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弱視のわたしと新体操~①あんな風に踊りたい~

~美しさとかっこよさに憧れて・新体操部入部~


中学時代にわたしが所属していたのは、学校内で特に厳しいと言われ、団体・個人共に関東大会出場経験もある新体操部だった。

厳しい上下関係と厳しすぎる練習で有名なその部活に入ろうと思ったのは、小学校高学年の時に観たオリンピック競技に胸がときめいたからだった。

弱視だからなのかただの感性なのかはわからないが、小さなころから、華やかで派手なモノやコトにいつも心を動かされていた。

だから、オリンピックを観た時、綺麗な色のリボンをクルクルと回しながらフロアを舞う姿は、美しくてかっこよさもあり、感動という言葉では言い表せないほどの衝撃を受けたのだった。

「わたし 新体操部に入る!」

弱視の、人よりだいぶ見えないわたしから飛び出たそんな言葉に、母たちは全く驚くこともなく、大喜びしていた。

「楽しそうね!亡くなったおばあちゃんもリコちゃんには新体操が似合うと思うわと言っていたのよ」

と、驚くほど背中をポンッと押してくれたのだ。

だから、わたしは、新体操に対する想いがどんどん膨らみ、不安や心配を感じることなく、ただただ楽しみにしていた。

そして、待ちに待った中学校入学。

入学してすぐに、やっと夢が叶うというワクワクした気持ちで、小躍りしながら入部届を提出した日のことを今でも覚えている。

どれだけ大変で過酷な3年間が始まるとも知らずに。

~ハードな練習の日々~

わたしたち1年生が入部したとき、2年生と3年生は5名ずつくらいの先輩方がいた。

その厳しい部活ゆえに、毎年どの学年でも退部する人がいたようで、残った人たちは関東大会や県大会に出場する素晴らしい演技をする先輩方だった。

わたしたちの代は11名。素晴らしい先輩方に憧れて入部した1年生たち。2年生・3年生になるころには脱落者も出てくるだろうと先輩方や先生からは思われていたようだが(特にわたし?)、3年間誰一人やめなかったことがわたしたちの代の誇りだった。

練習が始まった直後は、部活が厳しいということも感じないほど、ただただ毎日が楽しかった。

毎日、先輩たちの素晴らしい踊りが見られることに大きな幸せを感じた。

弱視であっても、体育館で先輩たちからすぐのところで演技を見ることができるので、充分に感動できた。(これが大会になると見えづらさに悩んだのだが)

毎日、初めてのバーレッスンや踊りの練習をすることが楽しくて仕方なかった。

けれど、だんだんと厳しさも感じるようになってきた。

ほぼ毎日のように放課後は部活。新体操部は華やかで辛そうなイメージなどないと思うが、実際は超体育会系だった。

火曜日・木曜日のように週2~3日はバーレッスン(バレエの基本のレッスン)や様々な動きを練習したり、音楽に合わせて踊る練習だった。

この日は、専門のコーチや顧問の先生が来てくださり、厳しく指導してくださった。

わたしは最初のころ、とても身体が硬かったので、毎日のお風呂上りに柔軟体操をするなど家でも柔らかくする努力をしていたが、部活の練習での柔軟体操がとくにキツかった。

ペアになって、お互いの身体を押してあげたり、上から乗っかったりする時間があったのだが、コーチがわたしのところにくると、まだまだいけるでしょと言わんばかりに強く乗っかり押してくださったので、毎回うう~っとしかめっ面をしていた。硬いからか、容赦なかった。

また、踊りを先輩が見て、直す箇所を教えて頂く時間が毎回あり、上手ではなく飲み込みもよくないわたしは、いつも緊張していた。

バーレッスンなどの練習の日以外の平日は、陸上部のような練習メニューでとてもハートだった。

学校の周りを10周以上(45~1時間走り続ける)、腹筋・腕立て100回ずつ、二重跳び100回…そんなメニューを週に2日くらいはこなしていた。

短距離は苦手だが、長距離はそこまで苦ではなかったから、走るのは問題なかったが、それでも暑い日も寒い日も走ったので、ハードだなぁと思っていた。

それよりも、走った後の腹筋運動などが辛かった。腹筋も腕立ても二重跳びも上手くできなかったわたしは、いつも最後の方に終わり、終わるころにはぐったりしていたものだ。

それでも辛い練習のあと、毎回練習終わりに、友達とみんなでおしゃべりする時間や一緒に帰る時間は本当に楽しくて、夕焼け空を見ながら歩いた景色を思い出すと、懐かしくてあの頃にタイムスリップできるような気がする。

日々の練習は厳しさのなかにも楽しさがあったが、3年間続けていると辞めたくなることもあった。

いま、思い出すと辞めなくてよかったと心から思える。

あのときあの場所にいるときは、あの時間が絶対だった。

でも、そこをはるか昔に通り過ぎていまった今、見えづらくてもやりたい新体操を選び、個人競技のリボンで踊り、がむしゃらに頑張ったからこそ今のわたしがいると思えるのだ。

(②につづく)




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