マガジンのカバー画像

突発的な短編マガジン

25
1話完結の短編です。
運営しているクリエイター

2021年1月の記事一覧

疫病と、開けなくてもいい箱の鍵

 原因不明、治療法なしの疫病が流行って、五年が経った。
 視線がかち合うと感染するという恐ろしい病、マグマグラ病。
 罹ると、頭に溶岩を流し込んだような高熱と激しい頭痛が続き、視界が真っ赤に煮えたって見えるのだそうだ。
 厄介なことに、このマグマグラ病は、感染した人が必ずしも発症するとは限らない。
 無症状患者が意図せずばら撒いてしまっているために、世界中でパンデミックが起きて、未だ収束のめどが立

もっとみる

最高に罰当たりな丑年の事件 〜枕辺探偵事務所の鍛錬記録〜

「こりゃあ殺されても仕方ねえな」
 眉間にしわを寄せた上司が、死んだ被害者の前にしゃがみ込む感じがした。
「ご遺体に向かって失礼ですよ」
「死に様に人となりが出てんだろ」
「やめてください。そう言われたらそう思い込むしかないじゃないですか」
 僕こと弥山直樹(ややまなおき)は、ふたりだけの小さな探偵事務所で、所長の枕辺透(まくらべとおる)さんの助手として働いている。
 新卒一年目、真面目でフレッシ

もっとみる