のレベルが上がってくる。傷つけられることに慣れているから、「レベルアップした悪気のない人」を知らぬうちに受け入れてしまうのだ。そして、奴らは死ぬまでこちらの生き血を吸ってくる。

根本の原因である親と向き合い。そして目の前の「悪気のない人」を許さずに向き合い。この、「自分を死に向かわせる負の連鎖」を断ち切ることができた。今は死にたいという鬱々とした気持ちはなくなり、毎日健やかに生きることができている。

本当に腹が立つ。たまに殺意湧くんですよね。でも悪気がないからなんか、怒りづらいんですよね…ほんとタチ悪いんですよ

冒頭のこちら。「悪気のない人」を、あなたは怒らずに、謝罪させずに。筋を通させることなく放置していないだろうか。
あなたが心の底から「悩みがない」「毎日楽しい」と思えているのなら問題ない。だが少しでもイラつく場合は、早急に処理しなければならない。単なるイラつきは、すぐに慢性的な怒りに変わる。目の前の「悪気のない奴」は、ゴキブリのようにどんどん増殖してあなたに襲いかかる。慢性的な怒りはやがて鬱々とした気持ちに変わり、更に肥大化したゴキブリはあなたの生気を吸い取ってくる。そこまでいったら、首を括る日は近い。

まずは根本を処理しよう。親と向き合おう。「親も悪気がなかったから」とあなたは言うかもしれないが、悪気がなかったら人を傷つけても良いのだろうか。そんなわけはない。
それに残酷な話だが。「なぜ私を傷つけたのか」を、親や親の代理人たちに確認していくと面白いことがわかる。確認当初は「悪気がなかった、あなたを傷つけるつもりはなかった」と奴らは言うだろうが、徹底的に問い詰めていくと論理が破綻する輩が現れる。つまり、「心の奥底では本当は悪意があった」ことが判明するのだ。
人間の本音は行動に現れる。行動がズレている時点で、徹底的に根元を辿っていけば「本当は傷つけるかもしれない、というのが実は薄々わかっていた」という輩である場合が多い。つまり「悪気なく私を傷つけていた奴」の正体は、実は「悪気があって私を傷つけていた奴」なのだ。
これに気づけば、

どうしようもなくムカつくが、なんか怒れない。相手に悪気がないから、なんか怒ったら自分が悪者になる気がする。周りの人間からもそう思われる気がする。だから怒れないんですよね…と。

このように、あなたが相手を気遣ってやる必要など、全くなくなる。

ちなみに、私もまだ完全体ではない。藤原を取り逃しているからだ。今どこに生息しているのかわからないが、奴が生きている限りは私の課題は終わらない。刺さった刃は、その課題を終わらせない限り抜けないからだ。私は藤原を絶対に逃さない。

生き方が仕上がれば、「悪気なく傷つけてくる輩」というのは近づいてこなくなる。だから我々がその生き方を望む場合は、絶対に課題から逃げることはできない。目の前の敵に臆さず、刺さった刃を返していこう。




以下の長編小説、企画出版希望です。
編集者や出版関係者でこちらの内容を本で出版したい、と思ってくださる方は、
kanai@alba.healthcare
こちらまでご連絡ください。

第一弾:親殺しは13歳までに

あらすじ:
2006年。1日に1件以上、どこかの家庭で親族間殺人が起きている国、日本。そんな国で駿は物心ついた頃から群馬県の田舎で、両親の怒号が響き渡る、機能不全家庭で生まれ育つ。両親が離婚し、母親が義理の父親と再婚するも、駿は抑圧されて育ち、やがて精神が崩壊。幼馴染のミアから洗脳され、駿は自分を追い込んだ両親への、確かな殺意を醸成していく。
国内の機能不全家庭の割合は80%とも言われる。ありふれた家庭内に潜む狂気と殺意を描く。


第二弾:男という呪い

あらすじ:
年間2万体の自殺者の山が積み上がる国、日本。
想は、男尊女卑が肩で風を切って歩く群馬県の田舎町で生まれ育つ。
共感性のかけらもない親たちから「男らしくあれ」という呪いをかけられ、鬱病とパニック障害を発症。首を括る映像ばかりが脳裡に浮かぶ。
世界中を蝕む「男らしさ」という呪い。男という生物の醜さと生き辛さを描く。

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