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県美24年第1期コレクションとスカート丈に狙われたラテ

写真は「腕っぷし」

 何かと昨今私の周囲にイタリアが渦巻くわけですが、この日もそうだった。別毎で訪れた名古屋。用事を済ませ「はて何処で過ごそうか」と地図を見ると、近くに愛知県美術館があることを知り気持ちは上がる。美術館に加わった新たなコレクション『ウルでの狩り』を前々から観たいと思っていたからだ。珍奇新規というだけではなく、この画が選ばれたことに個人的な意味的な意図的な文脈を強く感じており、観たいというよりも半ば生じた義務感。これを細かく書けば冗長に至り、割愛するがしかし、伝えたい思いは残る。つまり、葛藤と高揚感。そ子に義務感が濁流し、書きたいな。書こかな。でも主題と全体などを考え歩いていると……直ぐだった。

・NHK名古屋放送局 現着
 これまた偶然がラビオリのように重なる。歩いている通りがNHK放送局に面していた。そうなると寄らずして何に立ち寄るか。
「彩子居ねえかな彩子。すっぴんの藤井の綾子」声色を地回りの愚連隊に寄せ入館したところ、セキュリティーの活性を上げてしまったらしく、彼女からきつい目で睨まれるが、素知らぬふりで一階ロビーを散策。そこには局に関わる展示物、大河ドラマや、長寿こども向け番組『お母さんといっしょ』をイメージしたスタジオセットなどが設られていた。
 フロアーに綾子は居ないが、化け物は居る。茶色四角い凶暴な奴で、目は座して歯は尖り、受信料を滞納する家庭の子を喰うといわれる日本のサトゥルヌスだ。足を運んだ時間がやや早かったため簡易な策で封鎖され、化け物の間近に近づくことは叶わず、柵越しにカメラを構え撮影。茶色い化け物に金色の鯱が頭からがぶりとやっている。良いじゃないか。食うか食われるかという自然法則と資本主義の直喩であろう。
「ふふ、いいぞ。もっとだもっと」遮二無二シャッターを切っていると、展示物開放時間を迎えたらしく、撮影中の私はスタッフからそれはそれは丁寧に不審者として扱われ、絶妙な距離感の下、封鎖が解かれていく。
「ふふ、らしくなってきたな」 開放後は化け物に接近し、これを満足行くまで撮影。他では「業界用語の『平台』ってこういう意味なんですね」舞台セットの作りを学び、泥に似せたラテックスの感触を堪能し局を後にした。外に出るとNHK名古屋正面玄関の一部がガムテープで入念に封印されており、本物の化け物はこの地下に。そういうことだと思われる。

・オアシス21 現着

 隣接する此方は都会のコスプレ会場。そこには変わった店がままあり、一部をNHKスタイルで取り上げていきたい。
「ベリー目に効くアイちゃんショップ」 まずはここだ。周囲の方々からは見えない何か、俺にも見えないんだけどそういうのと話すと周りをギョッとさせるが、此方のTV CMソングは独特のそれで、頭にこびりつき不意に歌いたくなる。稀に歌ってしまっても安心したまえ。「目に良い」と思えば不思議と問題ない。
 店員はグミに似たパズルゲームを想起させる紫なそれを、それはそれは大切そうに抱え店内を闊歩。幾つもの胡蝶蘭を目にもし、平た顔族の風習でそれは新装開店を意味する。
「最近かよ」を溢すのだが……名古屋のド真ん中にグッズショップとして成りっていることは驚嘆である。これはCMソング以上に不思議ではないだろうかと思い、歩みを進め次を紹介したい。
「関東の夢の国部屋屋」 統治者の部屋をイメージしたショップ。グッズじゃなくて空間をコンセプトにするということは表現の範囲、インスタレーションなのかとしばし考え鑑賞。此方は表現方法に気を使いたくなる。少し大人しくすることを学んだ私は粛々と次に向かう。
「ハリーポッター屋」あ、ぼかすの失敗した。
「なんたらパトローナ」でお馴染みのウィザードショップがこちら。中に入ると両親が丹精込めて根性を手曲げした、くそガキがプリントされたTシャツが目に飛び込む。淡いピンクだ。欲しい。他には魔導士の杖なども販売されており、それらは霊感商法的に問題が生じるのかしばし考え、次に向かおう。
「べコーンとレタス屋?」発せられる独特のオーラーはある種の者を拐かす。腐女子が吸い込まれるように入店していた。その際に此方と目が合い、彼女は「はふん」という恥と興奮の責めぎ合いを見せたが「お嬢さんご安心なさい、私は女性の性衝動に過敏な猿の思春期の谷を超えた男であります」彼女を辱めるような野暮はとらない。紳士的無関心で応じたい。
 物の本によると好事家その想像力は凄まじく、鉛筆と消しゴムで関係性を四つに組ませることも出来るそうだ。限りなくアマチュアであるが、そのブックメイク力はプロレスである。

 こうしてオアシス21全体を見渡すし、以前から感じていた何かが明瞭に至った。これらショップが陰影になり、想像図がありありと姿を見せ始まった。これはRPG型ネットワークゲームのMMOのロビー画面である。一般的ではない作りと店構えがゲームやファンタジーを想起させていることが判った。それ故、ここにコスプレイヤーが集うのだろう。布面積の少ない冒険家達よ、公衆猥褻の博識あれ。
「実に不思議なエリアだ。大変良い」 フィールドワークを終えた私は本命の美術館へ向かう。

・愛知県美術館 現着

「おい、なんだありゃ」 地下に街中のピアノならぬ街中パイプオルガンが。弾ける者は限られるだろうが「ご自由にお試しください」のようなことが書いてある。ゲーム『女神転生』にて悪魔合体を繰り返し、受け継がれる邪悪なマカラカーンの追跡を振り切ろうと幾度ももセーブとロードを繰り返し、耳がちぎれる程に邪教の館ソングは聴いてきた。それだけではない。映画『グーニーズ』は繰り返し繰り返し鑑賞した私は、やれる気がする。足元のグラつきも問題はなさそうですな。では片目のウィリーに敬意を持ち、いっちょミサってみるかと鍵盤を「えい」と押すが……木製の模造品だと気づく。
「ちえっ、つまんねえの」踵を返すと、恰幅のいい外人の旦那からすげえ観られていたことに気づく。彼は少し寂し気な目を此方に見せた。何故バックパックを背負ったTシャツ姿の俺に期待をした?

 そしてエレベーターに乗車すると、愛知県美術館2024年度第1期コレクション展である。

「こ……これは」

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