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映画「望み」考えの違いをどう捉えるか

私は週に1~2本程サブスクで映画を観るのだが、そのどれもが基本、邦画ばかりだ。
なぜかというと、邦画は私の日常に程近い描写やシチュエーションが多く、今この瞬間もこのようなことが日本のどこかで起きているのかもしれないと、登場人物それぞれに感情移入がしやすい。
いわば他人の人生を追体験しているような感覚になるため、心がよく代謝して心地良いのだ。

ヒーローもヴィランもエイリアンもプレデターもヴォルデモートもアンダーソン君も財宝も大爆発も地球滅亡も、映画館で観たい。
迫力ある描写、音響がアトラクションな感じがするから。

私にとって映画館はテーマパークみたいなものなのだろう。

内容のメッセージ性が強い邦画は特に自分の中でよく咀嚼したいので、自宅等でゆっくり観る。

てな訳で先日、映画『望み』を観た。
ここ最近で1番観ていてしんどくて、辛くて、それでいて良かった。

※以下、なるべく配慮をするが若干のネタバレが含まれる可能性があるので予めご了承。

映画『望み』
監督:堤幸彦
原作:雫井侑介

あらすじ
一級建築士の石川一登とフリーの校正者の妻・貴代美は、一登がデザインしを手掛けた邸宅で、高一の息子・規士と中三の娘・雅と共に幸せに暮らしていた。規士は怪我でサッカー部を辞めて以来遊び仲間が増え、無断外泊が多くなっていた。高校受験を控えた雅は、一流校合格を目指し、毎日塾通いに励んでいた。
冬休みのある晩、規士は家を出たきり帰らず、連絡すら途絶えてしまう。翌日、一登と貴代美が警察に通報すべきか心配していると、同級生が殺害されたというニュースが流れる。警察の調べによると、規士が事件へ関与している可能性が高いという。さらには、もう一人殺されているという噂が広がる。
父、母、妹ーそれぞれの<望み>が交錯する。
映画『望み』公式サイト あらすじより

なぜ良かったかというと、答えのない問いに対して様々な立場の意見がわかりやすく表現されていたからであり、俳優の方々の演技力がそれをより一層助長させていたからだ。

主な登場人物は石川家の一登、貴代美、規士、雅。
あらすじをご覧になればわかるが、規士を巡る家族の想いがそれぞれ交錯している。彼を愛していることには変わらないが、想い方ひとつ違うだけで規士以外の3人は徐々にバラバラになりはじめる。

まずそれぞれのスタンスだが、
一登(父):
被害者であってほしい。
息子は優しくて真面目な子だ、人殺しなどするはずがない、信じたい。加害者であれば私の職も危ぶまれ、家族全員路頭に迷うことになるのは必至。父としての役目もある。勿論生きていてほしいに決まっているが、複雑な心境である。

貴代美(母):
加害者であってほしい。
生きてさえいれば何度でもやり直せる。被害者であればいいと願うなんて、2人はどうかしている。薄情者だ。死んでいてもいいってことなのか。とにかく生きていて。

雅(妹):
被害者であってほしい。
兄が殺人を犯していたとしたら加害者家族は世間から足蹴にされてしまう。そうなれば一流大学に向けて必死に勉強してきた自分の努力が無駄になる。自分の将来が失われてしまうのではないかという不安もある。何故兄に足を引っ張られなければならないのか。母は兄の命を優先しているが、私の将来はどうでもいいのか。でも、私の知っているお兄ちゃんはそんなことをする人ではない。複雑な心境。

どの立場も想像に難くない。
私ならどう思うだろうか、視聴中に何度も考えた。当然ながら最後まで事件の真相は明かされないので、取り巻く環境が知人も含め悪化していき、マスコミの偏向報道や尾ひれはひれのついた噂で追い詰められていく。
観ていて辛い。
辛い理由は、家族の分断が精神的な動揺や疲労によって、他人の意見に耳を傾けられなくなり、表面的な意見が自分と少しでも違うと敵とみなしてしまう様子があまりにも生々しいからなのかもしれない。

本来はそんな時こそ感情的にならず、理性を持って冷静に話をしなければならないのだと思う。憶測だけで不特定多数の敵が増えていく中で、内輪だけはせめて、味方である必要があるのではなないかと、そう感じた。

答えのない、実害のない話題なら人はいくらでも空想妄想で意見を言えるからだ。

心の底から出る意見や感想は、自らの身に降りかかって初めて出てくるのだと思う。

ところで私ならどう思うか…と考えたが、私は一登と同意見な気がする。
子を信じる気持ちと、現実的な今後を考える必要もあると、そう考えるからだ。

かといって、事実がどうであれ、事実に従って生きていくしかない。

冷静に理性的に、他人の意見に耳を傾けること、否定でも肯定でもなく、耳を傾けること、それが大事だと私は感じた。

私は、これが正しいと断定し話を終わらせ相手を否定し敵とみなすよりも、色んな人の意見を聞く中で自分が考えてもみなかった新たな世界を見聞きするのが好きだ。

有名なトロッコ問題もそうだし、クローンの話もそうだし、代理出産もそうだし、出生前診断による「命の選別」もそうだ。

現代倫理に係る思考実験などについて、延々と話してられる気がする。

考えることが、愉しい。

なので私は、想像で人にアドバイスをするのは、なるたけしないようにしている。

私がしてやれるのは、知らんけど私の意見はこうだ、と客観的意見を提示してやることと、重く考えるなと笑い飛ばしてやることだと思う。

答えのない問いへの向き合い方は、人それぞれ違って面白い。

否定や断定からは何も始まらない。

人間なので時たましてしまうことだが、なるべくしまいと、頭の片隅に置くのを認めることから始めたい。

あまり纏まらない文章になってしまったが、以上にしようと思う。

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