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映画界の「いたちごっこ」、その哀しきディストピア
今回の話は、正直この問題に対して誰が声を上げたか、という点については、声を上げた人が女性であるということ以外は個人的にそれほど興味はない、と言ってしまうと炎上してしまうだろうけど…
というのも、ここで僕が言わんとしていることは「どうすべきだ」みたいな提言ではないからだ。
もちろん性暴力に対しては厳しく非難されるべきだろうと思う。
しかしそもそも映画業界ってどうなの?というところを、本当はもっと深く掘り下げなければならないんじゃないだろうか?
この記事で取り上げている「映画業界の性暴力」という問題は、いわゆる「製作側責任者が立場の高さを盾に、弱者に対して圧力をかける」という問題にしか言及していない。
一方で疑問なのが「映画業界」における性の認識という点だ。
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例えば近年の大ヒット作品、ハリウッド作品、大手配給による作品などによるメインストリームの作品で見過ごされがちなのではないかと思うが、男女の恋愛感情のもつれという部分をほぼすべてといえるのではないかと思えるほど物語にその要素を加えている。
その中でも男女が性行為に及ぶようなシーンが入っているのだってほとんどだ。
多くは男女が個室に入って「やっただろう」と思わせぶりなものもあれば、思い切りよく大スターが素っ裸になって抱き合い、行為に及んでいるのをそのまま映し出しているものだって少なくない。
メジャー作品でこの状況だからインディーズ界、それも「ライフワーク」という名目のもとでやっているほとんど商売にならないようなインディーズ界なんて、ひょっとしたらAVの撮影と変わらねんじゃね?くらいのところもあることすら予測される。
いや、実際にそういう現場を見たとか、統計を取ったなんて事実はないから、個人的には断言しない。
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ただ一つ印象的だったのは、数年前に広島で行われた某映画祭のイベント取材のことだった。
そのイベントは、東京で新進気鋭の映画作家たちにより結成、運営されている映像団体の厳選短編映画公開とトークショーというものだった。
で、これも個人的な印象だが、とにかく男女が裸になり、くんずほぐれつ…
という場面がかなり目立ち、「ロマンポルノ映画祭か?」と思えたくらいだった。
中にはメジャー作品では恐らく出せないだろうと思えるような描写を、あからさまに映し出したり。
まあ個人的には衝撃的だったものの、そんな衝撃を与えてくれるものこそ表現、映画の世界かと自分を納得させながら、一方で心配だったのは、このイベントが年齢制限などを特に設けていないことだった。
イベント自体は結構遅い時間に始まったということはあるものの、年少者だって入れれば当然入るだろうし、どんな内容か事前に詳細もわからないので、セックス描写が嫌いな女性などは、知らずにはいれば当然地獄を味わうことになる。
で、トークショーになればそんな性描写を「いや~やってましたね~」と、笑い話のように盛り上げて…
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そしてその体験から、「ああ、映画界ってこんな世界なんだ」という印象が、自分の中に生まれた。
性描写だって大事な表現、むしろ性自体は人間を表現する上で重要な要素であるから、そこを避けるわけにはいかない。
そんな柱を建前に、業界の中では堕落した人間ができてしまう可能性がある。
表現に一生懸命な人間がいる中で、そんな人間たちを見て「ああ、人が裸を見せるくらい当たり前なんだ」「セックスすることなんて、そんな難しく考えることじゃないんなんだろ?」と思ってしまう人間もいるかもしれない。
そんな考えが広がれば、逆にエロいことしか考えてない人間が、自分の欲望を満たせる世界だと自らその世界に身を投じてくることもあり得るかもしれない。
そうすれば野郎の中には「簡単にセックスできるぜ」と横柄になる奴や、女性の中には「セックスくらいやらせるのは全然問題ない。むしろそれくらいの行為で上にのし上がれるのなら」と簡単に性交渉を容認する奴もいるかもしれない。
そんな風に乱れた世界に、純粋に演じることに憧れた人間が飛び込んだら、そりゃニュースで言われるような問題だって起きる。そしてニュースではその限られた一部分だけを切り取られるので「力関係」という部分しか見えてこない。
言っておくが、これは僕の頭の中で考えただけの仮説だ。
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ただ「だったらあなたは、完全に映画業界を否定しているのですね」と言われたら、そうではないから難しいところなんだな。
だって先述したじゃん?「性は人間にとって重要な要素の一つ」だし、だったら映画にそれを表現することも大事なことなのだろう、と。
アカデミー賞受賞で騒いだ『ドライブ・マイ・カー』は衝撃的だった。いきなり女性の口から「オナニー」なんて言葉が出る場面から始まり、有名俳優陣によるセックスシーンだってある。小さな子供たちもいる会場であんな映画を見たのは、また別な意味で衝撃的だったが(笑)、倫理的な面でいえば「見せてはいけない」と言われる一方で「見せなければならない」という意見があるという、一見矛盾したような複雑な事情がある。
某監督が非難されるという現在の事情はあれど、「me too」的に声が上がり業界が「浄化」されるか?全然そんな気はしない。
だってこの上がった声は、つまりは「検閲」へとつながる可能性だってある。結局こういった事件がきっかけで映像作品に対して性描写とか、製作現場へ厳しい制限が設けられ、苦労して出来上がった作品は「つまらない」と言われる。
そして「つまらない」作品が一通り蔓延したころに新たな作家が「こんなの間違っている!」とかいって、そういった制限をぶち壊そうとする。
そんな風にこれまでだって続いてきたんじゃないか。
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ああ、またもこんなウクライナ侵攻を完全に非難できない、「人間なんだから戦争は避けられない」的な、ディストピア的なことを書いてしまった。
僕がライターになったのは、もっと人に勇気と希望を与えるようなことを書くことを目指したからなのに。
昔そんな文章を見て、自分が励まされた。だったらそんな記事を書いたことで、自分が救われると思ったんだよ。難しいねぇ…
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