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星の王子様 読書記録 第7節 王子様ブチ切れる

星の王子様の著作権は2005年に切れました。ここは私のフランス語学習の場であるとともに、文学を学ぶ場です。ここはちょっと今日中に何度か見直して変えなきゃなと思うところがちらほら。

  Le cinquième jour, toujours grâce au mouton, ce secret de la vie du petit prince me fut révélé. Il me demanda avec brusquerie, sans préambule, comme le fruit d'un problème longtemps médité en silence :
  <Un mouton, s'il mange les arbustes, il mange aussi les fleurs?>
--Un mouton mange tout ce qu'il rencontre.
--Même les fleurs qui ont des épines?
--Oui. Même les fleurs qui ont des épines.
--Alors les épines, à quoi servent-elle?>
Je ne le savais pas. J'étais alors très occupé à essayer de dévisser un boulon trop serré de mon moteur. J'étais très soucieux car ma panne commençait de m'appraître comme très grave>, et l'eau à boire qui s'épuisait me faisait craindre le pire.

🌈
 5日目、毎回羊のおかげで、王子様の人生の秘密が明らかになった。彼は僕に、まるで静かに長い時間をかけて考えた問題の結果のように、何の前触れもなく、ぶっきらぼうに、僕に尋ねた。

 <羊、もし彼が低木を食べるのならば、花も食べるかな?>
 <羊は自分の目の前にあるものなら何でも食べるよ。>
 <棘のある花も?>
 <うん。棘のある花も。>
 <じゃあ、棘は、何の役に立つの?>

僕はそれを知らなかった。僕はそのとき、エンジンにしっかりとはまっているボルトを外してみようと夢中だった。エンジンの故障がほとんど深刻なものだと分かり始めたので、僕はとても心配していた。そして、すっからかんになった飲み水は、僕に最悪な事態を懸念させた。

🌈単語

appraître 自動詞 見えるようになる 生まれる 明らかになる 分かる
boulon 男性名詞 ボルト、ピン
✅brusquerie 女性名詞 つっけんどん、ぶっきらぼう (文章)唐突、不意

commençait commencerの第3人称半過去形 ・・・を開始する ・・・の初めにある 
craindre ・・・を恐れる、心配する
des 前置詞deと定冠詞複数形lesの縮約形
dévisser ねじなどを抜く、緩める 取り外す
épines épineの複数形 女性名詞 棘;棘を持つ植物
épuisait épuiserの半過去形第3人称 ・・・を汲みつくす 使いつくす を疲れさせる を味わい尽くす
fruit 男性名詞 果実 果物 フルーツ 実り
fleurs 女性名詞 fleurの複数形 花 花形飾り 「文章」盛り
médité méditerの過去分詞 ・・・を熟考する、じっくり考える ・・・をもくろむ、企てる
occupé occuperの過去分詞 場所を占める、占領する;に住む;[地位、職務など]に就いている。形容詞:忙しい 手がふさがっている
préambule 男性名詞 序言、序文;前置き 前兆;前触れ
pire 形容詞 知的、道徳的に より劣る、より悪質な 最悪の、最低の、最も有害な 最も危険な
rencontre 現在形第3人称 ・・・と偶然出会う 出くわす
servent servirの複数形第3人称現在形 ・・・に奉仕する 仕える 食事を出す、給仕する
serré serrerの過去分詞形 ・・・を握りしめる;抱きしめる;締め付ける。[体の一部」をぎゅっと引き締める [締め具など]をあきらめる、留める
soucieux 形容詞 心配している、心配そうな

🌈熟語
✅en silence 
音を立てずに、静かに、無言で
Le cinquième jour 5日目
avec brusquerie ぞんざいに 適当に
sans préambule 前触れもなく 唐突に
servir à qn,qc 物が、~の役に立つ
✅craindre le pire 最悪な事態を懸念する

🌈代動名詞
✅s'épuiser 尽きる なくなる かれる

🌈語法
pire 最悪の、最低の、最も有害な 最も危険な という意味では、maivaiseの最上級であり、定冠詞や所有形容詞、指示形容詞と共に使う。

🌈文法
✅faire + 人 + 不定形で~させる という使役の意味になる。
me faisait creindre le pire. 最悪な事態を懸念させる。

<Les épines, à quoi servent-elles?>
  Le petit prince ne renonçait jamais à une question, une fois qu'il l'avait posée. J'étais irrité par mon boulon et je répondis n'importe quoi:
<Les épines, ça ne sert à rien, c'est de la pure méchanceté de la part des fleurs!
--Oh!>
  Mais après un silence il me lança, avec une sorte de rancune :
 <Je ne te crois pas! Les fleurs sont faibles. Elles sont naïves.
Elles se rassurent comme elles peuvent. Elles se croient terribles avec leurs épines…>

星の王子様

🌈

<棘、何の役に立つの?>

王子様は一度質問したら決してあきらめなかった。僕はボルトのことでいらいらしていたし、何でもいいから適当に答えた。

<棘はね、何の役にも立たないんだ。花の全く意地悪なところだよ。>

<ああ!>

沈黙の後、一種の恨みを込めて、僕に言い放った。

<僕は君を信じない!花はか弱いんだ。花は素朴なんだ。
花はなんとか安心するんだ。花は自分の棘を怖いものと信じているんだ。>

🌈単語
✅faibles 形容詞 faibleの複数形 身体が弱い 力の無い 弱い
✅méchanceté
 女性名詞 悪意、敵意、冷酷さ 意地悪な言動
naïves naïfの女性形 素直な、無邪気な、純真な;飾り気のない 人の好い、信じやすい、世間知らずの、馬鹿正直な、素朴な ありのままの、本来の
✅pure
 形容詞 purの女性形 混じりけの無い 純粋な 澄んだ きれいな
✅posée
 poserの過去分詞型 女性形
・・・を置く
✅rancune
 女性名詞 恨み 遺恨 怨恨
rassurent rassurerの第3人称複数形現在 ・・・を安心させる、落ち着かせる
renonçait 
renoncer [権利、財産など]を放棄する、捨てる
あきらめる、やめる
sorte 女性名詞 種類
terribles 形容詞 terribleの複数形 恐ろしい、ぞっとする耐えがたい、すさまじい、ものすごい

🌈熟語
poser la question 質問をする
renoncer à ~ ~をあきらめる
une sorte de 無冠詞名詞 一種の、~のようなもの
comme je peux できるだけ なんとかして
(ここでは、comme elles peuventと活用されている)

🌈代動名詞
✅se rassurer 安心する;ほっとする;おちつく

🌈語法
une sorte de 無冠詞名詞
des sortes de 無冠詞名詞の形で複数になることもある。
👻Hassaku et Natsumikan sont des sortes de d'oranges.
八朔も夏みかんもオレンジに似たものだ。

  Je ne répondis rien. À cet instant-là je me disais : <Si ce boulon résiste encore, je le ferai sauter d'un coup de marteau.>
Le petit prince dérangea de nouveau mes réflexions:
<Et tu crois, toi, que les fleurs…
--Mais non! Mais non! Je ne crois rien! J'ai répondu n'importe quoi. Je m'occupe, moi, de choses sérieuses!>
  Il me regarda strupéfait.
<De choses sérieuses!>

🌈
僕は何も答えなかった。その瞬間僕は考えていた。もしこのボルトがなおも動こうとしないなら、金づちでふっとばしてやろう。
王子様は僕の新しい指摘を遮った。

<君は思っているの…花が…
ちがうんだ!ちがうんだ!僕は全く思っていないよ。僕は適当なことを答えた。僕は重大なことで頭がいっぱいなんだ。>

彼は僕をびっくりして見た。

<重大なことだって!>


🌈単語
✅coup 
男性名詞 一撃 打撃 ぶつかること 衝撃音 発射 社会的衝撃 身のこなし 手早い扱い 仕業 試み いたずら
dérange déranger ・・・の活動を妨げる 整頓されたものを散らす 習慣を狂わせる、精神を錯乱させる、社会通念などに反する
✅instant
 男性名詞 瞬間、一瞬、つかの間
marteau 男性名詞 槌、金槌、ハンマー、げんのう (ドアの)ノッカー
résister ・・・に抵抗する、はねつける 動こうとしない
réflexion ・・・ 熟考、熟慮;省察力、思考力 考え、見解;指摘
✅sauter 跳ぶ、飛び跳ねる、飛び上がる 飛び降りる 吹っ飛ぶ、消える、途中を飛ばす 飛び級する 上下に揺れる
✅strupéfait 形容詞 びっくり仰天した、唖然とした、茫然自失した

🌈熟語
À cet instant-là その瞬間
d'un coup de marteau 金槌の一撃

Il me voyait, mon marteau à la main, et les doigt noirs de cambouis, penché sur un objet qui lui semblait très laid.
<Tu parles comme les grandes personnes!>
Ça me fit un peu honte. Mais, impitoyable, il ajouta:
<Tu confonds tout… tu mélanges tout!>
Il était vraiment très irrité. Il secouait au vent des cheveux tout dorés:

🌈
彼は、僕の手の金槌そして、油で黒くなった指を見ていた。彼はとても醜いと思う物体に強い関心を寄せた。

<君はまるで大人のように話をするね!>

僕は少し恥ずかしかった。でも、情け容赦なく、彼はこうも言った。

<君は全てを一緒にしている!全てをごちゃまぜにしている!>

彼は本当に、とてもいら立っていた。金色の髪の毛が、風に揺れていた。

🌈単語

cambouis 男性名詞 (潤滑油として使用され)劣化した油
confondre ・・・を混同する、取り違える ・・・を一つにする;ともにする
cheveux cheveuの複数形 男性名詞 頭髪 髪の毛 頭髪 障害 困難
doigt 男性名詞 指
✅doré dorerの過去分詞形 ・・・に金箔を張る、金泥を塗る、金メッキをする。・・・を金色にする;日焼けする。形容詞 金箔をはった、金泥を塗った、金メッキした

honte 女性名詞 恥、恥辱、不名誉
laid 形容詞 醜い、見苦しい 恥ずべき、はしたない
mélanger ・・・を混ぜ合わせる、混合する 寄せ集める、取り合わせる ごちゃまぜにする、かき乱す
objet 男性名詞 物体、事物 品物、道具 対象;主題 目的;狙い
impitoyable 形容詞 情け容赦のない、非常な、冷酷な [判断、意見などが]厳しい;[評論家などが]冷徹な、[現象が]苛烈な、激しい
secouer ・・・を揺さぶる、揺り動かす, 身体の一部を振って意思を表す。
vent 男性名詞 風 大気

🌈熟語
✅se pencher sur qn/qc ・・・に強い関心を寄せる、のことを心配する;(強い関心を持って)…に取り組む
au vent à le vent 風で動く;風力による 

🌈語法
doigt
足の指はorteilまたはdoigt de piedという
手の5本の指は、親指pouce,人差指index,中指majeur,médius,grand doigt,薬指 annulaire,小指 auriculaire, petit doigt

🌈文法

Il secouait au vent des cheveux tout dorés:

Il secourerが、非人称の使い方が出来るとは、辞書には書いていなかったけれども、Il=彼(王子様)であるとすると、王子様が、髪を風で揺り動かしながら、というのは変だと感じる。どちらかというと、非人称的に、髪が風で揺れていた、と訳すべきだろう。

  <Je connais une planète où il y a un monsieur cramoisi. Il n'a jamais respiré une fleur. Il n'a jamais regardé une étoile. Il n'a jamais aimé personne. Il n'a jamais rien fait d'autre aimé personne. Il n'a jamais rien fait d'autre que des additions. Et toute la journée il répète comme toi: "Je suis un homme sérieux! Je suis un homme sérieux!, et ça le fait gonfler d'orgueil. Mais ce n'est pas un homme, c'est un champignon!
--Un quoi?
--Un champignon!>

🌈

<僕は深紅色さんがいる惑星を知っている。花のにおいをかいだことがないんだ。星を見たこともない。人を愛したこともない。他のことは何にも好きじゃないんだ。足し算のほかは何もしないんだ。毎日彼は君のように繰り返している;私は真面目な人間だ。私は真面目な人間だ。って。そして、傲慢で膨れ上がっている。でもそんなのは人間じゃない、きのこだよ!>

<何だって?>

<きのこだよ!>

🌈単語
✅addition 加えること 添加物 付録 補足 足し算 支払金額
✅cramoisi 形容詞 深紅の、えんじ色の 
✅champignon 男性名詞 キノコ 菌類やカビの総称
✅respiré respirerの過去分詞形 呼吸する;息をする 一息つく;ほっとする ・・・をする、呼吸する;かぐ
✅gonfler ・・・を膨らませる ・・・(の胸)をいっぱいにする 満たす [川など]を増水させる [体の部分]を醜く膨らます、はらす、むくませる
✅monsieur …氏、…さん、…様;
✅orgueil 男性名詞 傲慢、慢心、思い上がり 誇り 自尊心;自慢の種

🌈語法
✅monsieur …氏、…さん、…様;男性に対する敬称 固有名詞を伴う場合、多く大文字となり、正式な文書以外では、M,複数MMと略すことができる。
M. Jules Ferry. ジュール・フェリー氏。
MM. Dupont et Dupré
デュポン、デュプレ両氏

  Le petit prince était maintenant tout pâle de colère.
<Il y a des millions d'années que les fleurs fabriquent des épines. Il y a des millions d'années que les moutons mangent quand même les fleurs. Et ce n'est pas sérieux de chercher à comprendre pourquoi elles se donnent tant de mal pour se fabriquer des épines qui ne servent jamais à rien? Ce n'est pas important la guerre des moutons et des fleurs? Ce n'est pas plus sérieux et plus important que les additions d'un gros monsieur rouge? Et si je connais, moi, une fleur unique au monde, qui n'existe nulle part, sauf dans ma planète, et qu'un petit mouton peut anéantir d'un seul coup,
comme ça, un matin, sans se rendre compte de ce qu'il fait, ce n'est pas important ça!>

🌈

 <数百年間前から、花は棘を作っている。数百年前から、羊はやはり花を食べている。そしてなぜ花が役にも立たない棘をでっち上げて、意地悪な風を装っているのかを理解するように頑張ることが、真面目じゃないっていうの?
 羊と花の戦いが重要じゃないっていうの?(傲慢で)膨れ上がった深紅色さんの足し算よりも真面目で重要じゃないっていうの?もし僕が自分の惑星以外の、他のどこにもない、世界でたった一本の花を知っていて、そして、小さな羊が、このように、羊が行うことを理解することもなく、ある朝、たったの一口で花を食べてしまう、それが重要じゃないっていうの!>

🌈単語
✅années
 annéeの複数形 女性名詞 年;1年;(数量表現と共に)…年間
anéantir ・・・を無に帰せしめる;消滅させる;・・・を疲れ果てさせる;打ちのめす;意気消沈させる
✅colère 
女性名詞 立腹、怒り、憤り、いらだち
compte 男性名詞 数える事;計算 勘定、勘定書 会計、収支 (銀行の)口座、預金、報告、説明;(多く複数で)釈明、弁明 有利な点、得
fabriquent fabriquerの第3人称複数形 ・・・を作る、製造する 生産する(一定の製法に従って作ること)
maintenant 副詞 今、今では、いまや
(命令形の動詞と共に)今すぐに
(主に未来形の動詞と共に)今から、今後は
さて、ところで;でも、そうはいったものの
✅pâle
 形容詞[顔色などが]青白い、青ざめた、血の気の無い 光が弱い、薄い
✅rendre ・・・を返す、返却する、変換する

🌈熟語
être pâle de 無冠詞名詞 怒り、恐れなどで青ざめた、色を失った。
quand même = tout de même 
対立 いずれにせよ、やはり、それでも
Cette offre est un peu douteuse, mais alléchante quand même.
この申し出は少し疑わしいが、やはり魅力的ではある。
Il a réussi tout de même à s'échapper.
彼はとにかく逃げおおせた。
憤慨、強調 まったく、実際
Tu ne comprend pas ça? Enfin, c'est simple, quand même.
こんなこともわからないのかい。だってごく簡単なことだよ。
Il faut tout de même beaucoup de courage pour affronter cette situation.
こうした状況に立ち向かうには、何と云っても強い精神力が必要だ。
se donner pour+属詞 自分を…だと思わせる、…だと自称する
se rendre compte de qc [que + ind.]
・・・を理解する、納得する

🌈代動名詞
se donner 自分に・・・を与える 打ち込む 捧げる

  Il roigit, puis reprit :
  <Si quelqu'un aime une fleur qui n'existe qu'à un exemplaire  soit les millions et les millions d'étoiles, ça suffit pour qu'il soit heureux quand il les regarde. Il se dit : "Ma fleur est là quelque part…" Mais, si le mouton mange la fleur, c'est pour lui comme si, brusquement, toutes les étoiles s'éteignaient!Et ce n'est pas important ça!>

星の王子様

🌈
彼は赤くなって、さらに繰り返した。
 
 <もし数百万の星に、同じものがない一本の花を愛している人がいて、それを見ているときに幸せを感じるだけで充分なら。彼は思っている。”僕の花はどこかにある”と。でも、もし羊がその花を食べて、彼にとっては、突然に、全ての星が消滅したかのようになったら。それが重要なことじゃないっていうのか!>

🌈単語

✅exemplaire 形容詞 模範的な、完璧な、典型的な 見せしめの、教訓的となる   男性名詞 (本、新聞などの)部、冊;(機器などの)台、機 動物の見本、標本、同種のもの
éteignaient éteindreの複数形第3人称 ・・・を消す、消し止める
照明を消す、意気消沈させる

🌈熟語
✅quelque part どこかに

🌈代動名詞
✅s'éteindre 明かりが消える 薄らぐ、 反乱が収まる、音、声が弱まる、色があせる、くすむ、意気消沈する、死去する、息を引き取る、途絶える、絶滅する

  Il ne put rien dire de plus. Il éclata brusquement en sanglots. La nuit était tombée. J'avais lâché mes outils. Je me moquais bien de mon marteau, de mon boulon, de la soif et de la mort. Il y avait, sur une étoile, une planète, la mienne, la Terre, un petit prince à consoler! Je le pris dans les bras. Je le berçai. Je lui disais: <La fleur que tu aimes n'est en danger… Je lui dessinerai une muselière, à ton mouton… Je te dessinerai une armure pour ta fleur…Je…>Je ne savais pas trop quoi dire. Je me sentais très maladroit. Je ne savais comment l'atteindre, où le rejoindre… C'est tellement mystérieux, le pays de larmes!

星の王子様

🌈
 彼はそれ以上何も言うことはできなかった。突然しゃくりあげて泣いた。夜は更けてしまった。僕は工具を手放していた。金槌のこと、ボルトのこと、喉の渇きや、死のことも、全く意に介していなかった。一つの星の上で、一つの惑星の上で、私の、この地球の上で、慰めるべき、小さな王子様がいた。私は彼を抱きしめた。彼を静かにゆすってあやした。僕は彼に言った。

<君が好きな花は安全だよ。君の羊には、口輪を描いてあげる。花のために囲いを描いたよ。僕は・・・>

 僕はそれ以上何を言うべきかわからなかった。僕はとてもぎこちない感じがしていた。僕は、どうやって辿り着き、どうやって戻ればいいのかわからなかった。涙の世界というのは、とてつもなく深遠だ!

🌈単語
✅armure 女性名詞 甲冑、鎧、かぶと, 護身具、 覆い、囲い
✅atteindre [場所」に到達する、ある年齢に至る 手が届く、目標を達成する。
✅bercer ・・・を静かにゆする;赤ん坊をゆする、ゆすってあやす 
✅cnsoler …(の苦しみなど)を慰める ・・・の「苦痛など」を和らげる、沈める
✅larme 女性名詞 涙 苦しみ 悲嘆
✅lâché
 ・・・を緩める、・・・を放す、・・・を(不用意に)発する、漏らす、吐く。形容詞 緩んだ、たるんだ、腰抜けの、意気地のない
maladroit 形容詞 不器用な、ぎこちない、下手な 軽率な、不用意な、当を得ない
muselière 女性名詞 口輪
mystérieux 形容詞 不思議な、神秘的な、謎の;秘密の
outils outilの複数形 男性名詞 道具、工具 手段、役に立つもの 手先になる人
pays 男性名詞 国 国家 地方、地域、地帯;特に故郷、稲か
国民、全住民 想像上の国、世界
rejoindre …と再び一緒になる、に追いつく [場所」に戻る、帰る、たどりつく;[職、持ち場などに]復帰する、戻る ・・・を取り戻す、引き取る、・・・によく似ている、…と意見が一致する。
sanglots sanglotの複数形 男性名詞 しゃくりあげて泣くこと、むせび泣き、嗚咽、悲しみ、苦しみ、すすり泣きのような声
sentais sentirの直接法半過去形第1人称 ・・・を感じる、・・・に気づく、感情を抱く、美術を味わう

🌈熟語
se moquer de qn/qc ~を意に介さない。無視する
prendre dans les bras 抱きしめる

🌈語法
✅larme 涙という意味では、多くの場合複数形を使う。苦しみ、悲嘆の意味は複数で使う。

🌈訳すうえでの注意点
un petit prince à consoler

今回、petit princeの冠詞が、leではなく、unが使われていることに気が付いただろうか。この、à consolerというときの、àの使い方は、恐らく、多義の波の中からその最も適切だと思われるものを抜き出せば、

Elle a été le premier à inf
彼女は、~する最初の一人だ。という意味である。
慰める一人の王子様だ。


文学 解説

王子様は、羊が花を食べるか、ということを突然聞いてきた。
そして、食べると答えると、話題は、どうして花は棘を付けるのか?ということになった。
そして、ボルトを外すのに一生懸命になっている主人公が、その答えを適当に言い返したところ、王子様はその返事に大変ご立腹のようだった。

一度この本を読まれたことのある読者の方であれば、この花が一体何を指しているのか、深紅色さんとはだれのことを言っているのかおわかりでしょう。

王子様は、棘で羊を追い返してほしいみたいですね。

ここの話は、その先を読まなければ、具体的なことは分かりませんね。

ですが、この章はとっても大切なメッセージが込められているのです。

王子様の発言、

もし僕が自分の惑星以外の、他のどこにもない、世界でたった一本の花を知っていて、そして、小さな羊が、このように、羊が行うことを理解することもなく、ある朝、たったの一口で花を食べてしまう、それが重要じゃないっていうの!

 このことから、自分が羊を星へ連れて帰ると、花を食べてしまう可能性があることを示唆している。王子様はこのことに全く注意を払わないサンテグジュペリに対して激怒しているのだ。

 読者からすれば、自己中な王子様、という印象を受けるだろう。あんたの事情なんて知らんよ。と思うのが常識的な人たちの考えではないだろうか。それに、サンテグジュペリは飲み水もつき、直さなければ明日死ぬかもしれないのだ。サンテグジュペリ自身にとっても、エンジンの故障を直すことは重大なことなのである。

 そう、ここで感じた王子様の印象は間違ってはいない。彼は自己中で空気が読めない。常識的に考えて、彼はそういう個性を持っている。

 しかし、王子様は実際のところ、どうしてこれほどまでに怒ったのだろうか。それは、自分が自分の心の中で、大切な価値としてとらえている、自分の星にいる花のことを思っている。王子様は、自分の心で、大切な物、重要な物をしっかりと認識している。

 今までの節で、大人たちが数字を通して物事の存在を捉える、という話をしていたが、王子様もまた、王子様として、物事の存在を捉えているのだ。

 王子様が、花が重要だと思っている。自分の星にある、世界で唯一の花が大切だと思っている。しかし、サンテグジュペリは、それが重要な問題ではないかのように返事をした。王子様からすれば、自分が重要だと思っている問題に対して、他の大人たちが勝手に、それは重要な問題ではないと決めつけていることに対して腹を立てているのだ。

 王子様の心理を言葉に言い換えるとこう言うことかもしれない。

 僕が!僕が!僕自身が!このことを重要だと思っているんだ!僕が、このことを大切だと思っているんだ!なのにお前たちが、僕が重要だと思っていることを、重要ではないと決めつけるな!(それは僕が決めていいことなのに!)つまり、価値観の押し付けを、サンテグジュペリがしてしまったのである。

 一方で、王子様は別に、エンジンの故障を直そうとするサンテグジュペリを否定しているわけではない。ただ、確かに王子様も、サンテグジュペリの立場を理解しているわけではないのだ。こういうとき、人はよくケンカをしてしまうもの。

 こう考えれば、自己中に思えた星の王子様の気持ちがわかるのではないだろうか。

 学校で、髪が長いと言われておこられる。服装がだらしないと言われて怒られる。でも自分はこれがいいと思っているんだ。自分がいいと思っていることが重要で、自分がいいと思うことが大切なんだ。でも大人たちは、「それはいいことではない」と勝手に「僕の価値観まで変えようとしてくる
 僕が僕自身で大切だと思う世界があるのに、彼らは、僕自身で大切だと思うその世界を侵食してくる!全てをごちゃまぜにしている!

 僕自身が大切だと思うことを、大切ではないと決めつけてくる!

 というのが、王子様の考えなのである。

こう考えると、王子様が自己中なのではなく、むしろ大人たちが自己中心的な物の考え方をしているように思えてくる。

 大人たちは、常識にとらわれている。しかし、常識は常に間違ったところから生まれるという話がある。そして、常識を信じている1人の大人がもし自己中であるならば、それを信じている大人たちは全員自己中なのだ。数が多いと、自分は自己中ではないと考えるのは、誤りなのである。

 ここに書くと、一つのトピックになってしまうけれども、「傲慢とは何か」という記事をいつか書く予定なので、読んでやってみてください。他にも、「自己中とは何か」という話も書いてみます。

 



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