【82.水曜映画れびゅ~】"Swan Song"~クローンに”自分”を託せるか…?~
"Swan Song"は、昨年からAppleTV+にて配信されているマハーシャラ・アリ主演の映画です。
あらすじ
「生きる」という選択肢のない物語
近未来を舞台にしたSF作品。
客室乗務ロボットや無人自動運転車が出てくるので、「ブレードランナー的な世界観かな?」なんて思いながら見始めたのですが…
急に主人公がぶっ倒れて「っ!!!」
・・・
物語の主人公キャメロンは、不治の病によりいつ死んでもおかしくない体。
そんな彼に示された選択肢は、二つ。
このまま死ぬか…
自らの記憶を移植したクローンと入れ替わり、家族に知られることなく死を迎えるか…
クローンに”自分”を託せるか…?
キャメロンは家族のことを想い、クローンに記憶を移植させることを決断します。
そしてキャメロンは、自分の体や思考、記憶までも何もかもが同じクローンのジャックと対峙します。
ジャックはロボットではないため「自分がクローンである」という認識をなくせば完全な人間、つまりキャメロンに完璧になり替われます。
合理的に考えれば、自分が死ぬとわかっているのだから最も信頼できる自分の分身であるクローンに家族を任せれば一番安心できるよねって思えます。
でも…
本当にそれでいいんだろうか?
確かにクローンが任せることで家族は悲しむことなく、これまでの同じ生活をクローンととともに過ごすことができます。クローンは自分のことをクローンと思っていませんし、もちろん家族もそんなことは知る由もありません。
自分だけがひっそりと息を引き取れば、それで万事解決。そして自分の知らない世界で、もう一人の自分と自分の家族の生活が続く。
でも…
やっぱり本当にそれでいいんだろうか?
そんなキャメロンの葛藤を目にしながら「自分がキャメロンだったらどうするだろうか?」なんてことが頭を巡ります。
そんな「クローンに”自分”を託せるか?」という今までにない生命の価値観に視点が描かれていきます。
一人二役の驚異的な演技
そんな本作で主演を務めたのが、マハーシャラ・アリ。
『ムーンライト』(2016)と『グリーンブック』(2018)でアカデミー賞助演男優賞をすでに2度受賞された方ですね。
そんな彼が、主人公のキャメロンとそのクローンの二役を演じているのですが…
ちょっと凄すぎます。
一方は、家族を残して死にゆくキャメロン。
もう一方は、これからキャメロンとして生きることとなるクローン。
もとは同じ人間でありながらも、異なる人間でもある二人。
その微妙なコントラストを見事に描き出したマハーシャラ・アリなくして、この映画の素晴らしさは成立し得なかったでしょう。
ちなみに、マハーシャラ・アリは本作の演技でゴールデングローブ賞主演男優賞(ドラマ部門)と英国アカデミー賞主演男優賞にノミネートされていました。
正直個人的には、アカデミー賞でも、デンゼル・ワシントンやハビエル・バルデムの代わりにノミネートされてもいいんじゃねって思います。
これから、Apple TV+が来る!
今回紹介した『スワン・ソング』。
Apple TV+にて見られますので、加盟なされている方はご覧になられることをオススメします。
そしてApple TV+、これからかなり盛り上がってくる可能性があります!
NetflixやAmazonプライム、Disney+とは異なり、オリジナルコンテンツのみで展開してきたApple TV+。しかし、そのオリジナルコンテンツがそもそも乏しいため、これまであまり人気がありませんでした。
(私も、Apple Musicの学生特典で見ることができましたが、ほとんど開いたことがありませんでした…)
しかし、最近になってApple TV+が良作を連発しています。
本作『スワン・ソング』はもちろん、ジョエル・コーエン監督作『マクベス』や今年のアカデミー作品賞受賞作『コーダ あいのうた』もApple TV+制作。
そして、今後も期待大。
リドリー・スコットやマーティン・スコセッシといった巨匠の作品の権利をApple TV+が軒並み獲得し、さらなるアカデミー賞獲りに期待が高まっています。
さらにドラマやドキュメンタリーも面白い作品が…
学生プランがもうすぐ終わってしまうのに、これでは解約できないではないか!?
(Appleの思う壺…。)
そんなApple TV+制作の作品に、今後は要注目です。
前回記事と、次回記事
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これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!
来週は、『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督最新作"Petite Maman"を紹介させていただきます。
お楽しみに!