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デンマークの教育って実際どうなの?(9月振り返り)

フォルケホイスコーレに滞在して1ヶ月が過ぎました。

「フォルケホイスコーレ」という言葉が長いので、今までは「フォルケ」と略していましたが「フォルケ」は「民衆」という意味、「ホイスコーレ」は「高等学校」を意味するそうで「フォルケ」と略すのは正しくないと指摘を受けました。これからは「ホイスコーレ」にします。

日本語であれば、「学生割引」を「学生」と言っているような感じでしょうかね。伝わらないですね。。(ちなみに、ホイスコーレ生も現地の学割が受けられるので嬉しいです。)

今回は、学校の授業で感じた日本との教育違いや幸福に関して紹介しています。


1.日本とデンマークの教育の違いについて

デンマークの教育が世界的に注目をされている理由は、生徒の主体性や社会性を重視し、試験に依存しない学びの場を提供しているからです。

デンマークの教育が注目される理由

生徒の主体性や社会性を育むだけでなく、国際的な学力としても、OECDが実施する国際的な生徒の学習到達度調査(PISA)で高く評価を受けています。最新の2022年の結果も、世界80カ国中、「数学」15位、「読解力」17位、「科学」21位の評価を得ています。

国の幸福度も高いこともデンマークの教育が注目される理由です。
例えば、試験でトップの成績が取って、有名大学に行って、一流企業に就職したのに人生が生きづらかったらどうでしょうか?自分の受けてきた教育に疑問を感じるのも無理ありません。

『世界幸福度レポート 2024』 
我らが日本は、143位中 51位。30代以下の若者に絞ると日本は73位。

日本とデンマークの教育の違い

具体的にどのようにデンマークと日本は教育に違いがあるのでしょうか?

簡潔に、デンマークの教育は学習者中心のアプローチで、競争よりも協調を重視します。一方で、日本は一律的で試験の評価に重点に置かれます。

日本とデンマークの教育方法の比較表

「授業が退屈です」と先生に伝えた話

日本とデンマークの教育方法を見ると、デンマークは柔軟的で、生徒主体。日本より優れているなと感じる方も多いかもしれません。

ただ、私が実際に授業を受けていて、何度か「退屈」という感情を感じました。ということで、「自分の学びたいことはこうです!」と先生に授業を退屈に感じていることをメールで伝えました。

先生からの返事をとしては、「今やっているのがデンマークの教育方法」で、「私たちを信じて。」という回答でした。

私が退屈に感じた理由は、授業から何が得られているか分からないことから生まれた感情でした。

例えば、教育について学ぶクラスでは、「理想の学校を絵で描いてみよう!」という内容がありました。

私の本音としては、北欧の教育について学びたいのに学べない、何時間も絵の時間で費やすのも幼稚園みたい、主体性を重視するというのに、自分がやりたいんじゃなくてやらされていると感じたからです。

創作活動が多いです。

何か教えてもらうのではなく、グループで一緒に創作したり対話をして、気づきを得ていくのも、デンマークの重きに置く教育方法の特徴です。このことを周りの日本人にシェアしているうちに、日本人は先生から何かを教えてもらう授業が染み付いているから、デンマークの教育が受け入れづらい人が多いという話を聞きました。確かにそうかもしれません。。。

特に日本人は、北欧の先進的な取り組みを学びたいなど強い期待を持ってデンマークに来る人が多いです。デンマーク人はホイスコーレに無料で通えますし、近隣のヨーロッパ諸国は渡航がしやすいところも、日本人とのモチベーションの差になっているんだと思います。私も含め、期待が強いからこそ、得られることのギャップを感じている日本人も少なくないようでした。

私も日本とデンマークの教育は違うことは理解していたつもりでしたが、「今やっているのがデンマークの教育だよ。」と伝えられた時、ハッとしました。私は自分の受けた教育方法が心地よくなっていて、強く染まっていたんだなと気づきました。

デンマークの児童教育省が提供する「教育制度の概要」
政府が公開する資料が充実していないのも、個人的なギャップです。(他に公式な資料を提供するサイトがあるのかもしれません。)

日本の教育は悪いのか?

デンマークで教育を学びに来る人は、「日本の教育は問題が多い!」という意識で来る方もいます。もちろん、知識重視の教育、生徒の競争によるストレス、デジタル教育の遅れなど、課題を挙げればキリがありませんが、私は日本の教育も世界で比較したときに十分に評価していいと思っています。

冒頭に紹介したOECDが実施する最新の学力調査では、「読解力」3位、「数学」5位、「科学的」2位で、いずれも世界トップレベルです。私たちの学力は世界的に自信を持っていいものです。

学力に限らず、私は日本の道徳的・倫理的な教育は素敵だと思っています。実際に、デンマークの学校生活で使ったものを最後まで片付けるのは日本人が多かったりします。

NHKの記事から写真を抜粋

なぜ日本の教育が問題視されているか?

それは、「人生は勉強だけじゃない」という結論に尽きるんじゃないかと思います。教育のあるべき姿は、単に学力だけじゃなく、人間的・社会的・情緒的な能力を磨くということも含まれます。

創造性や問題解決力を高めること、より良い未来のために動ける人材を育成すること、個人の自己実現や幸福を追求することを支援することも教育です。

そういう点で、日本の教育は基礎学力を高めることに優れているかもしれませんが、デンマークの柔軟で創造的で社会的な教育から学ぶべきところは多いはずです。

日本がデンマークの教育から学ぶべきところの内容は、学校生活の終盤まで温めてておきます。

デンマークの学校。工作室の肖像画を見ると向きがバラバラ。不機嫌な顔だったので向きを変えられたのこと。ユーモアで溢れています。

保護者の学校に対する信頼性の無さ

もう一つ紹介しておきたいデータは、世界 11 ヵ国 22,000 人の子ども・保護者を対象にした基礎学力に関する調査です。(スプリックス基礎学力研究所)

これによると、日本の保護者は他国と比べて、学校が提供する授業に満足していないそうです。

保護者の学校に対する信頼性の無さも、日本の教育に関する課題と言えそうです。保護者の教育の信頼性が無いから、その不信感が親から子供へ伝わってしまう。教師の立場が軽視されてしまうなど、悪影響も考えられます。

世界 11 ヵ国 22,000 人の子ども・保護者を対象とする基礎学力に関する調査

2.本当に幸福な国なのか?

「幸福追求の支援」が教育に含まれると書きましたが、デンマークの幸福についても、私の感じたことを踏まえながら、紹介をします。

日本がデンマークから学ぶべきところは、デンマーク人の幸福度の高さに隠されていると思うからです。

世界幸福度ランキング

最新の世界幸福度ランキングによると、デンマークは2位です。日本は51位です。デンマークはこの調査で常に上位を得ています。

一方で、デンマークは本当に幸福度が高い国なのでしょうか?デンマークは、メンタルヘルスを抱えてる人が多く、抗うつ剤の使用料も世界トップクラスです。(デンマークの外務省)

学校の課外活動でも「孤独に闘う行進」というデンマーク人が抱える孤独の課題に対する取り組みにも参加しました。幸福な国なのに、孤独が大きな課題になっています。

イメージで幸せな国ということで考えず、この幸福度の結果はどのような調査で得られた結果かを知ることも大事だと思います。

OECDの最新の世界の自殺率
デンマークの自殺率が近年上昇している内容を書こうかと思いましたが、日本が高すぎました。。
『孤独に闘う行進』みんなで30km歩きました!

世界幸福度ランキングの調査とは

では、実際に幸福度ランキングの中身はどうなのでしょうか?次の6つの基準で幸福を測っています。

.一人当たり国内総生産(GDP
.社会保障制度などの社会的支援
.健康寿命
.人生選択の自由度
.他者への寛容さ
.国への信頼度

この幸せの定義に違和感を抱く人もいるのではないでしょうか?

この基準を見ると、デンマークの高い生産性や社会保障の充実度など、国への信頼度から、高いランキング結果が得られることにも納得ができます。

日本は幸福度51位です。「健康寿命」は長いものの、寄付行為が少ないことから「他者への寛容さ」の項目で評価されづらかったり、「国への信頼度」が低いことなどが、足を引っ張る原因になっています。

OECDの若者の失業率のデータでは日本は失業率がとても低いです。失業率が低いから日本の労働環境が安定しているという切り取り方もできます。データを読み解くのは本当に難しいです。

私がデンマークで感じたこと

ドライに指標だけで、幸せについて語りましたが、私が実際にデンマークで感じたことは、北欧は幸せそうな人が本当に多いなということです。

道に歩いていると笑顔で挨拶をしてくれた時、デンマーク政府のことを信頼しているという話を聞いた時、私が締切時間を聞いた時に「あなたのペース」でいいよと言われた時、心にゆとりがある人ばかりだなと感じることが何度もありました。

この日本とデンマークでは何が違っていて、日本人は何を見習うべきか、今は答えを出さずに、残りの留学生活で深ぼっていきたいです。

この光景を見た時、これが幸せの秘訣だと思いました!
豊かな自然と人の集まり。

3. 最後に

私たちの教育の未来と幸せ

今回は日本とデンマークの教育について書きました。
私は、教育というのは「日本」「デンマーク」という点だけでの視点で語ってはいけないと思います。

なぜなら、教育で大切なのが、単に学力だけでなく、個人の人間性を育てたり、社会を持続可能なものにする必要があるとすれば、世界的な視点で教育を改善していくべきだからです。これは言うのは簡単で、行うのは難しいとは思っています。

例えば、環境問題であれば、1つの国が頑張っても解決できないです。国同士の協力が不可欠です。

AIの普及などで、海外の情報が簡単にアクセスしやすくなっています。学ぶ側は、教師が何年もかけて学んだ知識を、AIが教師以上の情報量と質を担保して与えてくれるようになっています。一層グローバルでの教育が必要になってきています。

だからこそ、人間性・社会性のような人としてのあり方が教育が今、求められていますし、生きる上での幸福というテーマも重要視されています。

幸せとは何か?
どうしたら幸せになれるのか?
長期的な幸せと、短期的な幸せをどう考えるか?

「幸せ」という言葉1つを深ぼるだけで、私たちの生き方を深く問い直します。

留学も残り3ヶ月となりました。
デンマークは教育方法の違い、高い幸福度、日本にはないものをたくさん持っています。ここにいるからこそ、答えを与えられるのではなく、自ら探し出していきたいです。

北欧はペット先進国としても有名です。
かわいいペットをよく見ます。これも幸せの秘訣なのかもしれません。


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