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ddm @mona records(20231226)

 楽曲の雑食性と組み合わせの妙が生んだ、歓楽の初ワンマン。

 “葵がやりたい音楽を周り巻き込んでやったり、ソロもやる”という葵のフレキシブルなミュージック・コレクティヴ、ddmのワンマンライヴ〈ddm 1st one-man live「心・技・体」〉が、東京・下北沢のモナレコードで開催。初ワンマンライヴというメモリアルなステージにふさわしく、多くの人がフロアを埋めた、賑やかなメイデンヴォヤージュとなった。

 ddmは、“エリボン”の愛称で知られているアイドル・グループのエレクトリックリボンに2022年9月まで所属していた茨城県出身の美伎あおいが、グループ在籍中からも動いていた音楽ユニット。葵がソロで、あるいは数名を招き入れたデュオやトリオなどといったユニット編成でライヴを行なったりもする、流動性や柔軟性をもったコレクティヴなスタイルが特徴だ。

 ddmのライヴを初めて観賞したのは、2021年9月のモナレコードでのミアナシメントの主宰ライヴ〈Friday Night〉(記事→「Mia Nascimento / ddm @mona records」)にて。葵(当時は美伎あおい名義)を中心に、かしょく、アイドル・グループ“美味しい曖昧”の凡やよい(およそ・やよい)が流動的に入れ替わり、最後はミアナシメントとも歌っていた。その時は正式に(そもそも“正式”という概念がないのかもしれないが)ddmのユニット構成員ではなかったと思われるミアナシメントだが、葵との相性の良さも手伝ってか、その後は定期的にddmとしてステージを重ねていたようだ。

ddm 1st one-man live「心・技・体」

 前半は葵とかしょく、後半は葵とミアナシメント、それぞれのコンビを軸にして、その切り替わるタイミングで葵、かしょく、ミアナシメント3名揃ってパフォーマンスをするという構成。
 「エブリデイ・チートデイ」で幕を開けると、かしょくとのコンビでは、ヒップホップ的なビートが立ったトラックを下敷きにラップマナーの歌唱を乗せていく形を中心に進めていく。90年代フレイヴァーもあれば、トリップホップ(アブストラクト・ヒップホップ)の薫り漂うものもあったりと、一辺倒ではないトラックメイクやアレンジのなかで、葵とかしょくはチルなフィメールラップデュオ風のスタイルで、フロアに心地よい熱を起こしていく。

 推進力あるギター・フレーズがループするアッパー・ファンク・ダンサー「9-00」でフロアの熱気に加速度を付けるべくギアを上げていくと、ミアナシメントを呼び込んで、リゾートなムードも漂うフュージョン/レアグルーヴ・トラックをバックに朗らかに歌う「真っ向勝負 for you」(?)で、3名が揃い踏み。

 葵とミアナシメントのコンビにバトンタッチして以降は、90年代ファンキー・ポップを想起させるアレンジと、アダルト作品「マジックミラー号」シリーズをモチーフにした詞世界が印象的な「みらみら」、跳ねるビートの上で“どうでもよくなる!”と歌い放つ姿が痛快な「11」、チャイニーズなメロディラインを用いて華やかなエスニック歌謡を展開する「見捨てないで」など、前半で見せたかしょくとのヒップホップマナー中心のトラックから、ミアナシメントのヴォーカルの弾力性をより活かしたようなダンサブルなトラックへと重心を寄せていく。
 そのほか、ファンキーテクノの色も忍ばせた野暮ったい歌謡曲調の楽曲など、ジャンルレスな楽曲群を次々と披露。葵の音楽的嗜好の雑食性が窺える瞬間が繰り広げられていった。

 アンコールは、本編で披露した楽曲を、葵のパートナーをチェンジしたヴァージョンで披露。冒頭でかしょくと歌った「エブリデイ・チートデイ」をミアナシメントのコンビで歌った後は、本編ラストでミアナシメントと歌った「愛っていうんだって」を今度はかしょくとのコンビでパフォーマンス。ややハスキーも人懐っこさが伝うかしょくとの組み合わせは、“枯れ”やノスタルジックな色味も押し出されたものとして、伸びやかで弾けるグルーヴで歌い上げるミアナシメントとは、葵との異なるヴォーカルアプローチを楽しめるバディとして、それぞれの違いを一度に堪能する“一粒で二度おいしい”的なアクトとなった。

 まだ、正式リリースしている楽曲は少ないようだが、アルバム作成が可能になりそうな正式リリース楽曲数となれば、ライヴの充実はもちろん、ソロのほか、コレクティヴならではの組み合わせによる多彩なパターンで楽しめるステージも展開できそうだ。今後どのような形態でddmがその都度進展していくのかにも注目しつつ、2ndワンマンでの成長を期待したいところだ。

◇◇◇
<MEMBERS>
葵(vo)
かしょく(vo)
ミアナシメント(vo)

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【ddmに関する記事】
2021/09/10 Mia Nascimento / ddm @mona records
ddm @mona records(20231226)(本記事)

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