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この両手いっぱいの海を君にだけ

静かな静かな夜である。

こんな夜はなんだかとても良いことが起きるんじゃないかと期待し、意味もなく夜更かしをしたくなるが、いつも夜更かしをしている人間からしたら特別なことでもなんでもなく、ただただ週末の夜というだけでいつもの夜がほんの少しだけ特別なものとなり期待度を増すのだろう。

足元のヒーターがやけに熱い。

少しボリュームを上げたヘッドフォンからは80年代のアイドルが歌う日本語歌詞を無理くりつなぎ合わせたFuture Funkの音が流れている。どこかの全く日本語が分からないであろう人がきっとこんな夜に、半ばヤケクソに作った曲である。

その曲が、リズムが、妙に心地よくとても魅力的だ。


君はもう夢の中。

僕は一人、今日と明日の波打ち際で夕方に捌いた魚の香りを両手に纏い、何者も寄せ付けないであろう魚臭で今も特別な夜を期待しているのだ。

波打ち際で寄せては返す心地よいリズムと魚臭。


本当、この魚たちをどうにかしてほしい。


近づけない君との距離。

明日君にもこの魚たちを紹介するよ。


それでは素敵な週末を。

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