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23/24シーズン(ほぼ)前半戦総括 :: TW01-10 :: WSL Watch #026

WSLは12月半ばに10節まで消化したタイミングでウィンター・ブレイクに入ったんで、1節〜4節までをチェックした"WSL Watch 003"、5節〜8節までをチェックした"WSL Watch 017"に続いて'TW = Table Watch'、つまり順位表の確認の第3弾を。ただ、9節と10節だけっていうのも微妙だし、ウィンター・ブレイクでもあるんで、その2節を含む1節〜10節までまとめて。ちょっと時間が経っちゃったけど、とりあえず、全試合フルマッチでチェックできたんで。個人的には、せっかくだから年内にもう1試合やっちゃったりできなかったのかな? とも思ったりするけど、全22節の内の10試合なんで'ほぼ'前半戦総括ってことで。

トップ4は順当な闘いぶり

10節終了時点のテーブルは以下の通り。上位はチェルシーとアーセナルのロンドンの2チーム、マンチェスター・シティとマンチェスター・ユナイテッドのマンチェスターの2チーム、つまり、いわゆるトップ4が順当に勝点を積み上げてる感じ。

WSLの概要について触れた"WSL Watch #001"で「上位チームはいかに中位・下位から取りこぼさずに上位同士の直接対戦で勝点を稼ぐかが大事」って書いたけど、この目線で上位4チームをまとめると以下のような感じになるかな。

  1. チェルシー: 8勝1敗1分
    勝点3を取り逃がした2試合は、アーセナル戦の負けとマンチェスター・シティ戦のドロー。マンチェスター・ユナイテッド戦はウィンター・ブレイク明けの初戦(1巡目の最終戦)なんで、実はトップ4との直接対戦では勝ててないってことになる。それでも首位に立ててるのは、それ以外の試合で取りこぼしてないからなんだけど。王者らしい強さを見せてるとも言えるけど、トップ4との直接対戦で勝ててないのはちょっと気になるところだったり。10試合で32得点はもちろんリーグ1位。1試合平均3点以上の圧倒的な攻撃力は脅威でしかない。

  2. マンチェスター・シティ: 7勝1分2敗
    勝点3を取り逃がした3試合の中で、チェルシーとのドローはけっこう大きな議論になった判定があって最終的に退場者を2人出しちゃった試合だったんで、結果としてはむしろポジティブ。負けた2試合ですごく痛かったのは、やっぱり6節のホームでのブライトン&ホーヴ・アルビオン戦。シュート数は35:6(枠内は13:3)、保持率は66:34だったくらいで、内容ではほぼほぼ圧倒しながら点が取れずに少ないピンチで失点しちゃった、言ってみれば、取りこぼしの典型例みたいな試合だったかな。負けたもう1試合はアーセナル戦なんだけど、実は内容ではかなり上回ってて、試合終盤にGKのミスが出ちゃって負けたんだけど、"WSL Watch #015"でレビューしたマンチェスター・ダービーでの快勝も含めて、実はトップ4との直接対戦の内容はすごく良かった印象だったりする。10試合で失点7はリーグ1位で、得点も26点でリーグ2位なんですごくバランスが取れてるんだけど、けっこう退場者を出した試合がありながらも平均保持率が59.1%でリーグ3位だったりして、保持率を高めることで非保持の時間を短くして、結果的に失点も少なくできてる感じ。

  3. アーセナル: 7勝1分2敗
    勝点3を取り逃がした3試合の中で一番痛かったのが、何と言っても"WSL Watch #024"でレビューした10節のアウェイでのトッテナム・ホットスパーとのノース・ロンドン・ダービーを落としたことになるのかな、やっぱり。しかも、"WSL Watch #020"でレビューしたその前のチェルシーとのロンドン・ダービーで快勝してて、その試合では入場者数の記録も更新してて、ものすごくいい流れだっただけに。内容が悪かったわけじゃないんだけど。残りの2試合は開幕直後で、開幕戦のリヴァプール戦の負けと2節のマンチェスター・ユナイテッド戦のドロー。直前までUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグのプレーオフがあった影響も感じられたり、新加入選手とかケガで長期離脱してた選手のフィットも部分も含めてちょっと躓いちゃった感じだったけど、特に開幕戦のリヴァプール戦はちょっとショッキングだったかな。10試合で24得点・10失点なんで、バランスがいい闘いはできてる感じ。

  4. マンチェスター・ユナイテッド: 5勝3分2敗
    トップ4の中ではちょっと離されちゃってるのがマンチェスター・ユナイテッド。引き分けたのがアーセナルとレスター・シティとブライトン&ボーヴ・アルビオン、負けたのがマンチェスター・シティとリヴァプールで、チェルシーとの1巡目の対戦はウィンター・ブレイク明けの初戦なんで、トップ4との直接対戦で1試合も勝ててなくて、それ以外のチームとの対戦でも3試合で勝点3を取れなかったことになる。負けた2試合を見ても、マンチェスター・ダービーは内容的にも完敗、10節のリヴァプール戦も先制したのに逆転されてたりしてて、ちょっと課題が多い感じ。レスター・シティとブライトン&ボーヴ・アルビオンとのドローももちろん痛いし。上位争いから離されないためには、ウィンターブレイク明けのチェルシー戦がものすごく大事になりそう。10試合で25得点・11失点なんで、バランスよく闘えてはいるんだけど。

上位争いに関しては、直近の5シーズンの結果を見ても取りこぼしていいのは4試合くらいなんだけど、今シーズンはもうちょっと増えるかも? なんて思ったりもして。それだけ拮抗してきてるってことなんだと思うけど。

堅実な闘いで躍進したリヴァプール

トップ4以外のチームで目を引いたのは、やっぱりリヴァプールってことになるのかな。数字的には5勝3分2敗で4位のマンチェスター・ユナイテッドと同勝点、トップ4との1巡目の対戦はマンチェスター・シティ戦だけ残してるんだけど、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドには勝ってて。ちなみに、負けたのがエヴァートンとチェルシー、引き分けたのがウェスト・ハム・ユナイテッドとトッテナム・ホットスパーとブリストル・シティ。アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドに勝ったのは率直に大殊勲って言えると思うけど、だからこそ、マージーサイド・ダービーでエヴァートンに負けたこと、下位に沈んでるウェスト・ハム・ユナイテッドとブリストル・シティと引き分けちゃったのはもったいなかったかな。特筆すべきは失点の少なさで、11失点って数字はトップ4以外では突出してて。基本的には非保持型で粘り強い闘いが特徴のチームで、10試合で15得点っていう得点の少なさがウェスト・ハム・ユナイテッドとブリストル・シティとのドローみたいに勝ちきれない試合につながってる気はするけど、トップ4のチームから見て厄介な相手の筆頭って言えるはず。

"WSL Watch #001"でも「23/24シーズン開幕前の勢力図」って部分でちょっと触れたけど、上位・中位・下位って分けたときに昨シーズンの下位グループに入ってたチーム、具体的には残留争いをしてたトッテナム・ホットスパーとレスター・シティとブライトン&ホーヴ・アルビオンに昇格チームのブリストル・シティの4チームが下位グループだったんだけど、その中では4勝3分3敗で6位に位置してるトッテナム・ホットスパーも躍進って言っていいんじゃないかな。3敗は全部トップ4のチェルシーとマンチェスター・シティとマンチェスター・ユナイテッドで、"WSL Watch #24"でレビューした10節のノース・ロンドン・ダービーではアーセナルから大金星を上げてたりして。今シーズン新たに監督に就任したロバート・ヴィラハム(Robert Vilahamn)について触れた"WSL Watch #004"でも書いた通り個人的にも注目してるチームなんだけど、期待を裏切らない闘いをしてるチームって言えるかな。

残留争いに巻き込まれるチームは?

下位に目を向けると、昨シーズンはトップ4に次ぐ5位だったにも関わらずまさかの開幕5連敗で苦しんでたアストン・ヴィラがその後の5試合で3勝して勝点9を稼いだことで、残留争いは勝点5で並んでるウェスト・ハム・ユナイテッドとブリストル・シティに絞られちゃいそうな感じがちょっとある。共に1勝2分7敗で、勝った相手はウェスト・ハム・ユナイテッドがブライトン&ホーヴ・アルビオン、ブリストル・シティはウェスト・ハム・ユナイテッドだったりして、昨シーズンは中位グループだったウェスト・ハム・ユナイテッドにとってはブリストル・シティとの直接対決を落としたことが痛すぎたのかな。もちろん、昨シーズン残留争いをしてたブライトン&ホーヴ・アルビオンも2勝2分6敗で勝点8なんでまだまだ安心できないとは思うけど。そういう意味では、ウェスト・ハム・ユナイテッドとブリストル・シティとブライトン&ホーヴ・アルビオンの直接対決が超重要。ちなみに、ブライトン&ホーヴ・アルビオン対ブリストル・シティはウィンター・ブレイク明けの初戦で1月21日の11節、ブリストル・シティ対ウェスト・ハム・ユナイテッドは2巡目の初戦で1月28日の12節、ウェスト・ハム・ユナイテッド対ブライトン&ホーヴ・アルビオンはシーズン終盤の3月31日の18節。この3試合は残留争いを左右する重要な試合になりそう。ちなみに、直近の5シーズンの結果を見る限り、降格してるチームの勝点は10前後、勝点15あればほぼほぼ残留してたりする。あくまでも目安だけど。

得点ランクのトップはカディジャ・ショウ

個人の成績を見てみると、得点ランクはマンチェスター・シティのジャマイカ代表FWのカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)がハットトリック2回を含む9得点でトップ。10試合で9得点だけどプレイ時間で割ると74分に1点のペースだったりしてわりと驚異的な数字。昨シーズンは20ゴールでアストン・ヴィラのイングランド代表FWのレイチェル・デイリー(Rachel Daly)に2点及ばなかったんだけど、どんなカタチからでも点が取れる万能型のストライカーなんで、今シーズンは得点王の大本命って感じかな。2位は7点で3人並んでるんだけど、特筆すべきはチェルシーのイングランド代表FWのローレン・ジェイムズ(Lauren James)と共にトッテナム・ホットスパーのスコットランド代表FWのマーサ・トーマス(Martha Thomas)とブライトン&ホーヴ・アルビオンのノルウェー代表FWのエリザベス・ターランド(Elisabeth Terland)が入ってること。チームの得点数を見るとトッテナム・ホットスパーは15点、ブライトン&ホーヴ・アルビオンは10点だったりして、決してたくさん得点を取れてるわけじゃないチームでこれだけのゴールを決めてるのはちょっとスゴイな、と。

アシストはアーセナルのオランダ代表MFのフィクトリア・ペロファ(Victoria Pelova)が4アシストでトップで、2位は3アシストで複数人並んでるんだけど、ゴールとアシストの合計だとカディジャ・ショウが11でトップで、ローレン・ジェイムズとマーサ・トーマスと並んでマンチェスター・シティのオランダ代表MFのジル・ロード(Jill Roord)が6得点・2アシストの8で2位に入ってるのがちょっと興味深かったりする。

保持率1位はチェルシー

FotMobでチーム・スタッツに目を向けると、平均保持率はチェルシーが62.1%、マンチェスター・ユナイテッドが60.1%で2チームだけ60%を超えてて、マンチェスター・シティが59.1%、アーセナルが57.1%で、トップ4が印象通り55%以上の数字になってる。個人的には、5%程度は誤差の範疇っていうか、保持率が45〜55%の試合ってそれほど差がなく見える、言い換えると、試合を観てて「かなりボールが持ててるな」「あまりボールが持ててないな」って感じるのは片方のチームが55%以上保持できてるケースだと思ってるんだけど、その条件を満たしてるのはトップ4ってことになる。他にも、パス数とかチャンス・クリエイトの数を見てもトップ4がそのまま占めてたりするんで、この4チームは明確に保持型って呼んでよさそう。ただ、残りのチームは非保持型ってわけじゃなくて、保持型を志向してるけどまだそこまで保持率を上げられてないチームと保持にそこまでこだわってないチーム(=非保持型のチーム)では、数字自体は近くても意味合いは変わってくる気がしてる。

スタッツに関しては、基本的にはトップ4を中心とした上位のチームが主に攻撃面のスタッツで、下位チームはセーブ数とかタックル数とか主に守備面のスタッツで目立つのが当たり前だと思うけど、その中でも目を引くチーム・スタッツがいくつかあったりする。例えば、リヴァプールが失点の少なさでは3位タイでクリーンシートの数では4位だったり、トッテナム・ホットスパーが1試合あたりの枠内シュート数が6.9本で3位だったり。チームの特徴が現れててなかなか興味深い感じ。

WSL Watch的に印象に残ったのは?

WSL Watch的な視点で、つまり、個人的に...ってことなんだけど、「特に印象に残ったXXXXX」って感じでいくつかの項目に分けて選んでみると以下のような感じになるかな。当然、過去の記事とわりと重複しちゃうんだけど。

ゴール: マーサ・トーマス(10節 トッテナム・ホットスパー対アーセナル)
個人的に一番グッときちゃったゴールは、"WSL Watch #024"でレビューした10節のトッテナム・ホットスパー対アーセナルのノース・ロンドン・ダービーの決勝点、トッテナム・ホットスパーのマーサ・トーマスのゴールかな、やっぱり。マーサ・トーマスのシュート自体だけってことじゃなくて、そこに至るプロセスも込み、もっと言えば、"WSL Watch #004"とか"WSL Watch #016"とかで触れたように今シーズンを通じて取り組んできた危なっかしくも勇敢なスタンスっていうか、覚悟みたいな部分も含めてなんだけど。詳しくはマッチ・レビューを参照って感じだけど。もうひとつ付け加えるなら、'新加入選手(WSL内で)'部門もマーサ・トーマスかな。

プレイヤー: ジル・ロード(マンチェスター・シティ)
オランダ代表でのプレイはもちろん観てたけど、マンチェスター・シティでのプレイを観て改めて凄さを見せつけられたのはジル・ロード(Jill Roord)かな、やっぱり。基本的には4-3-3のインサイドMFで起用されてるんだけど、身体のサイズがあって動けて技術もあって。常に状況を見ながら足を止めずに適切なポジションを取ってて、運動量はあるけど実はスプリントが多い印象はなくて、ボールに関わるシーンで上手く脱力できててプレイが速くて正確な感じで、パスのシュートも必要以上の力が全然入ってない感じで。下に貼ったゴールなんてその典型例だと思うけど。得点とアシストを足したゴール関与の数がリーグ2位ってことは上でも触れたけど、新加入でいきなりチームにフィットできてる点も含めて、やっぱり質が高い選手だな、と。もうひとつ付け加えるなら、'新加入選手(WSL外から)'部門もジル・ロードかな。

ゲーム: アーセナル対チェルシー
ベスト・ゲームって意味では、"WSL Watch #020"でレビューしたアーセナル対チェルシーのロンドン・ダービーになるのかな、やっぱり。内容的には予想してたよりアーセナルの快勝って感じだったけど、WSLを代表するスター選手を揃えた上位チーム同士の対戦だったって意味でも、60,000人近いファンを集めたって意味でも、今シーズンのWSLを語る上で欠かせない試合だったと思うんで。これも詳しくはマッチ・レビューを参照って感じだけど。

チーム: リヴァプール
基本的には事前の予想とか期待値とかとの比較でってことになるけど、やっぱりリヴァプールになるのかな。トッテナム・ホットスパーと悩んだけど。詳しくは前述の通りなんだけど、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドに勝ってることも含めて、ものすごく立派な結果だって言えるはず。基本的にはしぶとく闘うチームで、正直なところ、それほど派手なわかりやすさがあるチームだとは思わないけど、上位チームにとって厄介なチームなことは間違いない。

監督: ロバート・ヴィラハム(トッテナム・ホットスパー
ロバート・ヴィラハム(Robert Vilahamn)に関しては"WSL Watch #004"でも触れてるんで詳しくはその記事を参照って感じなんだけど、昨シーズンは降格の危機にあったチームに野心的な戦術を植えつけて、シーズンが半分も終わってない時点でほぼほぼ降格の心配がない勝点を稼げてるってのは、個人的には期待以上っていうか、贔屓目抜きでも評価に値するだろ、と。あと、メディア対応っていうか、試合前後のコメントもなかなか印象的で、勝った試合はもちろんだけど、例えば大敗したマンチェスター・シティ戦とかマンチェスター・ユナイテッド戦の後でも、穏やかで真摯且つ率直に対応しつつ、それでいてスタンスはブレない感じは好感度が高かったりもする。

日本人選手も各チームで活躍中

"WSL Watch #002"でも触れた通り、今シーズンのWSLでは7人の日本人選手がプレイしてて、それぞれがかなり存在感を放ってるんで、それぞれの選手の(ほぼ)前半戦総括を。

  • 長谷川唯(マンチェスター・シティ #25)
    マンチェスター・シティの4-3-3の不動のCMF、いわゆるアンカーとしてリーグ戦全10試合・874分出場。フルタイム出場ではないけど、よっぽど余裕がある展開にならないと途中交代もない主力中の主力で、数字的には0ゴール・1アシストなんだけど、目立たない部分も含めて攻守にわたって昨シーズンと変わらず大活躍してる感じ。

  • 長野風花(リヴァプール #8)
    躍進を見せてるリヴァプールの不動のCMFとして全10試合・900分のフルタイム出場を果たしてる。基本的には中盤のバランサー的な感じで、攻撃では保持を安定させたり後ろと前を繋ぐリンク・プレイヤーの役割を果たしたりしつつ、非保持では幅広いエリアをカバーしながらリヴァプールの堅守を支えてる印象。現地の中継のコメンタリーとかを聴いてると、特にオン・ザ・ボールの質が高いボール・プレイヤーとして高く評価されてるっぽいかな。そこまで保持型じゃないチームの中で貴重な存在って感じ。

  • 清水梨沙(ウェスト・ハム・ユナイテッド #3)
    今シーズンのウェスト・ハム・ユナイテッドは基本的には3バックで、3-4-2-1か3-5-2で闘うことが多いから4バックの右SB起用はほとんどないんだけど、これまでも経験がある3バックの右CBと右WBだけじゃなく林穂之香と並んでCMFとしても使われてたりして、全10試合・900分のフルタイム出場を果たしてるんで、昨シーズンに続いて今シーズンも完全に主力選手の1人になってる。

  • 林穂之香(ウェスト・ハム・ユナイテッド #19)
    ユナイテッド・ハム・ユナイテッドの不動のCMFとして9試合・691分出場。ケガをした6節のマンチェスター・ユナイテッド戦は前半20分に交代、7節のアストン・ヴィラ戦だけ欠場したけど、それ以外はほぼほぼ出てて、5節のブリストル・シティ戦では植木理子のゴールをアシストしただけじゃなく10節のレスター・シティ戦では後半ATに貴重な同点ゴールを決めてて、この試合で得た勝点1のおかげでギリギリ降格圏を抜け出してウィンター・ブレイクを迎えられたって意味でもまさに値千金のゴールだったって言えるかな、と。順位はなかなか厳しいけど、中盤で攻守に奮闘してる感じ。

  • 植木理子(ウェスト・ハム・ユナイテッド #9)
    今シーズンの新戦力としてウェスト・ハム・ユナイテッドに加入して、全10試合・834分出場、3得点・0アシストなんで、完全に主力として定着してる感じ。得点3って数字をどう評価するのかはちょっと難しいところかな。チーム自体の調子が良くなくて、3点だけどチーム内ではトップ・スコアラーだって意味では、新加入って部分も含めて全然悪くないと思うけど、実際に試合を観てるとかなり躍動してて、けっこうチャンスも多くて、もう2〜3点取れれておかしくない感じだったし、ちょっと厳しい言い方をしちゃうと、その2〜3点があればもうちょっと勝点を稼げたし、順位も上げられた気がするんで。そのくらい期待しちゃうような活躍を毎試合見せてるし、攻撃面はもちろん、非保持時のプレッシングを見てるだけでもちょっとワクワクする感じで、たぶん、現地のサポーターにも人気がありそうな気がする。

  • 宮澤ひなた(マンチェスター・ユナイテッド #20)
    今シーズンからマンチェスター・ユナイテッドに加入して、ここまでは8試合・420分出場で1ゴール1アシスト。開幕から2試合は途中出場で初スタメンは3節のレスター・シティ戦なんだけど、途中出場した2節のアーセナルとの大一番でアシスト、8節のブリストル・シティ戦では初ゴールを記録してる。マンチェスター・ユナイテッドを取り上げた"WSL Watch #013"でも触れた通り、4-3-3のインサイドMFっぽい使われ方(日本語実況が付いたDAZNの中継とか一部の記事なんかでは「ボランチ起用」なんて言われてたりするけど、個人的には4-3-3のインサイドMF、いわゆる8番として使われてると思う)なんで、数字的には'FIFAウィメンズ・ワールドカップの得点王'って触れ込み通りの活躍はしにくい気はするけど、早い時期から出場機会を得て、上手くチームにフィットしてるように見えるかな。だからこそ、11月の代表ウィークのブラジル戦で右足首を骨折しちゃったのは気の毒だったけど。12月21日の『デイリースポーツ』の記事によると、日本プロスポーツ大賞の授賞式にはギブスを付けて車椅子で出席してたらしいんで、ウィンター・ブレイク明けのチェルシーとの大一番には間に合わなそうな感じなのかな、さすがに。残念だけど。

  • 浜野まいか(チェルシー #23)
    ローン移籍してたスウェーデンのハンマルビーIFから復帰したものの、ケガもあったらしいし、選手層が異常に厚いチェルシーの中ではメンバー入りもなかなかできてなかったんだけど、10節のブリストル・シティ戦でようやく途中出場を果たして、数字的には1試合・16分出場。やっとスタート・ラインに立てた感じかな。ただ、プレイ自体は全然悪くなかったんで、今後の活躍が楽しみ。

全体としては、贔屓目抜きで見てもWSLにおける日本人選手の存在感はけっこう大きいって言っていいんじゃないかな。浜野まいか以外の選手は普通にどの選手も主力としてスタメンで出てるんで。しかも、"WSL Watch #21"でも触れた通り、新たに宝田沙織がレスター・シティに加入することが決定してて、今後もまだ日本人選手の加入もあるかもしれないから、ますます日本人選手の存在感とか価値は大きくなりそう。

ちなみに、WSLの世界的な位置付けを考えた"WSL Watch #019"でもちょっと紹介した元日本人代表の永里優季のYouTubeチャンネルで浜野まいかと植木理子についてプレイ映像付きで紹介されてるんだけど、シュートを打つときの重心の話とか、さすが現役選手って感じの詳しい分析が聞けてかなり興味深かったりする。今後もこのシリーズが続くのか、この2人だけなのかはナゾだけど。

入場者数ではアーセナルが圧倒的

"WSL Watch #020"でレビューしたアーセナル対チェルシーのロンドン・ダービーで最多入場者記録が更新されたんだけど、せっかくなんで今シーズンのWSLの全試合の入場者数もちょっと調べてみた。

10節まで消化してるんで全チームが5試合ずつホーム・ゲームを開催しててトータルで60試合ってことになるんだけど、10,000人を超えた試合が11試合あって、内訳が10,000〜19,999人が6試合、20,000〜29,999人が1試合、30,000〜39,999人が1試合、40,000〜49,999人が1試合、50,000人越えが2試合。11/60って数字が多いかどうかはをちゃんと評価するには他国リーグとかとの比較をする必要があると思うけど。普通にけっこう多いんじゃね? って感じがするかな。

ちなみに、全試合の平均は7,471人なんだけど、パッと見た感じでは2,000〜3,000人くらいの試合がけっこう多くて、突出して多い試合の数字が平均を引き上げてる印象だったりもする。もちろん、使ってるスタジアムの問題もあると思うんで、2,000〜3,000人くらいって数字が多いのか少ないのか、簡単に判断はできないけど。シンプルに5試合の平均入場者数(小数点以下は切り捨て)の順位は以下の通り。

  1. アーセナル: 31,225人

  2. マンチェスター・ユナイテッド: 13,505人

  3. ブリストル・シティ: 8,825人

  4. チェルシー: 7,419人

  5. リヴァプール: 6,101人

  6. トッテナム・ホットスパー: 5,462人

  7. アストン・ヴィラ: 5,082人

  8. ブライトン&ホーヴ・アルビオン: 3,679人

  9. マンチェスター・シティ: 3,420人

  10. レスター・シティ: 2,450人

  11. エヴァートン: 1,415人

  12. ウェスト・ハム・ユナイテッド: 1,066人

圧倒的に多いのはやっぱりアーセナル。5試合平均が31,225人なんだけど実はコンスタントに多いってわけじゃなくて、普段はメンズチームが使ってるエミレーツ・スタジアムで3試合開催してて、開幕戦のリヴァプール戦が54,115人、3節のアストン・ヴィラ戦が35,829人、記録を更新した9節のチェルシー戦が59,042人入ったって感じ。普段使ってるメドウ・パークでは3,000人強とかなんで。アーセナルってクラブがウィメンズ・チームをどう考えてるかとかも含めてエミレーツ・スタジアムで半分以上開催できてるって事情も大きいんだろうけど、エミレーツ・スタジアムが使えたってガラガラだったら無意味どころか逆効果だろうし、それが可能だって時点で一番の人気チームって言って間違いないっぽい。

平均入場者数で10,000人を超えてるのは2位のマンチェスター・ユナイテッドまでで平均は13,505人。"WSL Watch #015"でレビューしたマンチェスター・ダービーを'夢の劇場'ことオールド・トラフォードで開催して43,615人入ったことが大きいんだけど、それ以外の試合も全部4,000人を超えてて、6,000人強とか8,000人強とか入ってる試合もある。"WSL Watch #013"でもちょっと触れたけど実はわりと新しいチームなんだけど、それでもこれだけのファンを集められてるのはなかなかスゴイな、と。

当然、「王者のチェルシーは?」って話になると思うけど、チェルシーは実は7,419人で4位で、3位は8,825人で昇格チームのブリストル・シティだったりしてちょっとビックリ。10,000人を超えてる試合が2試合あって、残り3試合も4,000人強が2試合と10,000人弱が1試合なんで、WSLに昇格したってブーストもあるのかもしれないけど、実は安定した人気があるチームらしくて。ちなみに、スタジアムは基本的にメンズ・チームと同じアシュトン・ゲートを使ってるんで、キャパシティ的にはWSLの中では大きい部類に入る。チェルシーに関しては、普段はメンズ・チームが使ってるスタンフォード・ブリッジで開催した2試合で10,000人超え、具体的には開幕戦のトッテナム・ホットスパー戦で14,776人、リヴァプール戦で12,802人入ってるんだけど、それ以外は3,000人前後だったりして、チームの強さとかメンバーの豪華さを考えるとちょっと意外な感じだったりするかな。

他のチームで5,000人を超えてるのは5位のリヴァプールと6位のトッテナム・ホットスパーと7位のアストン・ヴィラの3チームなんで、全チームの半分以上のチームが平均5,000人超えってことになる。リヴァプールはアンフィールドで開催したエヴァートンとのマージーサイド・ダービーで23,088人、トッテナム・ホットスパーはトッテナム・ホットスパー・スタジアムで開催したアーセナルとのノース・ロンドン・ダービーで19,480人、アストン・ヴィラはヴィラ・パークで開催したマンチェスター・ユナイテッドとの開幕戦で12,533人入ってるんで、キャパシティが大きいメンズ・チームのスタジアムでの開催とかダービーとかって要素がやっぱりけっこう影響してるっぽい。

ちょっと意外なのは、やっぱりマンチェスター・シティかな。"WSL Watch #008"でも触れた通り、WSLでは初めてホーム・スタジアムにネーミング・パートナーが付いたジョイー・スタジアムがホームなんだけど、その影響もあってか、今シーズンはメンズ・チームが使ってるエティハド・スタジアム開催が1試合もなかったことも要因なのかもしれないけど。サッカーの内容も面白いし、スター選手も多いし、もうちょっと多くても良さそうなもんだけど。ちなみに、ジョイー・スタジアムはもともとは下部組織のチームが使ってたアカデミー・スタジアムで、どういう感じの運用なのかはわからないけど、ウィキペディアで確認した限りキャパシティは4,998席(立ち見を入れるとマックスで7,000人)らしい。ただ、去年のマンチェスター・ダービーはエティハド・スタジアムに44,259人を集めたらしいんで、今シーズンも後半戦でそういう試合があるのかもしれないけど。あと、日本人選手がたくさん所属してるウェスト・ハム・ユナイテッドの数字はちょっと寂しい感じかな。ホーム・スタジアムのキャパシティは約6,000人らしいんだけど、順位同様入場者数でもちょっと苦しんでるっぽい。

今シーズンの数字をまとめてみたら、中継を観てるだけじゃわからないこともいろいろわかって面白いんだけど、ちゃんと検証するならもっと細かく調べてみる必要があるわけで、ここでまとめたのはあくまでも薄っぺらい雑感程度のモノかな。過去の数字との比較とかスタジアムの事情とかチケット代とかから始まって、スペインとかドイツとかフランスとかイタリアとかヨーロッパの主要リーグはもちろん、日本のWEリーグとかアメリカのNWSLとかと比較まで、いろいろと多角的に見ればもっといろんなことが見えてきそう。あと、やるなら別の記事になると思うけど、アシュトン・ゲートを使ってることも含めてブリストル・シティの人気の秘密にはちょっと興味があるし、そういえば、レスター・シティも基本的にホーム・ゲームをメンズ・チームが使ってるキング・パワー・スタジアムでやってるな...なんて思ったりもして。

現地メディアの総括もチェック

英語になっちゃうけど、英語圏のメディアにもこのまでの総括的なコンテンツがあったんで、一応貼っとこうかな。

年明けのスケジュールをチェック

ウィンター・ブレイク以降のスケジュールとしては、1月13日・14日の週末にFAカップが始まって、1週間後の1月20日・21日の週末にリーグ戦の1巡目の最後の試合になる11節が予定されてる。あと、"WSL Watch #021"で随時更新してる冬の移籍ウィンドウは1月1日〜31日なんで、2巡目の初戦になる12節のタイミングまで移籍は可能ってことっぽい。

ちなみに、ドイツの『サッカードンナ(Soccerdonna)』によると、WSLはフランスとイタリアとドイツの3リーグの合計の4倍以上を移籍マーケットで使ってるらしいんで、1月もいろいろ積極的に動く流れは変わらなそうかな。

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