映画『次郎長三国志』シリーズが、とんでもなく面白い!

『次郎長三国志』シリーズが面白いということは前々から聞いていて、いつかは観てみたいと思っていたんですが観るなら映画館と決めていたのでなかなか機会がなかったのですが、名画座で公開したのを機に遂に次郎長デビューしました!

次郎長シリーズはいろんなバージョンで映画化されているのですが、今回は初期のマキノ雅弘監督・小堀明男主演のバージョンです。多分これが一番面白い。

これはもうワンピース!

「オレは世界一の海賊王になる!」というルフィの元に様々な仲間が集まってくる日本で一番売れているマンガ「ONE PIECE」。その元ネタはここにあったかというほど。

「オレは海道一の大親分になる!」という次郎長の元に、個性的な様々な子分たちが集まってくる。
毎度、仲間が増えていく楽しさと仁義や義理を重んじる姿と敵をやっつけていく面白さがあります。

尾田栄一郎氏がDVDBOXのイラストを描き下ろし

実際にワンピースの作者尾田栄一郎さんは次郎長三国志が大好きなんだとか。
大の映画好きのスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと対談した際に次郎長三国志の話で大いに盛り上がり、その縁もあって当時なかったDVD化を東宝に直談判し、尾田栄一郎氏のイラスト付きのDVDBOXの発売を実現させたんだとか。

次郎長イラスト


今回は、全9話あるので、1話ずつ紹介しながら話ごとに増えてくる登場人物をまとめていきたいと思います。

エピソードはネタバレありです。
次郎長三国志のストーリーが書いてある映画サイトもあるのですが、内容が微妙に間違っていたりするので備忘録の意味もあってここはネタバレありで全部書いてますので、ネタバレ避けたい方はここからは観た後の確認用でお願いします。


『次郎長三国志 第一部 次郎長売出す』

次郎長1

これが第一話。駿河国・清水の米屋の息子・長五郎こと次郎長は、喧嘩相手を海に放り投げたところ探しても上がってこない。相手を殺めてしまっては国許にいられないと旅に出る。(でも実際は相手は逃げていた)

その旅先で出会った男たちが次郎長の漢気に惚れて次々と旅から戻った清水の次郎長のもとに集まってくる。

・旅先の賭場で出会った喧嘩っ早い、桶屋の鬼吉
・喧嘩相手の度胸のある使者だった、関東綱五郎
・元侍で剣の腕が立ち教養もある兄貴分、大政

子分がそろい、次郎長は一家を構えることに。


『次郎長三国志 第二部 次郎長初旅』

次郎長2

お蝶と夫婦の契りを結んだ次郎長だが、その足で旅立つことになる。
途中で果し合いの仲裁に入ったことで、増川の千右衛門を赤鬼の金平の子分から救う。そして、沼津で兄弟分の佐太郎のやってるオンボロ宿に寄るが佐太郎は次郎長たちを歓待するため女房の着物を質に入れる。それを知った仙右衛門は佐太郎を誘ってみんなの着物を持って博打にいくが二人揃って身包み剥がされてしまう。

着物がなくなった次郎長一家は裸のまま仙右衛門の恋人おきぬを親の元に届けて、そこで古着を都合してもらう。
そこから赤鬼の金平のもとに乗り込み、川原で大喧嘩となる。

この川原からついて来た乞食のような坊主の法印大五郎と一行は茶屋に行き、そこで吃音の男に出会う。啖呵をきる時には饒舌になるその男こそ森の石松! ここで遂に登場です。

・赤鬼の金平と揉めていた、増川の仙右衛門
・仙右衛門の恋人、おきぬ
・次郎長の妻になった、お蝶
・飲み屋の女中で鬼吉と綱五郎が惚れてる、お千
・次郎長の兄弟分、沼津の佐太郎
・佐太郎の妻、お徳
・乞食のような坊主、法印大五郎
・バカだが喧嘩はめっぽう強い、森の石松


『次郎長三国志 第三部 次郎長と石松』

次郎長3

この辺りからもう森の石松がメインのようになってきます。
この回はいきなり森の石松から始まります。

石松は、旅の途中で多勢に無勢の喧嘩の助太刀に入る。そこで黒駒勝蔵の子分から助けたのが2枚目で女たらしの追分三五郎。
この三五郎と宿で博打を打つも、女博徒のお仲に全部やられて二人してすっからかんになってしまう。
ところが翌朝、あれはイカサマだったとお金を戻しにきたお仲に二人は惚れてしまう。

一方、次郎長一家は賭場で役人に捕まり牢獄に入れられてしまう、中では牢主が威張り散らしていたが、そいつらをとっちめてすっきりしたところに、清水から張子の虎三の知らせで、大熊の兄弟分の縄張りが黒駒勝藏に荒らされてると聞き、急ぎ清水に帰ろうとする。

石松と三五郎は黒駒勝藏の子分に待ち伏せにあい、三五郎を好いていた大岩の妹おもとは乱闘に巻き込まれて負傷してしまう。

・二枚目でお調子者の、追分三五郎
・三味線を引くイカサマ女博徒、投節お仲
・彼の浪曲でいつも始まる。喧嘩は弱い、張子の虎三


『次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港』

次郎長12

次郎長一家の引っ越し祝いで飲めや踊れやの大騒ぎ。そこに次郎長の子分になりたい三保の漁師・豚松が魚をいつも届けにくる。

森の石松と追分三五郎は、清水にやってくる途中で困った相撲取りの一座を助けるために次郎長に相撲興行を持ちかける。
初の興行を開催することになった次郎長一家、そこで三五郎が適当に決めた懸賞に勝ってしまった豚松が次郎長の元に金の請求に来る。ところが売上金を持って帰る途中で黒駒勝藏の子分に襲われた三五郎は売上金と共に帰ってこない。金を持って逃げたと思われ追われる三五郎だったが、お仲の仲裁で誤解が解け、次郎長の子分になる。

ところがそこから大変な事態に。
黒駒一家と一悶着ある三五郎を子分にしたことで、怒った黒駒一家が甲州から大勢で殴り込みにやってくる!

それを迎え撃つ次郎長一家。旅先から清水に寄った森の石松、お仲も加わり勢揃い! そこには豚松の姿もある。

・ヤクザになりたい三保の漁師、豚松


『次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路』

次郎長5

お千ちゃんがお嫁に行ってしまい、見事に振られた鬼吉と綱五郎。
相変わらずコミカルな二人が楽しいが、次郎長たちは何やら神妙な相談事。
甲州の賭場が猿屋の勘助に荒らされている。

そこでお仲が偵察に行くことになった。
ところが約束に日になってもお仲は帰ってこない。気を揉む石松と三五郎。そこへ甲州からの旅人・大野の鶴吉がお仲が捕まったことを告げる。

相手が待ち構える甲州に、次郎長一家は勢揃いで殴り込みをかける!
白い粉の煙幕のようなものを投げつける甲州勢に怯みもせず、お仲が捕らえられている土蔵へ向かう、石松は斬られ片目を失い、豚松は活躍するも斬られてしまうが、最後には勘助一味を倒して勝利するのだった。

・男気で甲州までの案内をした、大野の鶴吉


『次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家』

次郎長7

このシリーズでは珍しくしっぽりとした雰囲気の回。

甲州へ殴り込んで、見事に猿屋の勘助を討ち取った次郎長。
しかしそのせいで役人に追われることに。身を隠すために一家で当てもない旅に出るが途中でお蝶が病に倒れてしまう。

知り合いを頼るも追手のかかる身で、一夜の宿をお願いするのも大変なほど追い詰められてゆく。
そんな時、かつて相撲興行で助けてやった久六が一家を構えていると聞き訪ねると、その節はお世話になったと歓待を受けるが、どうも怪しい。

久六は役人と組んで次郎長を捉えようとするが、石松の知り合いの小松村の七五郎がそれを知らせ間一髪逃げ出して、その男の家に厄介になる。
そんな折、お蝶は病が治らず帰らぬ人になってしまう。

やがて居場所を突き止めた久六たちが七五郎の家に迫るが、槍を使う七五郎の女房お園も加わり次郎長一家が返り討ちにする。

そして一行は清水を目指すのだった。

・石松の友達、小松村の七五郎
・槍を使う女傑、七五郎の妻のお園


『次郎長三国志 第七部 初祝い清水港』

次郎長8

前回命を落としたお蝶の百箇日が終わるまでは博打も喧嘩もしないと決めた次郎長一家。
そこへ沼津の佐太郎とお徳が尋ねて来て、行き場に困っていた彼らに次郎長は店を持たす。仙右衛門の許嫁のおきぬもやって来て店を手伝う。

恩を仇で返した久六にいつまでも喧嘩をしない次郎長一家を見て街中の人々はこれで次郎長も終わりだなと呆れてしまう。

その頃次郎長に預けられた喜代蔵は、若いながら手下を従えて息を巻くが、お仲を母さんの代わりと慕い、次郎長の嫁になって欲しいと懇願するもお仲は大野の鶴吉とまた旅立ってしまう。
お仲に聞いて、大政の妻ぬいが清水にやって来て、小松村の七五郎とお園も清水を訪れる。

賑やかになる清水だが、怪しい旅人も姿を表すようになる。
そんな中に次郎長一家は百箇日が明けるお祝いにフグ料理で宴を催すのだが、みんなが見事にフグに当たってしまう。

そこに怪しい旅人だった久六の手下どもが集結し、次郎長一家に殴り込みをかけてくる! 槍のお園らが奮戦するが次郎長たちはフグの毒で痺れて動けない…

久六らは次郎長屋敷の中まで乗り込んできて大ピンチの中、忠臣蔵の仇討ちエピソードを話していたかのごとく、久六たちを欺き実はフグの毒には当たっていなかった次郎長一家の反撃で見事に返り討ちにするのだった!

今まで登場したキャラクターが大集合して、仇の久六と対決するかなり山場の回。

・若いが子分を従える、喜代蔵


『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』

次郎長11

久六を討ち果たした次郎長一家は、お蝶と豚松のために大きな法要を催す、それは各地から親分さんを招いたかなり大掛かりなものだった。
そこに訪れた親分衆のひとりが志村喬演じる身受山鎌太郎。
5両しか香典がなかったので石松は勝手に20両足して25両にする。

法要を終えた次郎長から石松は讃岐へ使いを頼まれる。最初は嫌がっていた石松だが讃岐にはいい女がいるとみんなに煽てられて旅に出る。無事に讃岐の金毘羅で用を終えた石松は期待して女郎屋に行き、そこで出会った夕顔という女郎にひと目惚れする。楽しいひと時を過ごした石松は、帰りに夕顔から手紙を預かる。

女郎屋を出た石松は、旅のついでに身受山鎌太郎を訪ねる。
そこで借りた20両を返す返さないのやり取りをするうちに、石松が落とした手紙を見つける。それは夕顔が石松に持たせたものだった。そこには石松を慕う夕顔の想いが書き連ねてあったのだった。
鎌太郎は石松を後押しして夕顔を身受けし二人を夫婦にすると決めた。石松は清水に帰る途中で小松村の七五郎とお園の元を訪ねるが、その道中で久六の残党に襲われてしまう!

惚れた女ができて死ぬわけにはいかないと言う石松、腕っぷしは誰にも負けない石松だが多勢に無勢、雷鳴の中斬られるがその時隻眼だった眼が開く。
石松開眼のこの演出はすごい、七五郎とお園、旅の道中で知り合った政五郎がいる家の前で石松は力尽きる。

石松の凶報を聞き走る次郎長一家。
それと対極に、幸せそうに見受けされた夕顔と鎌太郎の一行の姿でこの章は幕を閉じるのであった。

次郎長一家きっての人気者である森の石松がついに斃れるという衝撃の回。
大物俳優である志村喬が冒頭から登場する豪華布陣で、石松にフォーカスした内容。ラストに向かって盛り上がりを見せていく。

汗水たらして働く親分、身受山鎌太郎
惚れ合った女のため死ねないという、政五郎(小政)
讃岐の女郎、夕顔


『次郎長三国志 第九部 荒神山』

次郎長10

焼け落ちた家屋を前に、百姓たちが次郎長一家への悪口を言うところから始まる。どうやら火をつけたのは次郎長一家だとのこと。

石松の仇、都田の三兄弟を匿った新辰親分に殴り込んだ大政ら次郎長一家は三兄弟を取り逃し、火付けの濡れ衣を着せられ今は山にこもっている。
そこへ次郎長の言伝を持った喜代蔵が帰ってきて「火付けの身の証を立てるまで清水に帰るな」と伝える。

そこで次郎長一家は山を下り、百姓たちに身の証を立てるため石をぶつけられに行き見舞金も渡す。そこで百姓から信頼を得た一行は取り囲む新辰一家は刃で追い払いここを後にする。

三州吉良に着くと、親分・馬之助の娘お米と一緒になった仁吉との祝儀が行われていた。今後は仁吉が跡をついて親分になる。
そこに他の親分衆とは別に密かに祝いに訪れていた次郎長、その次郎長に大政は会いに行き、身の証を立てた報告と勝手な真似をした許しを請う。

やがて荒神山の賭場を巡って、縄張りの長吉とそれを狙う安濃徳が対立する。都田の三兄弟を匿い黒駒の援軍を密かに受ける安濃徳に対し、長吉は吉良の仁吉に相談を持ちかける。仁吉には次郎長一家がついている。

世紀の対決が荒神山にて遂に行われる!
次回は、荒神山での決戦!と言う予告編まで流れてこのシリーズは終わる…

博徒上がりで三州吉良の親分、仁吉
吉良の親分・馬之助の娘で仁吉の妻、お米

補足

そうなんです。
このシリーズ、最後のクライマックス直前で終わるのです。。
映画.comとかキネマ旬報とかのサイトを見ると内容が違っていて他のシリーズなのか別の内容や結末が書いてあったりするのですが、本来最終章であるはずの第十部荒神山後編は公開されませんでした。

それまでも悶着のあった東宝とマキノ雅弘監督、前作のタイトルを「石松開眼」から「海道一の暴れん坊」に強制的に東宝に変更させられたり、豚松演じる加東大介が黒澤明の「七人の侍」などで多忙になり降板させるために東宝から「ブタマツコロセ」と電報が打たれて、豚松は死ぬことになったり、原作の村上元三への原稿料の支払いが滞納したりといろいろあった。

わずか2年の間に8作も作ると言う量と、殺人的なスケジュールを強要する上に何かと注文の多い東宝に対して、人気シリーズとなってきてはいたものの監督のテンションは下がり、第八部で最後にしようと思っていたところ東宝が第九部の公開日を決めてチラシまで擦ってしまったことから、第九部を1週間で撮り終えたのだとか。

そんなとんでもないエピソードも面白い。


最後に

とにかくクライマックス直前で終わってしまっているのもあって、続きが気になるし観たすぎる。。

マキノ監督のインタビューによると一応は撮り終えているという話や、第十部に出演していた岡田茉莉子も出演部分の撮影は終えていて映画は完成しているものと思っていたという話もあり、どこかに第十部の撮影されたフィルムが隠れていないかと淡い期待(願望)もあったりします。
(実際、予告編はあるし)

いや、それにしても面白かった。
戦後すぐにこんなに面白いシリーズがあったなんていうのがすごい。
次郎長シリーズはずっと観たかったけど劇場で観たいと思っていたので今回ラピュタ阿佐ヶ谷でやってくれたことによりようやく鑑賞できました。

ワンピース好きな人にもおすすめです。


最後までありがとうございます。


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