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23/24シーズンのWSLの所感 :: WSL Watch #002

WSLの23/24シーズンの特徴

"WSL Watch #001"では主に23/24シーズン開幕時点までの情報をざっくりとまとめてみたけど、23/24シーズンならではの特徴もいくつかあると思ってて。主に近年〜今後も続きそうなモノと今シーズンならではのモノがある気がしてる。

前者は単純にWSL自体が盛り上がってきてるってこと。スペインのリーガFに代表されるような他国もしくはヨーロッパ全体の盛り上がりの影響もあるだろうし、財政的な部分では先行投資みたいな部分もありそうだし、ジャンルを超えて世界的に大きな動きになってるウィメン・エンパワーメントの影響なんかも含めていろんな側面があるんだと思うけど、イングランド国内の機運の上昇に関してはUEFAウィメンズ・ユーロ2022でイングランドが初優勝したことがかなり大きかった気がする。イングランド代表の選手のほとんどがWSLでプレイしてるんで。

ウィメンズ・ユーロ2022のファイナルで決勝点を決めた後のイングランド代表

あと、WSLのSNSのアカウントのポストによると、昨シーズンのWSLでプレイしてた選手の94人がオーストラリアとニュー・ジーランドで開催されたFIFAウィメンズ・ワールドカップに参加してたらしいけど、質が高い選手が世界中から集まってるのももちろん近年のWSLの大きな特徴。純粋な競技レベルの面でも興行としての面でも大きく盛り上がってる流れが近年のWSLからは強く感じられる。

で、FIFAWWCが直前に開催されたことが今シーズンならではの特殊事情って言える。イングランドは残念ながらユーロ2022に続く優勝は果たせなかったけど、そこで目を引く活躍をした選手の移籍が各国で活発化してて、その影響はもちろんWSLのクラブにも大きくて、けっこう多くの選手がWSLのチームに移籍してきた印象。あと、FIFAWWCから間がそれほど空いてないことと移籍が多かったことで、ケガから復帰できてない選手がいたり選手の入れ替えが多かったりして、まだまだベースを固めきれてないチームがけっこうあって、それがシーズン序盤の順位にも現れてる気がするけど、それもFIFAWWC直後っていう今シーズンならではの特殊事情って言えるのかも。

日本人選手の活躍

個人的には日本人選手だけに特に注目して観てるって感じじゃないんだけど、多くの選手がプレイしてるんで、せっかく日本語でWSLについて書いてるんだし、タイミングを見てちょっと触れていこうとは思ってる。まずは、今シーズンのWSLでプレイする日本の選手は7人の現段階での状況を。順番には深い意味はないけど、一応、WSLでのプレイ期間とか出場試合数とかを考慮した感じで。

  • 長谷川唯(マンチェスター・シティ #25)
    21/22シーズンにウェスト・ハム・ユナイテッドに加入してリーグ戦17試合に出場した後、22/23シーズンからマンチェスター・シティでプレイしてて、加入直後のシーズンから主にCMFとしてリーグ戦20試合に出場、シーズン終了後にはプロ・サッカー選手協会が選ぶベスト11に選出された。贔屓目抜きでリーグを代表するMFって感じ。

  • 清水梨沙(ウェスト・ハム・ユナイテッド #3)
    22/23シーズンに長谷川唯と入れ替わるタイミングで林穂之香と共にウェスト・ハム・ユナイテッドに加入してリーグ戦全試合に出場。主に右SBか右WBでのプレイが多いけど、今シーズンは3バックの右CBでも起用されただけじゃなく、林とのコンビでCMFとしても起用されててビックリした。

  • 林穂之香(ウェスト・ハム・ユナイテッド #19)
    22/23シーズンに長谷川唯と入れ替わるタイミングで清水梨沙と共にウェスト・ハム・ユナイテッドに加入してリーグ戦21試合に出場。主にCMF起用されてて、攻守に欠かせない主力選手としての存在感を放ってる。

  • 長野風花(リヴァプール #8)
    22/23シーズンの冬の移籍ウィンドウでリヴァプールに加入してリーグ戦11試合に出場。主にCMFで起用されてて、シーズン途中の加入にも関わらず攻守に貢献度が高い主力選手として活躍してる。

  • 浜野まいか(チェルシー #23)
    22/23シーズンの1月の冬の移籍ウィンドウでチェルシーに加入後、22/23シーズン後半はスウェーデンのハンマルビーIFにローン移籍してプレイしてたからWSLでの試合出場はまだない。23/24シーズンはチェルシーでプレイすることになってるはずだけどまだ試合出場はなくて、選手層が異常に厚いチームの中でまずはチーム内での序列を上げる必要があるって感じなのかな。

  • 植木理子(ウェスト・ハム・ユナイテッド #9)
    23/24シーズンから新たにWSLでプレイすることになった選手で、ウェスト・ハム・ユナイテッドで清水梨沙と林穂之香のチームメイトとしてプレイしてる。開幕戦から普通にスタメン起用されてて、2節では初ゴール、4節では後半アディショナル・タイムに殊勲の同点ゴールを記録。攻守にアグレッシブなスタイルは現地のファンにウケそうな気がしてる。

  • 宮澤ひなた(マンチェスター・ユナイテッド #20)
    23/24シーズンから新たにWSLでプレイすることになった選手で、マンチェスター・ユナイテッドでプレイしてる。「ギヴミースポーツ(GiveMeSport)」ってメディアの"Ranking The Best 23 Signings Made in the 2023/24 Women’s Super League Transfer Window"(ざっくりと訳すと「23/24シーズンの移籍ウィンドウでWSLが獲得した選手ベスト23」って感じかな)って記事で2位になってるのが典型例だけど、紹介されるときにはほぼほぼ'FIFAWWCの得点王'って言葉とセットで紹介されちゃってて、仕方ないけどなかなかのプレッシャーになってそう。選手層が厚いチームなんで加入後即スタメンって感じではないけど、コンスタントに出場機会は得られてるんで主力にはなれてる印象。アーセナルとのシーズン序盤の大一番ではアシストも記録してる。

"WSL Watch #001"の「WSLの全体像」と「23/24シーズン開幕前の勢力図」で触れた上位・中位・下位の分類で言うと、上位チームで不動の地位を築いてるどころかリーグを代表する選手になってるのが長谷川唯、新加入だけど上位チームでコンスタントに出場時間を得られてるのが宮澤ひなた、上位チームでも特に選手層が厚いチームでまだ出場機会を得られてないのが浜野まいか、中位のチームでレギュラーに定着してるのが清水梨沙と林穂之香と長野風花、新加入だけど中位のチームで早くもレギュラーの座を確保できてるのが植木理子って感じになるのかな。こうやって書くと浜野まいかだけイマイチな感じがしちゃうかもだけど、他の選手はだいたい20代半ばなのに浜野まいかはまだ19歳、しかも所属してるのがかなり選手層が厚いチャンピオン・チームだってことを考えれば、同じ基準で比べるのはちょっと酷っていうか、まだまだこれからに期待ってことでいいと思うけど。得がたい経験をしてると思うんで。

あと、中位・下位のチームに関してはどうしてもボールを保持できない試合も多いから守備的なポジションの選手のほうが活躍しやすいって側面もある気がしてて、もちろん本人たちの実力と努力が前提なんだけど、清水梨沙と林穂之香と長野風花の活躍にはそういう側面も多少はあったのかも。そういう意味では、「守る時間が長いチームのFWで加入直後から活躍できてる植木理子はスゴイな」って思いつつ、残念ながら引退しちゃったけど、異常に厚い選手層のアーセナルで22/23シーズンまでプレイしてた岩渕真奈に関しても、「とんでもないチームでやってたんだな」なんてことも改めて思ったり。

現地の報道でWSLの23/24シーズンの情報をチェック

最後に、23/24シーズンのWSLを楽しむときに参考になる特集記事を。イギリスの高級紙として知られる『ザ・ガーディアン(The Guardian)』が開幕直前に公開した"Women’s Super League 2023-24 previews"って記事で、文字通りチーム別に分かれてるプレビューなんだけど、直近数シーズンの動向とか今夏の移籍マーケットでの動きとかまとまっててすごく便利。戦術的な部分とかはやや少なめだけど、一般紙である『ザ・ガーディアン』がこういう記事を載せてるだけじゃなく、シーズン中もWSL関連の記事は多くて、WEリーグの日本のメディアでの取り扱われ方とかと比較すると、ただただ羨ましい限り。

ちなみに、『ザ・ガーディアン』は"The Guardian's Women's Football Weekly"ってポッドキャストも配信してて、WSLを中心にヨーロッパ諸国リーグとかUWCLとかNWSLに関して毎週識者がいろいろ話してる。

どちらも英語なんで日本では必ずしも万人向けではないかもだけど、英語ができる人にはお勧めかな、と。

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