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星の王子様 読書記録 第24節 事故から一週間目

 Nous en étions au huitième jour de ma panne dans le désert, et j'avais écouté l'histoire du marchand en buvant la dernière goutte de ma provision d'eau :
 <Ah! dis-je au petit prince, ils sont bien jolis, tes souvenirs, mais je n'ai pas encore réparé mon avion, je n'ai plus rien à boire, et je serais heureux, moi aussi, si je pouvais marcher tout doucement vers une fontaine!

 砂漠での事故から一週間がたった。僕は貯水されていた最後の一滴を飲みながら、商人の話を聞いていた。
 あぁ! 僕は王子様に言った。君の思い出は大変すてきだね。でも僕はまだ飛行機を治せていないし、飲み水ももうないんだ。そして、僕だって、もしゆっくりと泉の方へ歩いていく事が出来れば、幸せだろうなぁ!

🌈単語

✅goutte 1
♢女性名詞
①しずく、滴り、水滴

provision
♢女性名詞
①貯蔵、備蓄;(特に)食糧(の蓄え)
②(複数で)買い物、買った品物

--Mon ami le renard, me dit-il…
--Mon petit bonhomme, il ne s'agit plus du renard!
--Pourquoi?
--Parce qu'on va mourir de soif…>
Il ne comprit pas mon raisonnement, il me répondit :
<C'est bien d'avoir eu un ami, même si l'on va mourir. Moi, je suis bien content d'avoir eu un ami renard…>

ーー<僕の友達のキツネは、>彼は僕に言った
ーー<僕の可愛い坊や。もうキツネの話どころじゃないんだよ。>
ーー<どうして?>
ーー<喉が渇いて死んじゃうからさ。>
彼は僕の言うことを理解しないまま、僕に答えた。
<友達を持っていたのはいいことだね、たとえ死ぬとしても。僕、キツネの友達を持ってとってもうれしいんだ。>

<Il ne mesure pas le danger, me dis-je. Il n'a jamais ni faim ni soif. Un peu de soleil lui suffit…>
 Mais il me regarda et répondit à ma pensée :
<J'ai soif aussi… cherchons un puits…>
J'eus un geste de lassitude : il est absurde de chercher un puits, au hasard, dans l'immensité du désert. Cependant nous nous mîmes en marche.

彼は僕がどれほど危険な状態なのかわからないんだ。僕は思った。彼は飢えたこともなければ、喉が渇いたこともないんだ。わずかな太陽の光だけで十分なんだ。
 でも彼は僕を見て、そして僕の意見に対して答えた。
<僕も喉が渇いた。井戸を探そうよ。>
僕はうんざりだというそぶりを見せた。砂漠のど真ん中で、あてずっぽうに井戸を探すなんて馬鹿げている。
それにもかかわらず、僕たちは歩き始めた。

🌈単語
✅mesure
♢mesurerの直接法現在第3人称単数形
①・・・を計る[量、測]る、測定する
②・・・を推定する、予測する;評価する、見積もり

✅puits
♢男性名詞
①井戸
②(知識などの)底知れない人物

✅geste
♢男性名詞
①身振り、手真似、しぐさ、動作
②行為、行動
③(身振りによる)合図

✅lassitude
♢女性名詞
①疲れ、疲労
②退屈、うんざりすること、倦怠

✅immensité
♢女性名詞
①(空間などの)広大さ;無限、無辺
②(程度、量などの)巨大さ、計り知れないこと

✅mîmes
♢mettreの直接法単純過去第1人称複数形
♢代動名詞
se ~ en + 無冠詞名詞 ・・・し始める

  Quand nous eûmes marché, des heures, en silence, la nuit tomba, et les étoiles commencèrent de s'éclairer. Je les apercevais comme en rêve, ayant un peu de fièvre, à cause de ma soif. Les mots du petit prince dansaient dans ma mémoire :
  <Tu as donc soif, toi aussi?> lui demandai-je.
  Mais il ne répondit pas à ma question. Il me dit simplement :
 <L'eau peut aussi être bonne pour le coeur…>
  Je ne compis pas sa réponse mais je me tus… Je savais bien qu'il ne fallait pas l'interroger.

 僕たちが黙ったまま数時間歩いたころ、夜が更け、そして星が明るく瞬き始めた。僕は喉の渇きのために、少しだけ熱っぽく、それを夢見心地で見ていた。王子様の言葉は、僕の思い出の中で踊っている。
 <君も、喉が渇いたの?>僕は彼に尋ねた。
でも、彼は僕の質問には答えなかった。彼は僕に、ただ単にこう言った。
 <水は、心にもいいかもしれない。>
 <僕は彼の返事が理解できなかったが、口を噤んだ。僕は、彼がそれを尋ねる必要がないことを知っていた。

  Il était fatigué. Il s'assit. Je m'assis auprès de lui. Et, après un silence, il dit encore :
<Les étoiles sont belles, à cause d'une fleur que l'on ne vois pas…>
  Je répondis <bien sûr> et je regardai, sans parler, les plis du sable sous la lune.
 <Le désert est beau>, ajouta-t-il…
 Et c'était vrai. J'ai toujours aimé le désert. On s'assoit sur une dune de sable. On ne voit rien. On n'entend rien. Et cependant quelque chose rayonne en silence…

 <疲れたね。>彼は座った。僕も彼のすぐそばに座った。彼はまた言った。
 <星は美しいね。誰も見たこともない花のおかげで・・・>
僕は答えた。そのとおりだとも。そして、何も言わずに、月の下の砂の起伏を見た。
 <砂漠は美しい>。彼はこうも言った。
そしてそれは本当だった。僕はこの砂漠がずっと好きだった。人は砂の砂丘の上に腰掛ける。何も見ない。何も聞こえない。だけれども、何かが静寂の中で光を放つ。

🌈単語
✅auprès
♢副詞
♢auprès de
①・・・のすぐ近くに、そばに、身近に
②(機関、地位(にある人))のもとで
③(人、機関)に対して、を対象として
④・・・にとって、の間で
⑤・・・に比べて

<Ce qui embellit le désert, dit le petit prince, c'est qu'il cache un puits quelque part…>
  Je fus surpris de comprendre soudain ce mystérieux rayonnement du sable.
Lorsque j'étais petit garçon, j'habitais une maison ancienne, et la légende racontait qu'un trésor y était enfoui. Bien sûr, jamais personne n'a su le découvrir, ni peut-être même ne l'a cherché. Mais il enchantait toute cette maison. Ma maison cachait un secret au fond de son coeur…

 <砂漠を美しくしているのは、>王子様は言った。<どこかに井戸を隠しているからだよ。>
 僕はその砂漠の神秘的な輝きをとっさに理解したことに驚いた。
僕がちっちゃい男の子だった頃、僕は古い家に住んでいた。そして、そこには宝物が埋められているという伝説があった。もちろん、誰もそれを発見することはなかったし、多分、それを探したこともない。でも、その家全体には魔法がかかったようだった。僕の家は、心の奥深くに秘密を隠していた。

🌈単語
légende
♢女性名詞
①伝説、(民間)伝承
②(実在の人物、史実にまつわる)伝説、神話;風説
③(メダル、貨幣の)銘
④(絵などの)説明文、銘文
raconta
♢raconterの単純過去 第3人称
trésor
♢男性名詞
①宝、宝物、秘宝、財宝
②貴重な物、大切な物
enfoui
♢enfouirの過去分詞
♢形容詞
①埋められた
②隠された、秘められた
③閉じこもった、隠れ潜んだ


<Oui, dis-je au petit prince, qu'il s'agisse de la maison, des étoiles ou du désert, ce qui fait leur beauté est invisible!
 --Je suis content, dit-il, que tu sois d'accord avec mon renard.>
 Comme le petit prince s'endormait, je le pris dans mes bras, et me remis en route. J'étais ému. Il me semblait porter un trésor fragile. Il me semblait même qu'il n'y eût rien de plus fragile sur la Terre. Je regardais, à la lumière de la lune, ce front pâle, ces yeux clos, ces mèches de cheveux qui tremblaient au vent, et je me disais : <Ce que je vois là n'est qu'une écorce.  Le plus important est invisible …>

 <うん。>僕は王子様に言った。<家にしろ、星にしろ、砂漠にしろ、彼らの美しさは目に見えないものだ!>
ーー<僕はうれしい。>彼は言った。<君は僕のキツネと同じ考えなんだね。>
王子様が眠るとき、僕は彼を抱きしめた、そして、再び出発した。
僕は感動していた。僕は壊れやすい宝物を持っているようだった。地球上でこれほどまで壊れやすいものは他にないかのように思われた。僕は月の光の中に、青白いおでこを、閉じられた目を、風に揺れている髪の房を見ていた。そして僕は思った。僕が今見ているものは、外見にしかすぎない。最も大切なものは、眼に見えないんだ。

🌈単語
✅écorce
♢女性名詞
①樹皮
③[古]/[文章]外見、見かけ

Comme ses lévres entrouvertes ébauchaient un demi-sourire je me dis encore : <Ce qui m'émeut si fort de ce petit prince endormi, c'est sa fidélité pour une fleur, c'est l'image d'une rose qui rayonne en lui comme la flamme d'une lampe, même quand il dort…> Et je le devinai plus fragile encore. Il faut bien protéger les lampes : un coup de vent peut les éteindre…
  Et, marchant ainsi, je découvris le puits au lever du jour. 

王子様の唇が半ばほほえみをたたえているように見えた時、僕はまた考えた。
<眠っている王子様があまりにも強く僕を感動させるのは、一本の花に対する彼の忠実な心だ。それは、彼が眠っているときでさえ、ランプの炎のように彼の中に輝いている薔薇の姿だ。そして僕はそれがまだ脆いものだとわかった。ランプを守らなければならない。風が一度吹けば消えてしまうかもしれない。そして、それから歩いていくと、日が昇るころに、僕は井戸を見つけた。

🌈単語
devinai
♢他動詞
①・・・を見抜く、言い当てる、推察する
②・・・を漠然と判別する、それと見分ける
③[謎を]解く
demi-sourire
半微笑
émeut émeus
♢他動詞 émouvoir 第3人称単数形直接法現在
①・・・(の心)を動かす、感動させる、興奮させる
♢代動名詞
①心を動かされる、感動する、興奮する
②[感情が]激する、かきたてられる、乱れる
fidélité
♢女性名詞
①忠実、誠実;貞節
②(約束、考え方などの)厳守、固執;(店、製品などの)愛顧、愛用
③事実を曲げないこと;正確さ
ébauchaient
♢ébaucher
①[木材、石材、金属など]を粗削りする、荒仕上げする
②[芸術作品、計画、仕事など]の下書きをする、ざっと輪郭を作る
③[身振り、動作など]を軽く[わずかに]示す
entrouvertes
♢形容詞
①わずかに開いた、半開きの
protéger
♢他動詞
①(~A(de, contre +B))Aを(Bから)守る、保護する、防御する
②・・・を引き立てる、に目をかける
③・・・を擁護する;後援する、助成する
lévres
♢女性名詞 lévreの複数形
①(多く複数で)唇;口

🌈文学

 ここは、キツネの話を聞いて、物事の本質は目に見えない、という真理を聞いた後だ。

砂漠が美しく見えるのは、井戸を隠しているから。(そして自分達が水を求めているから。)
サンテグジュペリの旧家を輝かせて見せるのは、宝物が隠されているから。(僕たちは宝さがしが大好きだ。) 
王子様の寝顔がとてもサンテグジュペリを感動させるのは、薔薇への忠誠心が隠されているから。(サンテグジュペリは奥さんを思う。)つまりこういうことだろう。

 物事を美しく見せるのは、その物事の中に、自分達が求めている何かがあるから。(自分達はその物事と絆を持っているから*私たちは水を必要とし、ひょっとすると水から必要とされているのかもしれない。)

 王子様はそれがわかっている。喉が渇いた。水を飲みたい、というサンテグジュペリの言葉を聞いて、その言葉を導き出したのだ。

 水は、心にもいいかもしれない。

 なぜ?宝物、じつはそういうものは、なくってもよかった。それがあると思えていれば、それだけで魔法がかかったようだった。

 水は、なくてもよかった。でも、それがあると思えるだけで、心が潤うようだった。そして、水を求めて動くことは、丸薬を飲んで渇きを瞬時に消すよりもずっと、豊かな時間の使い方だった。

 食べ物やお金をすぐに与えられてしまう人間は、それを求めて動こうとはしないだろう。ただ与えられるだけの生き方なんて、人生じゃない。もちろん飢えたからと言って、ぶら下げられたニンジンを追いかけるのはよくない。

 人生が光り輝くのは、自分達の求めているものがあるから。

 それを求めてはいけなくなった時。それが手に入らないと知った時、人はひどくうなだれ、失意のうちに沈んでしまうもの。けど、希望を捨ててはいけない。捨てたらそこで試合終了。

 ここは、まだつなぎの物語。だけど、これくらいのことは言っていると思う。

 ちょっと蛇足かもしれませんが、この作品に批判の目を向けてみる。

 自分達の求めている物があるから美しいと言っても、じゃあ、今まで出会った変な大人たちは一体何なんだろう?彼らは、権力、不動産という物、自惚れ、心の虚、仕事(指示)、頭でっかち。それぞれが自分達の求める物を求めていたではないか?それはダメなのだろうか。

 彼らはそうしたものに心を魅かれる。彼らにとって、それが美しかったのだ。

 例えば、金や異性、権力などを求める人間の悲しい性はどうだろう?こうしたものを追い求めることで、果たして人生は光り輝くのだろうか。

 確かにそこにも美しい何かはあるのかもしれない。しかし、彼らはみんな、外形のみに目を留めて、外形のみを大切にしてしまう人間たちだったのだ。彼らは、外形のみを見て、それを手に入れた気になっていた。美しくさせているものがあり、その結果美しくなったもの。その結果美しくなったものだけに心を奪われていたということか。

 彼らは、何故それが美しいのかが見えない。本質をつかみ取れない。
表面的な美しさだけが大切で、本質には目もくれない。だから、本質から実った美しさだけを取り、美しいものだけを自分のものにし、それ自体を台無しにしてしまうのだ。

 

 

 


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