見出し画像

【70.水曜映画れびゅ~】"The Peanut Butter Falcon"~純粋ハートフル!~

"The Peanut Butter Falcon"ザ・ピーナッツバター・ファルコンは、2019年公開のアメリカ映画。

現在(2022/04/18)、AmazonプライムビデオやNetflixでも配信されています。

あらすじ

ツキに見放された漁師と施設から脱走したダウン症の青年、施設の看護師の3人による青年の夢をかなえるための冒険の旅を描いたヒューマンドラマ。養護施設で暮らすダウン症のザックは、子どもの頃からの夢だったプロレスラーの養成学校に入るため施設を脱走する。兄を亡くして孤独な日々を送る漁師のタイラーは、他人の獲物を盗んでいたことがバレたことから、ボートでの逃亡を図る。そんなタイラーと偶然に出会ったザック、そしてザックを捜すためにやってきた施設の看護師エレノアも加わり、3人はザックのためにある目的地へと向かう。

映画.comより一部抜粋

夢を叶える、逃亡の旅

本作の主人公は、ダウン症のザック。

身寄りがないため行政に老人ホームで暮らすことを強いられますが、本人はそんな暮らしにうんざり。そしてある日、ビデオで繰り返し見た憧れのプロレスラーに弟子入りするために、施設を抜け出して旅に出ます。

そんな逃亡の道中で出会ったのが、村の嫌われ者タイラー。タイラーもタイラーで、村漁師からとんでもない反感を買っており、お尋ね者の身。
そんな二人は似た者同士で、はじめはザックのことを疎ましく思っていたタイラーも徐々に意気投合していき、結局ザックをプロレスラーの道場まで送ってやることにします。

といっても、どちらもお金がないっ!

車なんてもちろんなく、道場までは何百キロもある道のりを、手作りいかだで目指します。

そんな二人の、逃亡と夢、そして友情の旅路を描いた作品です。

モヤッと感のない、温かみ

そんな本作で主演を務め、ダウン症の少年を演じたのがザック・ゴッサーゲン。彼自身もダウン症です。

この映画の素晴らしいことは、まさにその部分!

というのも、2000年代までのハリウッドは、今回のザックのようなハンディキャップを持つ人々の役を、その当事者ではない俳優が演じることが多かったんです。

例えば、『ギルバート・グレイプ』(1993)のレオナルド・ディカプリオであったり、『アイ・アム・サム』(2001)のショーン・ペンだったり。

そのような役を演じた俳優は、かなり真摯に演技をしているとは思うのですが、個人的にはモヤッとする感覚があるんですよね。というのも、過度に誇張している感が否めず、実際にハンディキャップのある方々はこれを見てどう思うのだろう、なんて考えてしまいます。

しかし、そういったキャスティングも徐々に変わってきている昨今。

2012年公開の『チョコレートドーナツ』では、ダウン症の少年役に、ダウン症のアイザック・レイヴァが起用されました。

そして今回のザック・ゴッサーゲン。自身を投影したありのままの演技には、モヤッと感ないリアルな温かみを感じました。

こういった多様性を反映したキャスティングが、今年のアカデミー作品賞受賞作『コーダ あいのうた』(2021)にも繋がっているのだと思います。

アメリカで異例のヒット

この作品は、当初全米でわずか17館でしか公開されていなかった、いわゆるミニシアター系映画。一方で、各映画館でチケット売り切れが続出する大ヒットを記録し、最終的には996館まで公開規模が拡大されました。

批評的にも軒並み絶賛レビューが相次ぎ、世界で最も影響力のある映画レビューサイトRotten Tomatoesでは、滅多にお目にかかれない肯定的意見95%超を記録しています。

Rotten Tomatoesより

アカデミー脚本賞へのノミネートも期待された本作。結論からすればノミネートはなかったのですが、主演を務めたザック・ゴッサーゲンはその年のアカデミー賞で、タイラー役のシャイア・ラブーフとともにプレゼンターを務め、ダウン症俳優初の快挙となりました。

そんな純粋に心温まる本作。
心からお勧めします。


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

来週は、難解ストーリーなのに観た人すべてを魅了してしまう、クリストファー・ノーラン監督作Interstellarインターステラーを紹介させていただきます。
お楽しみに!


この記事が参加している募集

映画感想文