「最軽量の人事評価」を実現する方法
この記事は
「人事制度を構築したけど、運用がうまくいかない」
「これから人事制度を構築しようとしているけど何から手を始めるべきかわからない」
「できればコストを掛けずに人事制度をクイックに構築したい」
…といった経営者・人事の方々にむけての内容となります。
6月末までの期間で人事評価を実施した企業が多いこともあり、時期的に色々と相談を受ける機会が増えました。
自分が様々な企業の人事制度全般(特に①評価制度②報酬制度③等級制度)を策定する機会が多いが、「評価まわりに関する疑問」は、自分自身が評価づくりに携わっていると殊更よく感じます。
特に中小企業の場合、人事制度に明るい人がおらず、外部の評価コンサルに非常に高額なフィーを支払わないと、制度がつくれない。運用できない。だから、評価制度を導入しない。
…といった前提で考えられているケースが実に多いのですが、実際はまったくそんなことはなく、「日本における人事評価」は専門性が必要な業務だと思われている印象があります。
そもそも、日本において、人事制度全般(改めて記載するが特に①評価制度②報酬制度③等級制度、今後は「人事評価制度」と記載)において、制度設計のみに注力されすぎています。
日本以外の先進国の企業においても、同様の制度が体系化されていますが、日本ほど制度設計に力を入れておらず、その代わり「運用」について注力されていることはあまり知られていません。
海外のやり方を無条件で賛美するわけではありませんが、評価がうまくいっていない日本企業は、海外のそれと比較して「制度設計で燃え尽きて、運用まで手が回らない」文化の企業が多い。
※このあたりは以前We are the people安田さんやあしたのチーム赤羽代表とウェビナーしました。もしご興味お持ちの方は下記にて御覧ください。
https://coteam.jp/seminar_archive/how-to-operate-evaluation-system/
なぜ、人事評価って重要なのか。
経験上、様々な業態・業種・規模の企業における評価制度構築を実施してきた経験から、人事評価制度は「組織を強くする」ために不可欠なものでした。
人事評価は、組織の「筋肉」を生み「神経回路」をつなぐものだからです。
一般的に、人が人に対して健全に意見を言える状態であることは、強い組織の条件だと考えられています。
建設的に議論ができるという行動様式を、会社の中で仕組みとして人工的に担保しないといけないのですが、この組織における神経が破壊されている会社さんが増えています。
例えば、日本の企業には、R&D部門と営業・マーケティング部門が十分に対話をしない会社が多くあります。
でも本当は、2つの部門がそれぞれの専門性を発揮しながら、一緒になって考えないといけないはずですがそれが難しい状態になっています。
人間の体に例えると、よくできていて、腎臓の調子が悪い時には、肝臓が一生懸命助けようとします。
これを組織においても、同じことが言える状態にする、
つまり、
「従業員が、目標達成や組織の指針にとって、一定の好ましい行動をとる確率を高めるのにはどうしたらいいか」
…を体現できる最も手っ取り早く精度の高い手段、それが評価だと私は経験上感じています。
営業にしても、マーケティングにしても、最良の戦略を立てるよりも、「戦略方針に対して同じ目線でチームがズレなく挑戦する」「個人がやるべきことをやりきる」ことは案外難しく、策を立てるよりも実行することに課題がある組織が経験上多いと感じています。
※現場の実行力が高いにもかかわらず、戦略がない点に課題がある組織ももちろんありますが。。
そこで、ちゃんと現場組織の手や指が連携し、目標達成に向けて根気強く仕事をするためにどうしたらいいかを考えますと、打ち手は「個人に関するもの」と「システムに関するもの」に集約されます。
その中で個人のアプローチは、システムを先にしないと、人間は環境動物なので改善が難しいということが私の意見です。
…と前段が長くなり、すみませんでした。
会社のミッション達成にむけて、有益な情報取得・行動を個人に発動させるためには、そのための動機づけ設計が必要になってきますが、まさにこのシステムが、具体的に人事評価制度全般だと私は考えています。
特にこれからの時代は、上記問題提起した部分に課題を抱える組織が増えるため、評価の重要性は増すことはまず間違いありません。
そもそも、社内コミュニケーションをより創発的なものにして、メンバーが一定の好ましい行動をとる確率を高めるのには下記2点がポイントとなります。
人事評価は「査定」のためのものだと捉えられやすいですが、 本来的には「フィードバックの機会」「良い行動/良くない行動」を明確にして、成長につなげたり、働く人同士の相互受容(エンゲージメント)につなげることが、その最大の利用価値だと私は考えます。
そういう意味で再掲となりますが、人事評価は、組織の「筋肉」を生み「神経回路」をつなぐものだと考えています。
人事評価制度を、専門家や経験者がいなくても「最軽量」に実現する
【制度設計編】
この記事では、そんな評価を、お金や時間をかけず、制度設計と運用両方をないがしろにせず、且つ「最軽量」に実現する方法を私なりにまとめました。
まず、評価は「①仕事や振る舞いに対して、組織が求める基準」があって、「②その基準と比べたときにどうだったのか」を評価する構成が基本となります。
この「評価の基準」は「会社がその人に期待していること=価値とみなすもの」であり、「最軽量」な評価の実現を目指すなら
・目標
のみ決定すれば、極論、人事評価はスタート可能です。
そこに
・等級や役職ごとに求める役割
・プロセス評価
・行動評価(バリュー/コンピテンシー)
などさまざまな「会社が重視する価値」を組み合わせて肉付けしていくことで、その会社独自の評価制度として厚みが増していきます。
下記図のような前提で作成すれば、運用しやすい状態となります。
「評価の納得感」をつくるためには、「会社がその人に期待していること」について、会社・当人双方が同じ認識を持ちお互いに合意をしている、という点が第一に重要です。
評価を機能させるにはここが最重要ポイントとなるので、そのために「評価基準」は明確に、明文化する必要があります。
もうひとつ、大事な点は「評価をするならば処遇(賃金・報酬・賞与)もセットで決めること」です。
評価だけ実施して、頑張っても何も変わらないのであれば、メンバーのモチベーションやエンゲージメントにネガティブな影響を及ぼし、評価という活動全般が形骸化しやすくなります。
評価を実施する場合、貢献には報いることを実践することは念頭に置きましょう。
なお、「処遇」は「貢献にどう報いるか」であり対価としての報酬となります。
報酬とは必ずしも賃金だけを指すものではありません。
仕事そのものに対するやりがいや自身の成長実感、仕事上で築いた人間関係も報酬の一部。それらの内的報酬は一緒に働くメンバーのモチベーションとなります。
一方、内的報酬だけで満足できる人は多くないため、賃金やポストなどの外的報酬を用意する必要がある。
【運用編 : 1on1などの高頻度フィードバック】
冒頭に書きましたが、ここからが本番です。
評価で大事なポイントは「正確な評価」をすることではありません。
そもそも他人の成果・プロセス・行為を正確に評価することは難しいということもありますが、仮に100%正確な評価が可能だったとしても、相手(被評価者)が納得していなければ、その評価は実質意味をなさないという点が肝心です。
被評価者は、与えられた評価に納得することではじめて、その評価を基に「自分の行動の何がよかったのか/改善点は何だったのか」の理解や、改善行動につながるからです。
上司からの評価に対して「一方的で、筋違いの評価だ」という風に捉えられると、まさにただの「反発につながる査定」となり、「成長」や「フィードバック」につながらないためです。
この「納得感」を生むために最も重要な点が、「高頻度のフィードバック」です。
最近では「1on1」の形式で、定期的に実施される機会が増えてきましたが、1on1は評価以外の観点からも非常に良いシステムです。
1on1をうまく定着させている組織は生産性向上・離職防止に有意な結果を出すエビデンスが豊富にあり、私自身さまざまな企業の1on1を見ていて、非常に有用性が高く、且つ効果に対して再現性の高い取り組みであると感じます。
上の方で、日本の評価の特徴を記載しましたが、最もダメな文化として定着している点が、「半期に1回の評価」という仕組みだと様々な組織で痛感してきました。
評価がもっと上手く活用されている諸外国や組織を見ても、かなり高頻度にフィードバックをしています。
※KPMGのこちらのレポートに「最低4半期に1回以上」「1週間に1回がオススメ」とあります。
「…とはいっても、現場が1週間に1回も面談するなんて、負荷のほうがデメリットになるのでは」という意見を聞いたりしますが、1週間に1度、5分から10分くらい話すだけでも、非常に大きな効果を期待できます。
※たまに、「30人部下がいまして話す時間をが取ると地獄なんですよね…」みたいな話を聞きますが、これはそもそも組織構造に問題アリだったりします。
私のオススメとしては下記についてお話しすることをオススメします。
●毎回の1on1で話す内容
・前回の1on1から、自分が相手に対してどういう評価をしたか
●1回の1on1では、下記どれか1つを話す
・前回の1on1から、目標の達成に向けて、自分を評価すると何点で、その理由を聞く
・具体的な成果について教えてもらう
・成果について、できた(できなかった)理由
・特に意識してがんばったことや工夫した点
・成長ポイントやスキル
これだけで、評価の運用はかなり回りやすくなります。
組織やメンバーのために、1週間に一度それくらいの時間も取れないマネジメント状況であれば、そもそもその組織はかなり末期状態なんじゃないかと私は考えていますが、尚更この人事評価を実践することをオススメします。
もしよければ私が1on1マニュアルを作成したものがこちらからダウンロードできますので、ご興味あればご活用ください。
最後に 「人を起点に成果を出す」 - この国の評価制度を進化させたい
ここまで5000文字以上に渡り、評価を最低限のコストで実施するための、重要なポイントをカンタンに説明してきました。
評価の重要性・意義、そこから評価が成功するための基本ポイント(WHO/WHAT/HOW)について、なるだけわかりやすく書いてきたつもりです。
もちろん実際に実践するなかで、会社の風土やコミュニケーション状況で、大小様々なチャレンジが待っていることは間違いないでしょう。
ただ、組織において「人を起点に成果を出す」ことが、これからの世の中で企業が生き残るために必ず必要になると私は確信していますが、HRの取り組みや評価を実施する本質的な意味は、この生き残りにつながる、という点に集約されると確信しています。
ぜひ、少しでも、経営や人事に携わる方々の日々の業務にご活用できそうであれば嬉しい限りです。
どんな会社でも、どんな組織でも、「強い個人が集まり、最高のチームビルディング方法を、会社がシステムとして内包できる」ようにすることが、私のチャレンジです。
究極的には、製品として、HR/マネジメント/人事評価の思考法そのものを誰でも使えるようにしたいと思って、それを可能にする「パフォーマンス・マネジメント」のシステム「コチーム」を展開しています。
パフォーマンス・マネジメントの紹介はこちら
組織や人に関することは非常に難しく、まだまだ、自分が携わったことのない領域もあり勉強中の身ですが、お手伝いできる範囲で無料での組織づくりや人事や評価に関する相談をお受けしたいと思っていますので、組織づくりや人事全般に悩んでいる方や少しでもご興味お持ちいただけた方のDMお待ちしております。
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