Flower of death 〜死後からの再起〜
第一話
2045年、日本を代表する大企業、株式会社アークから世界に向けた世紀の大発明の発表があり、国内外から、会場に入りきれないほどの記者達が押し掛けていた。
「皆様、お忙しい中我が社の発表にお越し頂き誠にありがとうございます」
株式会社アーク 代表取締役 上野 庄司の挨拶が始まった。
「本日皆様方に、発表したい物が出来ましたので、皆様をお呼び致しました。我がアーク社は主に電子機器の開発、製造を行い日本国内から世界中でお世話になっております。しかし、今回開発した物は商品として発表し、発売する物ではございません。」
記者達には、新しい画期的な商品の発表と伝えてあったため会場中が響めきだした。
「どういう事でしょうか?」
「今日は新商品の発表だったんでは?」
記者席からは様々な質問が飛び交った。
「皆様、静粛に。勘違いさせてしまうような呼び掛けをしてしまい大変申し訳ありません。本日発表させて頂く物は、商品ではございませんが、もしこれを商品化し販売してしまうと、皆様のプライバシー、プライベートすらも全てなくなってしまいます。皆様そんなの嫌でしょ??」
上野は笑みを浮かべながら話し続けた。
「では、これからモニターの方をご覧頂きたいと思います。」
上野の後ろにあるモニターの電源が入り、モニターには記者席の様子が写し出された。
「さあ、これを見てどういう事かお分かりでしょうか??」
ザワザワ…
「どういう事?」
「私達が写し出されているだけど?」
「カメラ?」
「う〜ん、近いですがやはりこれだけではお分かりにはならないでしょうね。この映像は今私が皆様方を見ている映像になります。分かりますか?」
「カメラもないのになぜ見えてるんだ?」
「超小型カメラ?」
上野は笑いながら話しを続けた。
「そうですよね。なんの事か分からないですよね?これを見てください」
上野の手には透明のフィルム状の物を持っていた。
「見えづらいですかね?ではもう一個のモニターもつけましょうか。」
大きなモニターの横にはもう一つのモニターがあり、そちらには上野の方向を向いた映像が写し出された。
「この透明なフィルムが、実はカメラになっているんです。嘘だと思うでしょ?こちらをいろんな角度に向けてみますよ!」
「嘘だ、そんな透明なカメラがあるはずがない。」
「本当に?」
ザワザワ…会場中がまた響めき始め記者達は写真を撮る事を忘れて上野の発表に釘付けになっていた。
「少しずつは信じて頂けましたでしょうか?始めに私が見ている風景とお伝えいたしましたが、こちらはこの透明のフィルムを私の脳内に埋め込んであります。私が見ている物と全く同じ風景をこのカメラは24時間見続けているんです!凄いでしょ?こんな物がもし世の中に出回ってしまったら犯罪とかは減って行くかもしれません、しかし、逆にこれを悪用する事件が多発してしまうと私は考えております。なので、皆様ご安心を。このカメラの作り方は私以外誰も知りません!」
「凄い!!」
「会社として作った物ではないんですか?」
「面白い」
「そうですよね!作った私もこのカメラには衝撃を覚えました。しかし、なぜ私がこれを開発したのか?疑問ですよね?しかも商品化もしないのに皆様を呼び出し、発表する。それには多数の方はご存知かと思いますが、私上野はアーク社の代表でありながら研究者でもあります。私の研究テーマは人の死後になります。このテーマは人間として生まれてきた人は全員が一度は考えた事はあるはず。死んだ後はどうなるんだろ?本当に天国はあるのかな?など。死後とこのカメラは何の関係があるのか?これを本日皆様方の前で実証してみたいと思います!!」
上野は笑っていた。
記者達は上野の理論についていけていないのか、みんなが疑問そうな顔で上野の話しを聞いていた。
「このカメラ、脳内に埋め込む事によってその人の目で見た物が全てモニターに映されます。では、このカメラを付けた状態で人が死んだらどうなりますでしょうか?私は長年、死後の世界について研究して、いろんな方の考えなども聞いたりしてきました。しかし、死んでいない者にはその研究テーマは永遠に終わる事がないのです。なぜなら死んだら全てが終わりだから。生きている間にその答えが分かるはずがない。ですが、一つだけ私は信じているものがあります、それは人の死後、体は無くなってしまうが目で見るという事は残るというのが私の研究結果になりました。幽霊といわれる物体も目で追っていますよね?」
上野は助手の者に合図を出し、黒い布を被された物を持ってきて布を外した。
「皆様これはナイフです!!」
「キャーー」
会場中がパニックになっていた。
「何をする気だ?」
「我々を殺す気なのか?」
記者達は一斉にシャッターを切り始めた。
「安心して下さい。私は皆様に危害を加える事は致しません。先程もお伝えしましたが、このカメラを装着しているのは私ですよ。今日、私の一生を懸けてきた、長年の研究テーマである死後の世界の最終討論をするために、私は皆様の前でこの命を経ちたます。そして、死後の世界には何が待っているのか、皆様の目で確認してもらいたい。」
「死ぬって事?」
またも会場中が響めき席を立って出て行ってしまう者もいた。
「はい。それでは皆様方カメラの準備はよろしいでしょうか?しっかりとTV中継やカメラに納めて世界中にこの情報を発信してくださいね。では皆様さようなら」
上野は自分の腹部にナイフを入れ、倒れ込んだ。
「早く救急車を呼べー」
「キャーー」
会場中がパニックの中、モニターには真っ暗な闇が移し出されていた。
それから、15分後ぐらい経った時モニターの画像に変化が訪れていた。
真っ暗な闇から紫色がかった映像へと変わっていった。
「あれを見て。画面の色が変わっていっているわ。」
「さっきと違う」
さらに10分経った頃だった。
「う、う、うう」
「何か聞こえてきたわ!」
記者達がモニターを見ていると、何か声のような唸りが聞こえてきた。
そして、紫色の世界には白い人のような姿が沢山移し出され始めた。
更に時間が経つにつれ、その映像は白い人間らしき影に近づいていき、会話のような物も聞こえるようなっていった。
そんな時である、白い人影の中心で一際大きく人間ではない姿があった!
「みなさん、ドンドンこっちへ集まってきてね!はいモタモタしないで、説明を始めるからね。」
第二話へ続く。
「ど・ヤンキーホームレス中村君」
2018年11月7日。
東京都府中市の伝説のホームレスヤンキーは、
34歳の若さでこの世を去った──。
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