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ジャック・ドゥミと、ヌーヴェルヴァーグ

ここ最近、昔のフランス映画とかを観返してみたんですがやっぱり面白いんです。
ヌーヴェルヴァーグの頃の映画って、瑞々しくて勢いがあってとにかく面白い!

でも最近この頃の映画が取り上げられることもないしあまり注目されていなかったりもするのですが、いつかnoteにも書いてみたいと思っていたのでこの勢いで書いてみます。

その中でも今回は、ジャック・ドゥミにフォーカスして彼の代表作や影響を与えた作品、周辺の情報をまとめてみたいと思います。


ヌーヴェルヴァーグとは?

そもそもヌーヴェルヴァーグとは、何なのか?
ご存知の方は説明不要だと思いますが、この大きな映画界のムーブメントについてまずは紹介してみたいと思います。

簡単に言うと1950年代にフランス映画界で起こった新しい潮流です。

ヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague)とは、英語だと「NEW WAVE」で「新しい波」という意味です。

この1950年代にそれまでとは違った新しいタイプの映画監督が次々と登場しました。
彼らはその新しい感性でそれまでと違ったタイプの作品を世に送り出し、それが当時の若者に熱狂的に支持されて一時代を築きました。

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なぜ、そんなことが起こったのか?

時代を少し遡ると1945年に第二次世界大戦が終わるまで、フランスはナチスドイツの支配下にありました。その当時観れる映画はドイツ映画かナチスの検閲を通ったフランス映画だけ。当然敵国のアメリカ映画は観ることができません。
だけど当時の映画ファンたちは知っています。ヒッチコックやルビッチ、チャップリンに最近はオーソン・ウェルズなんてのもいるらしい…

闇市でフィルムを手に入れてこっそり観ている輩もいたのだとか。
どれだけ当時の映画ファンにはストレスだったことか。。

それが、1945年のパリ開放によって一気にアメリカ映画が入ってきます!
それまで映画に飢えていた映画ファンの若者たちはそれに飛びつきます。
貪るように映画を観て新しい映画の感性を培っていきます。

やがて映画の批評家になった彼らは、それまでの常識とは違い何の下積みもないままに映画監督としてデビューしていきます!(本来なら助監督として修行を積んだ後に映画監督になるものでした)

それが、ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、エリック・ロメール、クロード・シャブロル、ジャック・リヴェット、アニエス・ヴァルダたちで、その中にジャック・ドゥミもいました。

新しい時代に、新しい感性を持った若者たちが、新しい映画を作り出した。
そのムーブメントこそが、ヌーヴェルヴァーグなんです。


ヌーヴェル・ヴァーグ作品の特徴

それまでの作品は、スタジオのセットの中で撮影されるのが普通でした。
ところがヌーヴェルヴァーグの作家たちは、カメラを持って街に飛び出します。
セリフも普段自分たちが友達や恋人と話しているような等身大の言葉が中心です。

このロケ撮影で即興演出がヌーヴェルヴァーグ作家たちの特徴となっていきます。

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ジャック・ドゥミとは

このヌーヴェルヴァーグの作家たちの中で今回はジャック・ドゥミにフォーカスしてみたいと思います。

それぞれにみんな作家性があって特徴があるのですが、ドゥミも特徴的な監督なのでそこを今回取り上げみたいと思います。

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ドゥミ作品で特徴的なのは、やはり音楽です。
ミュージカル作品で傑作を残し、音楽では盟友である作曲家ミシェル・ルグランとのタッグで数々の映画音楽を残しています。

ドゥミは、7歳の時に観たディズニー映画『白雪姫』に影響受けて映画監督を目指すようになります。
そこから彼のロマンティックでファンタジーな作家性が生まれました。


ジャック・ドゥミの代表作

そんなドゥミですが、ここからは彼の代表作を紹介していきたいと思います。

彼の代表作となるとやはり初期の作品がやっぱりいいです。
特に好きな初期の4作品を今回取り上げたいと思います。

『ローラ』(1960)
『天使の入江』(1962)
『シェルブールの雨傘』(1964)
『ロシュフォールの恋人たち』(1967)


『ローラ』(1960)

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主演:アヌーク・エーメ
ひと目惚れした水兵のミシェルを7年間待ち続ける踊り子のローラだが、最近は水兵のフランキーとも親しくなり、そこに幼なじみのローランもやってきて…

港町ナントを舞台にしたラブロマンス。
ローラを巡って男たちが交差する、その行方は。
主演のアヌーク・エーメが瑞々しくて美しい! 
モノクロのナントの港町も雰囲気があっていい。

『天使の入江』(1962)

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主演:ジャンヌ・モロー
銀行員のジャンは、ビギナーズラックで儲けたカンジにハマり、やがてカジノに出入りする美貌の夫人とも親しくなり、次第にギャンブルと女にのめり込んでいく…

舞台は、美しいリゾート地のニース。
ジャンヌ・モローが海辺を歩く姿を勢いよく追い抜いていくショットにミシェル・ルグランの華麗で少し悲しげな音楽が重なるとても印象的なオープニング!

主演のジャンヌ・モローが妖艶な美しさでファム・ファタール(悪女)


『シェルブールの雨傘』(1964)

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主演:カトリーヌ・ドヌーヴ
恋人同士の自転車修理工のギイと傘屋のジュヌヴィエーヴ、ところが戦争にギイが召集されることになりはなればなれに。そこで妊娠が発覚するが…

なんと、セリフも全てミュージカルという前代未聞のミュージカル映画!
冒頭の雨傘のシーン(石畳の上をカラフルな雨傘が行き交うシーンを真上からのショットで撮ったもの)は、映画史に残る名シーン!

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これぞジャック・ドゥミの真骨頂な作品。
ミシェル・ルグランの音楽も相まって最高のフレンチミュージカルが完成。

カトリーヌ・ドヌーヴはこの作品で一躍世界的スターになりました。


『ロシュフォールの恋人たち』(1967)

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主演:カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワーズ・ドルレアック
年に一度のお祭りで賑わうロシュフォール。その祭りのショーに出演した美しい双子のソランジュとデルフィーヌ、いつしかパリに行き素晴らしい恋人に出会うことを夢見ている…

こちらもミシェル・ルグランの楽曲が素晴らしいミュージカル作品。
ドゥミのある意味、到達点ともいうべき作品です。

恋愛を謳歌する、恋をこんなにもエンジョイして高らかに歌い上げるミュージカルがとてもフランスっぽくていい。50年以上も前の作品とは思えないくらい若々しくて瑞々しい。

カトリーヌ・ドヌーヴの実の姉であるフランソワーズ・ドルレアックとの共演作品。
ドルレアックはこの映画の直後に自動車事故でなんと亡くなってしまいます。25歳という若さでした。


ジャック・ドゥミに影響を受けた作品

ジャック・ドゥミはその後の映画に様々に影響を与えていますが、その中でも最近の作品でとても分かりやすく影響を受けている作品があります。

『ラ・ラ・ランド』(2016)です。

これはもう本当に分かりやすい!
『ロシュフォールの恋人たち』を完全にモチーフにしています。
音楽なんて、もうほぼミシェル・ルグラン笑
この辺は見比べてもらえるとすごくよく分かります。

楽曲を担当したベンジ・パセクとジャスティン・ポールのコンビ、パセク&ポールは、『グレイテスト・ショーマン』でもその優れた楽曲を提供しています。

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盟友ミシェル・ルグラン

これまで何度の名前が出てきていますが、ジャック・ドゥミ映画には欠かせないのが作曲家のミシェル・ルグランです。
ジャック・ドゥミの映画を彩る世界観を決定づけているのが、ミシェル・ルグランによる楽曲。

ドゥミの映画はミュージカルだったり、音楽がとても重要な役割を持っているのでルグランなくしては語れないほどです。

ルグランは、ドゥミ以外にも数々のヌーヴェルヴァーグ作品に楽曲を提供しています。

その他の主なヌーヴェルヴァーグ作品
『女は女である』
『5時から7時までのクレオ』
『女と男のいる舗道』
『はなればなれに』
など


妻にして作家、アニエス・ヴァルダ

ジャック・ドゥミの妻のアニエス・ヴァルダもなんとヌーヴェルヴァーグの映画作家です。しかも映画制作はドゥミよりも早くデビューしていて、ドゥミと同じく左岸派として活躍し評価も受けています。

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ドゥミは1990年になくなりましたが、ヴァルダは2019年に亡くなるまで映画作家として現役で作品を発表し続けました。
遺作となった『顔たち、ところどころ』(2017)の日本公開は2018年なので、本当に最後まで映画を作り続けていた印象です。


他にもいるヌーヴェルヴァーグの作家たち

ヌーヴェルヴァーグには本当に多くの若手作家が生まれました。
ドゥミやヴァルダの他にも様々な作家が生まれましたが、その主だった監督を紹介したいと思います。

<セーヌ川左岸派>
アラン・レネ
アニエス・ヴァルダ
ジャック・ドゥミ

<セーヌ川右岸派>
ジャック・リヴェット
クロード・シャブロル
エリック・ロメール
フランソワ・トリュフォー
ジャン=リュック・ゴダール


最後に

とてもざっくりではありますが、ジャック・ドゥミを軸にしてヌーヴェルヴァーグを紹介してみました。
この時代の作品は本当に面白い作品が多いです。

ヌーヴェルヴァーグ(新しい波)とはなんだったのか、が少しでも伝わればいいなと思ってます。

難しいものでは全くなくて、その時代の若手がたくさん出てきた時で、一気に出てくるだけの時代背景がちゃんとあったのです。

今観てもとてもおしゃれでかっこいいし、いろんな作品に影響を与えているのが分かりますのでぜひ1本でも観るキッカケになればいいなと思います。


最後までありがとうございます。











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