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【環境】中古品や再生資源の越境移動に伴う問題

こんにちは。新小樽少年です。
4月に入ってから勉強量が確実に増えていて、良い時間をそれなりに過ごせています。以上が最近の近況報告になります。(笑)

はい。今回で連載も第4回になります。今回はタイトルにある通り、中古品の越境移動問題です。中古品の輸出入には利点以外にどのような弊害が存在するのでしょうか。前回の内容を踏まえた上で、順を追って考察していきます。

1.前回までのおさらい

これまでの記事では日本から海外に輸出される中古品や、再製造という資源と経済の高効率をめざす在り方を観てきました。

また貿易的な観点から見ても、中古品や再生資源を輸出入することで、持続可能な経済の実現に加え、需要と供給のマッチングを可能にすることが可能だということを述べてきました。

しかし一方で再製造過程で、修理必要なパーツを調達できなかったり、韓国の石炭灰輸入処理問題などに見られるように課題が残されているのも事実です。

2.安全性や衛生上の問題

2011年アフリカ南部で中古タイヤの品質に対して、輸出国に規制をかけるように抗議があった。原因は中古タイヤによる交通事故の増加だった。発展途上国では中古品や再生資源の品質や衛生面が問題視されている。

14世紀に中国やヨーロッパでペストが流行した。日本では1896年に初めての感染者が出た。その原因は古着ボロの不潔物と指摘した。

古着ボロのやり取りは盛んに行われているが、一部の国では規制がかけられている。ブラジルやアルゼンチンでは輸入は禁止だが寄付は許容されている。カメルーンでは下着などの肌に触れる古着ボロの輸入禁止、ベトナムでは関税を100%かけている。

ちなみに古着ボロの輸出国にはアメリカやドイツ、日本といった先進国が並んでおり、輸出先にはパキスタンやアンゴラ、インドと発展途上国が並んでいる。

3.製造業の発展を阻害する可能性

しかしこのような衛生面を考慮して輸入規制をかけることは産業の発展を阻害する可能性がある。

日本もかつて中古の船舶を輸入していた時期がある。その理由は海外からの受注にも対応するべく、生産の効率を上げ、より多くの大型船の製造をするためである。

かつての日本は中古品を輸入し研究していたのだ。今でいう「リバース・エンジニアリング」のようなことを中古の大型船で行っていたのである。しかし現在はWTOのルール上、このような輸入は難しくなっている。

ちなみに中国の発展は「リバース・エンジニアリング」に大きく依拠している。それゆえWTOが規制を厳しくした可能性がある。要するに先進国の既得権益損害の可能性があるからだ。

※参考「リバース・エンジニアリング」完成製品を分解し、その構造を分解・研究すること。新製品開発や経済を刺激する要因になる。

4.廃棄物の増大

中古品の輸入に関してはその質が問われる。言い換えれば、輸入した中古品がすぐに壊れてしまうようであれば、それは産業廃棄物につながる。それゆえ中古品の輸入に対しては、貿易ガイドラインを設ける国が増えてきている。

例えばマレーシア製造から3年を経た電気製品は廃棄物とみなすとしている。中古自動車も一定の製造年数を経たものの輸入が禁止されている。ロシアでは5年、カナダでは15年のように定められている。

このほかに再生資源と装い、廃棄物が送られているケースもある。2004年に日本のある企業が中国に摘発され、中国は輸入禁止の措置を取ったという事例もしっかりと存在する。

経済学的な観点で考察してみると、もし
再生資源輸入コスト < 国内再生資源の回収・処理コスト
が成り立てば、国内再生資源回収・処理費用が輸入費用を上回るので、国内再生資源が廃棄物として処理されることになる。

5.再生資源のリサイクルにともなう環境汚染

再生資源リサイクルに伴う環境汚染はしばしば確認される。またそれが人体に影響を及ぼすケースもしっかり存在する。

2002年に日本から中国に輸出された廃電子機器が環境汚染を引き起こしていると報告された。廃電子機器から基盤を取り出し、七輪やハンダを用いることでが大気中に拡散している状態だったのだ。このように公害対策がほとんどなされず、リサイクルが進められていたのだった。

船舶の解体リサイクルはかつて日本がトップクラスであったが、近年はバングラデシュやインドの台頭が目覚ましい。しかしこれらの解体には環境汚染が発生している。

解体に伴う燃焼を抑えるために利用されるアスベスト、機械や燃料に含まれる大量の油が海洋汚染に拍車をかけている。台湾では船舶解体従事者が高確率で肺がんになったことが報告されている。

またバングラデシュでは機械への設備投資が少ないことから、人手が必要な労働力となっており、鉄筋製造による煙が人体にも大気にも影響を及ぼしている。このように現在でも人の安全面を考慮していなく、公害対策がないままリサイクルが進められている。

6.さまざまな輸出規制

ここまで見てきた中古品や有害廃棄物以外でも輸入禁止をしている国は少なくない。(第3節のマレーシアの例を参照)

多くの国が持続可能な経済の実現のために、リサイクルや再生資源の活用を進めたいということから、輸入基準順守のための第3者機関の設置であったり、輸入後もしっかりと検査を設けたりなどと各国が取り組みを始めている。

これに加えて関税を賦課することで中古品や再生資源の輸入を抑えている国も存在する。(第2節のベトナムの例を参照。)

次回では再生資源や中古品の越境移動規制に関して考察していきます。

7.まとめ

本記事では中古品の輸出入が引き起こす問題についてみてきました。不用意な中古品の輸入は安全面や衛生面を脅かす可能性があり、廃棄物増加につながる可能性は除外できません。

またリサイクルは必ずしも良いというわけではなく、公害対策が講じられていない状況下では、人への安全面に加え、環境汚染が懸念されます。

しかし持続可能な経済を実現するためにも各国が規制や、関税といったことに取り組んでいます。輸入する国にも、輸出する側の国にも、経済的かつ環境的な配慮が求められています。

新小樽少年

8.参考文献

この記事は小島道一(2018)「リサイクルと世界経済」中公新書、p91-132を基に書いています。


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