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【ありのまま】ありのまま書くのは難しい?

佐野洋子さんを、今日、
急に読みたくなりました。
ベストセラー絵本
『100万回生きたねこ』で
お馴染みの絵本作家です。

晩年はガンを患いながら、
言いたいことを言いたいだけ書いた
毒も薬も備えたエッセイスト。

いつも何かを全力で愛し、
インチキや愚かさに全力で怒っていた。

この人が凄いのは、
きれいごとが一ミリもなかったこと。
自分を語るにも、
何かに怒るにも、
きれいごとが一ミリもない。

樹木希林さんとよく似ていた。

同じ女性のエッセイストでも、
曽野綾子や下重暁子といった論客は
どうしても、正義やきれいごとが
混じってくる。
正義や美徳に依拠して怒っている。
生身の感情ではなく、
やはり飾っているように感じる。

正義がなくても、
生身ひとつで怒っていて、
しかも楽しいから、
佐野洋子はすごいんだなあ。

残念ながら、
男性エッセイストは大抵、
正義を求め、
自分の正義にもとづいて、語る。

誰も反論できない正しい話をするのは、
言葉を使う人間として
ズルいんですよね。

人間らしく、隙のある文章を
武装せずに書けばいいのに、
男性のエッセイは隙がない。
松浦弥太郎さんら
意識高い系エッセイストは
だから、正直、信じられない。
自分の「ライフスタイル」の
正しさ、美しさを悠々と語るから。
ファンの方がいたらごめんなさい。

自分をもはや「正解」扱いして
豊かさ、多様さを語り出す
自称・暮らしの幸福追求家は、
私の感覚では、どうしてもキモい。
なぜなら、
そこには恥じらいが欲しいんです。

自分を見るまなざしには
ユーモアが欲しいんですよ。

佐野洋子さんのフィルターを
通した世界は、そんな胡散臭さ
インチキさがない、
ありのままな世界でした。

「ありのまま」という言葉も
本当は好きではありませんが、
佐野洋子だけは特別です。

「友達はいらない」
「金は嫌いじゃない」
「男たちはみなバカだった」
普通はこうした、
ミもフタもない話って
みんな黙るか、
反対の「耳ざわり」いい話を
書きたくなる訳ですね。
キレイごとで塗ってしまう。

人間の心は不思議。
どんなに頑張っても、
キレイごとが湧いてくる。
それをまんま語るのを
「ええかっこしい」と
関西ではいいました(笑)。

書くという作業は、
そんな欲望との戦い?かもしれない。

佐野洋子さんはきっと、
最後まで戦っていたんですね。

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