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【83.水曜映画れびゅ~】"Petite Maman"~母娘であり、友である~

"Petite Maman"秘密の森の、その向こうは、9月から劇場公開されている映画。

『燃ゆる女の肖像』(2019)のセリーヌ・シアマ監督の最新作です。

あらすじ

大好きだった祖母を亡くした8歳の少女ネリーは両親に連れられ、祖母が住んでいた森の中の一軒家を片付けに来る。しかし、少女時代をこの家で過ごした母は何を目にしても祖母との思い出に胸を締め付けられ、ついに家を出て行ってしまう。残されたネリーは森を散策するうちに、母マリオンと同じ名前を名乗る8歳の少女と出会い、親しくなる。少女に招かれて彼女の家を訪れると、そこは“おばあちゃんの家”だった……。

映画.comより一部抜粋

森で出会ったのは、同い年の母…

亡くなった祖母の家へ、遺品整理のために来た一家。

母と父と、8歳の少女ネリー

母親のマリオンは、生家で祖母との想い出に浸っていくうちに胸が苦しくなる、とネリーにこぼします。

そしてある朝、家から出ていってしまいます。

母親の代わりに、黙々と家の片づけをこなす父親。

暇になったネリーが、近くの森をふらふらしていると…

ある少女と出会います。

少女の名は、マリオン
それは、8歳の母でした。

そんな奇妙な出会いのなかで、ネリーは同い年の母と友達になっていきます。

母娘であり、友である

2019年のカンヌ国際映画祭にて脚本賞とクィア・パルムを受賞した『燃ゆる女の肖像』を監督して話題となったセリーヌ・シアマ

本作は、彼女の3年ぶりの最新作。

「少女が、同い年の母と出会う」という本作のアイデアは、思いつきに近かったと語っています。

「このアイデアは夢のようにふっと映像が浮かんできたものなんです。…(その映像は) 森の中に小屋があってその前にふたりの女の子が立っているというものです。それで、そのひとりがお母さんでひとりが娘ということにしたら面白いんじゃないかと思いました。」
ーセリーヌ・シアマ

映画.comのインタビュー記事より一部抜粋

そのイメージを優しく膨らましていったシアマ監督。

「斬新で驚きのある設定であると同時に、ストーリーとしてはすごくシンプル」と監督自身が語っている通り、展開として特別なことが起きることなどはなく、ネリーとマリオンの交流をゆっくりと描いていきます。

一見は友達ないし姉妹が遊んでいるようにしか思えませんが、実はその二人の少女が母娘おやこという根底により、映画は不思議な空気感に包まれます。

そして映画のラストには、その「母娘であり、友である」という設定によって、”暖かみのある寂しさ”が心のなかでジワっと沸き立ちました。

70分の濃密な時間

そんな本作ですが、上映時間が実は70分ちょっとしかないんですね。

前述したようにストーリーがシンプルであるゆえに、いたずらに多くを付け足さなかったのだろうな、と思います。

だから時間としては短いですが、映画としてのすごく濃い体験で、「短っ!」とか「えっ、これで終わり?」みたいなことも特に思いませんでした。

むしろ、様々なシーンが鮮明に思い出されて、映画に深くひたれているように思えました。

近年は、大作映画を中心に上映時間が2時間ないし3時間というのが多くて、それもそれで悪くはないのですが、「こういった70分とか90分という上映時間でしか味わえない良さというのもあるんだよな」って改めて思った、そんな作品でした( ´꒳` )


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

来週は、今月から劇場公開が始まった今泉力也監督×稲垣吾郎主演の『窓辺にてを紹介させていただきます。

お楽しみに!



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