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#短編小説
身に覚えのない交通系IC - 『雨月先生は催眠術を使いたくない』スピンオフSS
(ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください)
有楽町線・桜田門駅というのは、名前の華やかさとはうらはらに、あまり存在感のない駅である。
日本の中枢、官公庁舎が集められたこの場所には、千代田線・丸ノ内線・日比谷線が乗り入れる絶対王者の霞が関駅があり、わざわざ乗り換えがだるい有楽町線に乗る理由があまりない。
それは、桜田門と呼ばれる警視庁本部に出勤する者も例外ではなく、捜査二課の刑事で
Day3.5「ミミズ探し」 八日後、君も消えるんだね 陽平誕生日SS
天の端っこ、天端村。
その名にふさわしく、緑豊かな美しい山の頂上が天に向かって切り開かれたような、小さな限界集落。
僕はこの村が好きだ。僕だけじゃなく、村人みんなこの小さな限界集落を愛している。
生きものもヒトも植物も、等しく太陽の光を浴びて、いつもキラキラしているから。
そんな僕らの村が突然、大噴火のような爆発音とともに、一変してしまった。
いま天端村は、周りの地面がなくなり、雲
青野短モテ伝説、バレンタインデーの場合(江戸落語奇譚小噺)
世はバレンタインデーである。
俺こと桜木月彦――極度の人見知りだ――にとっては、二十年の人生において全く無縁のイベントであり、友チョコはおろか、母からもらうということすらなかったので、まあ、普通に忘れていた。
本日が2/14なことに気づいたのは、昼過ぎ。
きょうも青野家にバイトに行くことになっているが……家がチョコだらけになっているのではないかと想像した。
学生時代、数々の『青野短モテ伝
SS『すみません……もぐもぐ』江戸落語奇譚②発売御礼企画その1
俺こと桜木月彦は、悩んでいた。
雇い主にこんなに食事を作らせてしまって、大丈夫なのだろうか……と。
麗しの雇い主・青野短さんは、たいそう料理がうまい。
東京根津の名店『小料理屋あをの』の一人息子だからである。
……かと思いきや、いままでは見よう見まねで作っていたらしく、俺に振る舞うために料理の研究を始めたそうだ(1巻3章冒頭に書いてあった)。
他方俺と言えば、2巻2章では、青野家に着