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【漫画編集】恋愛漫画がいちばん売れるという都市伝説

「メインは恋愛にして下さい」

女性マンガ編集者として
まだ現役だった頃、
私は女性漫画家さんに
口酸っぱく言っていました。

どんな職業でもいい、
どんな設定でもいい、
いずれにせよ、
恋愛要素をメインにした作品に
して欲しい、そう言ってました。

なぜ、わざわざそんなことを
口酸っぱく言っていたかというと、
年齢を重ねてくると、
恋愛漫画はもういいかな?
と女性漫画家さんは
恋愛に飽きてくるからです。

10代20代は
女性漫画家さんは
そのほとんどが、
恋愛ドラマを描きます。
みずから楽しく描いていきます。

それでも、
だんだん30代後半や40代になると
そろそろ、恋愛抜きの
人間ドラマを描きたくなるんです。
そういつまでも、 
恋愛した、惚れた、はれた、
ばかりではいられない。

もっと他の
人間的な要素を詰め込んだ
ドラマを描きたくなる。

医療漫画や
部活漫画であれ、
恋愛が縦糸になるなら、
編集者としても安心なのですが、
恋愛要素のない漫画では、
たくさん読んでもらえるかが
心配になるんです。

その点は、漫画家さんも
わかっているんですよね。
自分が今関心を持ってる
マニアックな話を漫画にしても
恋愛要素抜きにしたら、
読者数がガタンと減ることが。

ただ、創作家は、
自分に忠実であったり、
頑固であることが多く、
担当編集から、
次は恋愛漫画にしましょうと
言われても、そうだな、
と簡単には思えない。

そうした頑固さは、
創作にはとても大事なポイントです。

編集者のいうがままに描いてきた、
なんて漫画家は
そもそもいませんからね。

ただ、自分が若い頃は、
女性漫画家の愚痴を聴いては、
(講談社は恋愛漫画しか
書かせてくれない、とか)
それなら、
私は恋愛要素抜きで
全然ありですよ、
それで行きましょうと
「寄り添」ってきました。

でも、そのやり方で、
ヒットした例は少なかったのも
また事実でした。

それがあって、
私も、やはり、講談社なみに、
30代後半〜40代の漫画家さんにも、
ベタなくらいの恋愛漫画を
描いて下さいと
敢えて直訴するようになりました。

やはり、
恋愛漫画を読みたい読者は
ガーデニング漫画を読みたい読者と
比べたら
がぜん恋愛漫画のほうが、
パイが大きい訳ですからね。

パイが大きいことは
エンタメ漫画の編集としては
重要(です)と当時は思ってました。

しかし、
自分も最近、すっかり歳をとり、
恋愛漫画や恋愛映画を観ても
ワクワクしなくなりました。
観たとしても恋愛シーンに
キュンキュンすることは 
なくなりました。 

今ではネトフリ『地面師』に
ワクワクしている輩になりました。
(笑)。

そして改めて、当時を 
振り返ると、こう思うんです。

次の作品を始める際は、
まず漫画家さんがその時一番興味が
あることを主題にしていただき、 
それが縦糸だとして、
登場する人物関係について
恋愛要素を付けて貰えれば
良かったんですね。
それが横糸だとして。

恋愛、恋愛、
言い過ぎたかもしれません。

魅力的な人間を、
男も女も登場させれば、
自然に恋愛関係が出来ていく、、、
編集者はそのお手伝いをすれば
良かったのだなあ?と、
今は、そんな反省と後悔を
抱いています。

いつになったら、
シンプルに楽しく漫画が
読めるようになるのかなあ?
元漫画編集者は、、、、?

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