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スパーズがNLDでアーセナルに勝利!! :: MR004 :: WSL Watch #024

今回は'MR = match review'の第4弾、第10節のトッテナム・ホットスパー対アーセナルのノース・ロンドン・ダービー(NLD)のマッチ・レヴューを(以下、トッテナム・ホットスパーの表記は'スパーズ'で)。最近の調子とかそもそもの力関係とかは関係ない、ダービー・マッチらしい試合だったんで。もともと注目してたチームでもあるし、実はWSLのリーグ戦ではスパーズにとって初めてのNLD勝利って結果だったんで、基本的にはスパーズ目線になっちゃうけど。

ちなみに、この試合はDAZNだけじゃなくYouTubeでも配信されてて、フルマッチのアーカイブも無料で視聴可能。もちろん、The FA Playerでも観れるけど。

ハイライトはアーセナルのアカウントではYouTubeにアップロードされてないっぽいんで、スパーズのアカウントのモノを。

取り組んできたモノが結実した値千金の決勝ゴール

最初に結論っていうか、この試合の最大のポイントを言っちゃうと、とにかくスパーズのマーサ・トーマス(Martha Thomas)の決勝ゴールが素晴らしくて。もう、コレに尽きるんじゃね? って思っちゃうくらい。

上に貼ったゴール・シーンの動画(得点者のコメント付きとピッチ・レベルの映像)とそこに至る過程の図を見れば解る通り、GKからのビルドアップで相手のハイプレスを回避して、相手選手を後ろ向きに走らせながら守備対応させる攻撃、いわゆる'擬似カウンター'なんて呼ばれるシーンの典型例みたいなゴールなんだけど、この時間帯にピッチに立ってた選手で上の図に登場してないのは後半頭から起用された背番号7のジェシカ・ナズ(Jessica Naz)だけで、しかも、シュートの直前でボール・サイドに裏抜けして相手DFを引っ張ってるのがジェシカ・ナズだから、実質的にピッチ上の選手全員がこのゴールに関わってて。まさにチーム・ゴールって呼ぶべき見事な攻撃だったな、と。

監督のロバート・ヴィラハム(Robert Vilahamn)を取り上げた"WSL Watch #004"とかレスター・シティ戦をレビューした"WSL Watch #016"でも触れた通り、スパーズはもともとこういうプレイが得意なチームだったわけじゃなくて。それこそ、昨シーズンの平均ポゼッションは45.2%でリーグ7位だったくらいで、決して保持型じゃなかったチームを今シーズンから就任したロバート・ヴィラハム監督の下で後方からのビルドアップを含めた保持の質の向上に取り組んでるチームなんだけど、正直なところ、少なくとも現段階ではお世辞にもその質とか練度がものすごく高いとは言えなくて。試合を観てると「練習でこういうプレイに取り組んでるんだろうな」ってシーンは頻繁にあるんだけど、それでもミスは当然のようにけっこう起こってて、そこからピンチとか失点に繋がることもあればそうじゃないこともあるんだけど、それでも毎試合果敢に挑んでるって姿勢は強く伝わってきて。でも、スパーズは直近のリーグ戦でマンチェスター・シティとマンチェスター・ユナイテッドっていうトップ4の2チームに真っ向勝負を挑んで7失点と4失点っていう大量失点で連敗してて、この試合は同じノース・ロンドンのライバルであり強豪のアーセナルとのダービーだったわけで、さすがにこの試合でも大敗することにでもなったらムードはかなり悪くなりかねないから、この試合だけは理想を捨ててリアリティを優先するって考え方で闘っても全然不思議じゃなかったと思うけど、プレスの圧が強いアーセナルに対しても果敢に全員でビルドアップして、かなり危なっかしかったけど何とか回避してゴールに結びつけて、そのゴールが決勝点になるとか、ちょっと出来すぎなくらいのストーリーっていうか、ちょっとグッときちゃう感じすらあって。試合後のロバート・ヴィラハムもメチャメチャ嬉しそうだし。

アーセナルの猛攻とスパーズのGKの活躍

試合全体を見れば、そもそもの力関係通りアーセナルが圧倒したって言っていい内容で、スタッツが見れるいろんなサイトで確認しても保持率は39%:61%、シュート数は5:31(枠内は3:8)、ゴール期待値は0.51:2.53、プレイ・エリアもスパーズから見たアタッキング・サードは13%しかなくて、逆にアーセナルから見たアタッキング・サードは44%もあったりするんで、スパーズはかなり押し込まれてた時間が長くてなかなか相手ゴール近辺に迫れてもなかったって言えるような感じで。

アーセナルが見事に快勝した前節のチェルシーとの大一番をレビューした"WSL Watch #021"でも触れた通り、ケガから復帰してすっかり調子を取り戻したイングランド代表FWのベス・ミード(Beth Mead)をはじめとして、前節で復帰したスコットランド代表MFでキャプテンのキム・リトル (Kim Little)こそいなかったけどアーセナルのメンバーは豪華そのもので。内容的にも、点を取れなかったこと以外は特に問題はなかったっていうか、典型的な「点を取れるときに取っておかないからこういとになるんだよ...」って結果で、せっかく前節の試合でチェルシーに勝っただけに痛すぎる敗戦なのは間違いないんだけど、この試合に関しては素直にスパーズの守備の奮闘を褒めるしかないって印象だったかな。

スパーズで光ったのは、この試合がWSLデビューだったにも関わらずプレイヤー・オブ・マッチに選出される活躍を見せたGKのバルボラ・ヴォティコヴァ(Barbora Votíková)。今年の夏にパリ・サンジェルマンから加入した27歳のGKで、チェコ代表としても実績は十分な選手なんだけど、スコアレスの状況でケイトリン・フォード(Caitlin Foord)とフリーダ・マーナム(Frida Maanum)のシュートを防いだシーンは試合結果を左右するビッグ・セーブって言っていいはず。サッカーの世界ではよくある話だけど、強豪相手に格下のチームが番狂せを起こすにはGKの活躍は欠かせないし、しかも、それがリーグ戦では初起用の新戦力だったってことも含めて、これぞダービーって感じのすごく劇的な試合だったって言えるのかな、と。

大観衆の期待に応えたダービーでの勝利

今回のNLDは、通常はメンズ・チームが使ってるトッテナム・ホットスパー・スタジアムで行われて、当日の来場者数は19480人。60000人近く入った前節のアーセナル対チェルシーに比べるとさすがに全然少ないんだけど、スパーズのホームゲームは10000人を超えること自体が珍しいんで、大観衆の前でNLD初勝利を収めたって意味でもスパーズにとってはものすごく大きな意味を持つ試合になったはず。

ちなみに、1月の加入が発表されてるワン・シュアン(Wang Shuang / 王霜)も試合前に登場したり、メンズ・チームのアンジェ・ポステコグルー(Ange Postecoglou)監督がダニエル・レヴィ(Daniel Levy)会長と一緒に観戦に訪れてたことも話題になってた。


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