【青春の1ページ】「シュール系CGアニメ」の思い出を語らせてくれ
2000年代初頭に中高生時代を過ごした人たちにとって「シュール系CGアニメ」にハマった人は多かろう。あの、ビレバンの店内で絶えず流れているやつだ。
そのころはまだYouTubeも盛んではなくて、みんなDVDを買って観ていた。クラス中がテレビのバラエティ番組の話で持ちきりだったころだった。
まだサブカル界隈でしか認知されていなかったDVDを観ていたのは、変な優越感があったのを覚えていますね。そして仲間内だけで話が通ずるのが楽しくて仕方なかった。そんなサブカルクソ野郎の時期は誰にだってあるものだろう。本当はまったくおもしろさが分からないのに「ラーメンズマジでおもれぇわ」と言っちゃう大学生みたいなものである。
しかし2000年代の「シュール系CGアニメ」は大人が観ても、子どもが観ても、笑えるコンテンツだったのは確かだ。とにかくバカらしいのがよかった。いやバカらしいものを大人がマジメに作ってるのがよかったんです。
今回はそんなシュール系CGアニメについてご紹介。そのなんともいえない脱力感、日常の延長みたいなリアリティ、頭のなかをじわじわくすぐられるユーモアを熱く語らせてほしい。
スキージャンプペアという新しい体育
スキージャンプペアを初めて知ったのは「めざましテレビ」で1分くらい特集されてたのを観たときだった。調べたら当時11歳だったんですけど、それでも鮮明に覚えてるほど「なんじゃこりゃ」だった。笑いより先に驚きが勝ってて、たぶんタコ型の宇宙人見ると、こんな顔になるんだと思う。
この作品の設定は「芸術点に全振り、かつペア競技になったスキージャンプがあったら」という、もしもシリーズだ。なので飛んでる最中に肩車したり、手を繋いだりするんですけど、これはまだまだライトなほう。
最後のほうになると「片方の首に腕を巻きつけて回転する」「スキー板を毛筆に見立てて書初めをする」など、もう完全に重力を無視したアクションをし始めるんですね。
選手たちのアイディアもめっちゃ笑えるんですけど、何が素晴らしいかって実況と解説なんですよね。はちゃめちゃなスキージャンプに対して、すんごい冷静に分析するんですよ。それが本来のシュルレアリスム的な空気を出しているんですね。
つまりこれだけ異常なことなんですけど、すんごく現実的なんです。これがまさに「超現実」。ツッコミはすべて見ている側に委ねられているわけだ。
しかも観てるうちにだんだんと「なんだこのジャンプは」というより「なに真面目に解説してんだ」という感覚がしてくる。この大人が真面目にふざけてる感がたまんないんです。
ちなみにスキージャンプペアをつくった奇才・真島理一郎はその数年後に「ジャパンワールドカップ」という作品を出す。
完全にフォーマットは同じで、スキージャンプが競馬に変わっただけなんですけど、やっぱりこの作品も実況と解説が味を出してるのはいうまでもない。
The World of GOLDEN EGGSというもはや三次元
2000年代後半に完全に一世を風靡したゴールデンエッグスにも、もれなくハマりましたよ。高校生のころ、好きすぎて両親に無理矢理お勧めして、家族で晩ごはんの後に観て、腹抱えて笑ってましたね。たぶん青春時代にいちばん笑ったのはこの作品で、当時笑いすぎて割れた腹筋が今も戻りません。
今でもDVD全巻持ってるし、当時の友人と電話するときは「テーングーだよっ!」「出ましたテング印!」と、不意にキャラクターの真似をしてしまう。このノリは最初こそゲラゲラ笑っていたんですけど、やりすぎて最近は「テーングーだよっ!」「出ましたテング印!」「…………」と、もはや惰性でモノマネしている。モノマネせざるを得ない、みたいな変な空気になっている。
観たことない人はかなり少数派だろうが、一応どんな話かを説明しておこう。ゴールデンエッグスは「ターキーズヒル」という街の住人たちの日常を1話5分くらいで描いた作品だ。とにかくキャラの癖が強いこと強いこと。全部で20話くらいだが、本当に1つもすべってない。個人的には。
当時は芸能人のファンも多く、安室奈美恵、小栗旬、勝地涼、高橋幸宏、上原さくらが、ゲスト声優で出てたりするんですけど、小栗旬とか「ハサミ」としかいわないおじいちゃん役だし、勝地涼は「あー」しか喋らない赤ちゃん役で、ホント無駄遣いの極み。ただそれがゴールデンエッグスぽくていいですよね。
この作品はプレスコという、声を先に録って後から映像をつけるスタイルで作られている。AKIRAと一緒ですね。
しかも全編ほぼアドリブなので、途中で普通にくしゃみしたり、普通に噛んで自分で笑ったりするんですけど、そこをカットしない。これが最高。
だから3DCGアニメなんだけど超リアル。ホント人間見てるみたいなんですよ。でもアニメ。そのギャップがユーモラスなんですよね。台本が無いと、予想だにしないおもろさが生まれるものですな。
そんなゴールデンエッグスは最近、公式からYouTubeにガンガン上げられ始めたので、ぜひ見てみてください。
【番外編】谷口崇のアニメ作品
シュール系CGアニメは、この他にもロングセラーの「ピーピングライフ」、「紙兎ロペ」をはじめ、かなりの数が出ているんですが、ちょっと私はハマきれなかったもので、最後はCGを抜きにして谷口崇の作品をレコメンドしたい。
彼のシュールアニメにハマっちゃったのは、高一のときでしたね。ちなみに3年間ずっとハマってて、毎日、帰宅部5人くらいで友だちの家に集まっては、夜までずーっと初期のYouTubeで観てました。
今でこそいろんな企業案件をこなして有名人になった谷口さんですが、当時は谷口さんの前のアカウントで、再生回数1500くらいだったはず。そのうち100は間違いなく私たちです。
どんだけ影響受けたかって、そのうちの1人はいまだに谷口崇テイストの口調が戻らないですからね。これもうやばいことですよ。しかも彼はいま営業マンですからね。完全に日常生活に支障きたしている。
で、私はその後に福岡でライターになるわけですが、会社から「福岡出身の人でインタビューしたい人いない?」と聞かれて真っ先に「谷口崇」と答えました。椎名林檎でも武田鉄矢でも松田聖子でもなく、とにかく谷口崇さんに話を聞いてみたかったんですよね。
この記事なんですけど、Web版だとカットしまくってて味気なくなっちゃってるんですよね。ただフリーペーパー版ではもっと長く載せてて、インタビューで1時間半くらい話を聞かせていただいたんです。もうホントこのときほど「ライターになってよかった」と思ったことはなかった。
最後に「絵を描いてるとこを写真で撮らせてください」とお願いして撮影してたんです。で、谷口さんが一心不乱に描いているので「何の絵ですか?」と聞いたら「おち◯ち◯です」と。「あぁ、谷口崇が目の前にいるんだ」と心から感動しましたね。
ツッコミがいないことがミソ
今回は2000年代を彩ったシュールアニメについて紹介してみました。青春ですよ。どんだけインドアな青春なんだと突っ込まれそうですが、これらの作品に人生を大きく変えられた気がする。
今回、紹介した3作品に通ずるキーワードは「ツッコまない」だ。とにかく馬鹿らしいことを否定せずに認めていくスタイル。自ずとツッコミは視聴者に委ねられる。これぞシュールなんですね。この辺りは以下の記事でも紹介しています。
とかく変なことをしたら「シュール」といわれがちな日本において、これらのアニメーションは真のシュルレアリスムだった。だから、かなり勇気がいるはずなんですよね。怖いですよ。ツッコミのないコメディを出すのは、ほんとにハートが強くないと厳しい。
そんなハードルを乗り越えて、いま見返しても、中高生のまま笑えるのがすごい。まだの方にも、ぜひ観ていただきたい。
ただ「1話5分くらいだし、観てみよっかな」と油断してはいけないですよ。きっと止まらなくなるので、ぜひ時間があるときに再生ボタンを押してみてください。
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