「ブルドーザー」と呼ばれた元タンザニア大統領ジョン・マグフリ|生き残りをかけて、「あたらしい社会主義」の中で個人と組織を導くリーダーvol.1
あらゆる個人も組織も、「生き残り」が最大のテーマになる。
気候変動は言わずもがな、増え続ける天災に食糧問題、そして感染症。
「生き残り」をモダンデザインし、楽しむことが最近ブームのサバイバル・カルチャーだと言われています。
エコやSDGsとはまったく違った文脈のサバイバル・カルチャー。
次に起きるなんらかの危機のあと、この文化は急速に脚光浴びることになるでしょうが、「そもそも、我々はどうしたら生き残れるのか」という欲求が徐々に可視化→渇望されつつある時代と私は考えています。
ベルリンの壁崩壊後25年経った頃、4G回線が世界的に普及した2014年あたりを境に、大規模な金融緩和の影響が生まれ、世の中が
①貧富
②グローバルか否か
③管理者か非管理者か
④ロボット・デジタルを扱えるものか/否か
といった軸で分断・二極化しました。
この分断は今も拡がり続けています。
そして、次の時代の分断は「サバイバルできるか、そうでないか」に分かれる点にあると私は考えています。
経済破綻から天災まで、あらゆる危機を想定しながら、準備を怠らない人たちは確実に存在し、その様な人たちが次の時代へ向かって生き残り、適応していくでしょう。
「サバイバル・クラス」の彼らは騒乱や天災を避けて歴史に習うように「来るべき未来」に備え余念がありませんが、まさにそういった「生き残りに導ける」リーダー像を、HRや実績という観点から探っていこうかと思います。
「あたらしい社会主義への転換」という大前提
「次の時代を生き残ること」について考える際に、世界中に吹き荒れる「あたらしい社会主義」に触れないといけません。
「あたらしい社会主義」とは、「社会主義は民主主義によってのみ実現され、そして民主主義も社会主義によってのみ達成される」という思想をベースにしていますが、「資本家に支配される世界」とは全く別の世界を目指している考え方で、資本主義に飲み込まれ疲弊する世界に対して、特にミレニアル・Z世代中心に加速的に浸透が進んでいます。
【ご参考までに】「21世紀の資本論」を著したトマ・ピケティ氏が↓の本で、「あたらしい社会主義」に触れています。
「あたらしい社会主義」を標榜するリーダーとして「アメリカ民主社会主義者」のアレクサンドリア・オカシオ・コルテスの躍進が止まりません。
コルテスはアメリカ中心に吹き荒れる「あたらしい社会主義」の先導者の一人ですが、「企業の力を弱め、労働者の力を高める改革のために戦う」という目標を掲げており、加速度的にそのコミュニティを拡大しています。
私のような「強い個人と組織を生み出す」ことを生業としている人間からすると、その動向が非常に気になるリーダーです。
32歳のコルテスは、2018年の中間選挙の予備選挙で10期の現職だった民主党議員連盟議長ジョー・クロウリーを破り、2020年の選挙でジョン・カミングスを破って再選した破竹の勢いがある政治家です。
初立候補当時29歳だった彼女は、家計を助けるために(家が差し押さえられないように)ウェイトレスやバーテンダーをはじめ、いくつもの仕事を掛け持つイチ活動家に過ぎませんでした。
2028年に米国選挙で若者の比率が有権者全体の約半数を占めるようになり、有権者の「最大勢力」として大統領選挙や連邦議会選挙、州知事、議会選挙などで優先課題や重要政策について大きな発言力を得るようになるので、このような人口動態の変化から米国がまったく別の社会=あたらしい社会主義社会を形成する可能性が高まります。
2021年時点で、党員平均年齢は31歳まで下がり、事実上、ミレニアルズとZ世代の政党として躍進を遂げていますが、もし、このままの勢いで党員が増え続け、次々とミレニアルズ世代の立候補者を擁立できるなら、2028年に起きる有権者の世代交代から最大勢力として大統領選挙や連邦議会選挙、州知事、議会選挙を多数を獲得できるようになると予測されます。
膨張を続ける資本主義は、必ずどこかで破綻に直面しますが、歴史を振り返れば、その後、大きな国家間に摩擦が生じますが、まさに我々はその転換点に立っています。
社会主義→新自由主義…の次に訪れる可能性が高い、この「あたらしい社会主義」の時代に突入すると、資本家中心のこれまでの世界から大きく一変しますが、そんな時代を「サバイブできるリーダー」について考えてみました。
第1回目は、昨年惜しくも亡くなった、タンザニアのジョン・マグフリ大統領について焦点を当てます。
「ブルドーザー」と呼ばれた、ジョン・マグフリ大統領
タンザニアといわれても、あまりピンと来ないかと思いますが、東アフリカの中堅国で、赤道直下の世界有数の大自然と野生動物を擁する国です。キリマンジャロ国立公園やビクトリア湖が有名でしょうか。
130の部族、イスラムとキリスト教がほぼ半分ずつを占める新興国で、実はこの数年でアフリカで最も成長した国の1つ。
その成長に導いたリーダーが、大統領であるジョン・マグフリです。
マグフリは、元々中学で7年間数学と化学を教えていたが、辞職し、95年から国会議員になったキャリアを持っています。
マグフリが世界で有名になったのはコロナ対策の件で、タンザニアでは彼の一存で「コロナは存在しない」ことになっており、一昨年5月以降、タンザニア新型ウイルスの感染状況を公表するのをやめています。
当時、ジョン・マグフリ大統領が、パパイヤ、自動車オイル、ヤギのミルクなどをPCR検査に出すと、すべて陽性になったので正確さに欠けると発表。
あわせて「コロナフリー」宣言をしたため、ウイルスや感染事例の存在は公式的にはなくなりました。この状況は現在も継続中です。
今年に入って欧米諸国でもPCR検査の結果やワクチンに懐疑的な姿勢を示す国が増え、また、感染者のカウントをするのをやめた現状を鑑みるに、もしかしたらタンザニアの取り組みのほうが、一歩先を進んでいたのかもしれません。
そして、皮肉なことに昨年の春、コロナ(と思われる疾病)でジョン・マグフリ大統領が逝去しました。
コロナに関する言説からも強引な政治家だったことが伺えますが(あだ名が「ブルドーザー」)、シンパも多く、葬儀の際には反対派だった多くのミュージシャンたちも協力し「追悼歌」を作成しています。
このような文化的側面から国政を司ったトップの死に対する本当の評価が垣間見れるものだと感じますが、コロナ対策はさておき、彼が「アフリカでの未成熟(…どころか汚職にまみれる)組織において、心血を注いで組織改革を果たした」プロセスについてまとめました。
「全ては透明化のために」徹底的な汚職の撲滅と、コストカット
ジョン・マグフリ大統領が在任中に行った主な政策は、主に下記です。
徹底した汚職の撲滅に力を注ぎ、賄賂に関して厳しい刑罰を課し、無駄なコスト削減に心血を注ぎましたが、大統領のまさに「透明化」に向けて戦い続
けたリーダーでした。
開発途上国から低中所得国に急成長したタンザニア。
この背景には、故ジョン・マグフリ大統領が命懸けで改革した汚職撲滅があったのは間違いありません。
なお、マグフリ氏指導の下でのタンザニア成長のコンセプトは「人材教育で中所得国になる」ということでした。
もともと教師だったこともあり、育成を主眼に置いていた可能性は高いですが「人材育成に関して、リーダーがどれだけ中長期的視座を持ち、本気で実施するか」で組織の成長が差が生まれる時代に突入したと思っています。
時代の変化が早すぎるため、優秀な人であったとしても、成長しづらい環境にいることで、他の組織の人材に追い抜かれてしまう、つまりは組織としての地力に差が生まれる可能性が飛躍的に高まりつつあるためです。
まさにこの徹底を、マグフリは一気通貫でやってきたところに、「生き残れる」組織を生み出す秘訣がありました。
■マグフリ氏の政策や実績の詳細を知りたい方はこちら
・タンザニアの「ブルドーザー」大統領 ――マグフリ政権の特徴――
https://www.jstage.jst.go.jp/article/africareport/58/0/58_67/_pdf/-char/ja
・タンザニア連邦国に関する調査レポート(ODA調査 - 参議院)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/kokusai_kankei/oda_chousa/r01/pdf/3-2.pdf
ジョン・マグフリと石原慎太郎の共通点
ジョン・マグフリ氏について考えると、先日亡くなられた石原慎太郎氏との共通点を個人的に強く感じます。
石原慎太郎氏は赤字垂れ流しだった都の財政を「実際」に黒字化し、環境と経済負担からコンパクトな東京オリンピックを提唱し、どこよりも早くカジノを誘致しようとした先見性を持っていました。
上に書いた資本主義の弊害と通ずる「日本式システム」の壁と衝突し、国会議員を辞職し、その後自由度が高い都知事に立候補したのが石原慎太郎氏でした。
毀誉褒貶ありますが、東京や日本を大きく前進させたい想いは、間違いなく本物だったと言えるでしょう。
日本や東京の凋落を止められるほどの情熱と行動力を持った、「毀誉褒貶が激しい」強い想いがある政治家は現れないかもしれないことを考えると少し寂しくはありますが、その様なリーダーが日本にも直近まで存在していたことを自覚し、もう少し日本人は自信を持ってよいのではと私は考えています。
「人を起点に成果を出す」 この国の組織構築を進化させたい
上記のような「生き残り」につなげる施策を実施するリーダーが今後求められることはまず間違いないですが、そういったリーダーを増やす取り組みに私は関心を持っています。
もちろん実際に実践するなかで、会社の風土やコミュニケーション状況で、大小様々なチャレンジが待っていることは間違いないでしょう。
ただ、組織において「人を起点に成果を出す」ことが、これからの世の中で企業が生き残るために必ず必要になると私は確信していますが、HRの取り組みを実施する本質的な意味は、この生き残りにつながる、という点に集約されると確信しています。
ぜひ、少しでも、経営や人事に携わる方々の日々の業務にご活用できそうであれば嬉しい限りです。
どんな会社でも、どんな組織でも、「強い個人が集まり、最高のチームビルディング方法を、会社がシステムとして内包できる」ようにすることが、私のチャレンジです。
究極的には、製品として、HR/マネジメント/人事評価の思考法そのものを誰でも使えるようにしたいと思って、それを可能にする「パフォーマンス・マネジメント」のシステム「コチーム」を展開しています。
■パフォーマンス・マネジメントの紹介はこちら
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