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【読書】芥川賞候補作アンソロジー!これは埋もれた名作集の決定版だ

埋もれた名作が好きだ。
もう古本でしか手に入らない名作。
埋もれた名作が好き→が高じると、
名作を埋もれさせたくない、
という気持ちが起きてくる。

だから、戦前や戦後の
日本文学はとりわけ、
埋もれないでと強く願っている。

小島信夫や吉行淳之介らが
どんどん忘れられていく時代は
私にはかなり辛い。

だから、戦後文学や
戦前文学のアンソロジーがあったり
特定作家の選集が出ると
すごく嬉しい気分に。
自分を誉められたように嬉しい(笑)。
最近では、
戦後文学の牽引作家
後藤明生の全集や
小島信夫の全集が出た時や
色川武大や田中小実昌のエッセー集が
また、堀田善衛トリビュート本が
新刊で本屋さんに並んだ時は
実に嬉しかった。
勝手に一方的に好きだと
つきまとうストーカースレスレかな(笑)。
作家たちからしたらキモいかも(笑)。

その一方で、こうした本が
どれだけ売れたか心配になる。
売れてたら問題はないんですが、
「出したら赤字でした」という
前例になってしまうと、
次が続きにくくなる。
出版社も取り次ぎも本屋も
埋もれた名作には、及び腰になる。
それがちょっと心配に…。

ただでさえ、文学は儲からない。
まして、難解気味な戦後文学や
歴史的な気配がする戦前文学は、
読みやすいものではない。
関心がない人には手を出しにくい。
だから、強いフックが必要になる。

そんな中で、この本に出会った。
そこそこ評判にもなってる。
『芥川賞候補傑作選
戦前・戦中編1935~1944』

芥川賞は何かとにぎわう。
そのノミネート作品を
戦前・戦中でセレクトした
名作アンソロジー。
実にナイスアイデア。

編んだ人は、鵜飼哲夫さん。
初めて知った人ですが、
ウィキペディアで見たら
かなり骨がある人らしい。

講談社文芸文庫にも、
『昭和期デカダンス短編集』という
アンソロジーがあり、
セレクトぶりはナイスでしたが、
デカダンスなんてもう死語だ。
あまり売れた気配もない。

でも、この芥川賞ノミネート作品の
アンソロジーは悪くない。
今まで出会ったアンソロジーで
一番エグい(笑)。
私もこんな本が出したかったな。
悔しい。でも嬉しい。

しかも、戦前や戦中の作品なら
集めた作品のほとんどは、
著者への印税も
有効期間が切れている。
お金が安く済む。

それに、カバーは太宰治だ。
なんといっても、太宰は
第1回芥川賞にノミネートされた人。

この本には14人もの作家の作品が
載っている。
太宰治、矢田津世子、織田作之助、
木山捷平、中島敦、、、。

埋もれた名作をこんな風な切り口で
セレクトする途があったかあ。

これは、編者の鵜飼さんの執念か、
はたまた別に企画した策士がいたのか
どちらにせよ、
こうした昭和の名作に
日が当たる嬉しい試み。
早く「戦後編」も読んでみたいところ。

芥川賞受賞作品を
自分で第1回から読むのは、
すでに色々な人がやっている。
でもノミネート作品まで
読み込んでセレクトするのは、
本当に骨が折れそう。

「埋もれた名作」が土の中から
取り出され、私たちの前に…
古い宝探しのようですね。


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