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漫画家の自伝的漫画が面白い〜9で割れ!/矢口高雄

唐突ですが、ドングリfmというpodcast番組をご存知でしょうか?
Podcast自体の認知度が微妙、さらにその中で自分に合った番組を選択し、定期的に聞いているという方がいらっしゃったら結構マニアックな方かと・・・.

一応、理系ぽく認知度を調べてみると、データはありました。
詳細までは確認できていませんが、podcast自体の認知度としては自分の肌感覚でも周囲の半分いかないくらいかな〜という感じなので、大きく外れてはなさそうです。


閑話休題。
そのドングリfmというpodcast、鳴海さんとなつめぐさんというおじさん二人が特定のテーマに絞らずゆるゆると喋る脱力系番組。時々お二人の「最近良かったコンテンツ」紹介がなされるのですが、個人的にこれが結構ツボ。
自分はお二人とほぼ同世代なので、共感ポイントの重複が多いような気がします。
先日の番組で紹介されていたのが、本書。
釣りキチ三平で有名な矢口高雄先生の自伝的漫画。
手塚治虫、東村アキコ、藤子不二雄・・名だたる漫画家が自伝的漫画を描いていますが、個人的には全部面白い。
恐らく、自分が社会人になって「仕事」というものに向き合い、家族を持ったからこそわかる一流の仕事人の狂気とでも言いましょうか、当然のことながら、分野限らず一流と言われる人はそれ相応の努力と苦労をしてきているという当たり前の事実に気付かされます。

実は銀行員だった矢口高雄

矢口高雄というのはペンネームみたいなもので、本当は高橋高雄という名前だそう。
自分は本書を読むまで知りませんでしたが、田舎の高校を出て秋田の地方銀行に就職、10年以上を銀行員として過ごすというキャリアを歩んでいます。

多くの漫画家さんが小さい頃から漫画家に憧れ、アシスタントを経るなり、何かの賞に応募して受賞、デビューみたいなルートが多い中、異色な印象を受けます。

自分は生まれが飽きたということもあり、勝手に親近感と好感を抱いております。秋田県人は人口の少なさと県としての目立たなさを反映してか、秋田出身者を無条件で好きになるという性質のお持ちの方が多ような気がします。
自分もその一人で、矢口高雄先生に限らず、野球の落合、佐々木希、柳葉敏郎さんなんかを心の中で応援しています。。w

矢口先生も、子供の頃から漫画と絵が大好きだったけど、社会人になってから漫画を離れるという、ある意味他の多くの会社員がたどるのと同じ道を歩んでいます。
しかし、たまたま転勤となった場所に本屋の娘さんも勤務していて、数年ぶりに漫画雑誌に掲載されている白土三平先生の漫画を見、雷に打たれたような衝撃を受けます。

それにより、昔の「火」が再燃します。
しかし、すでに妻も子も抱えいて、簡単に自分のやりたい道に進むという選択もできない。
そんな彼は、帰宅後を含めた隙間時間を制作に充てるという手段にでます。
今でこそ副業が認められつつある社会ですが、矢口先生の時代はもちろんそんな時代でもない。
どこまで本気の発言か分かりませんが、上司に「妻の出産なんで休みをください」というと、「お前が産むのか(お前が休む必要があるのか)」というのを言われる時代。時間の捻出には今の時代とは比較にならない苦労があったことと思います。

応募はするものの・・

なんとか作品を書き上げ「ガロ」という雑誌に応募するものの、残念ながら落選。
納得のいかない矢口さんは、フィードバックをもらいに編集部を訪ねるという思い切った行動に出ます。ちなみに、矢口さんは秋田勤務、編集部は東京です。

で、そこで絵の下手さや読者にウケるネタについて、厳しい言葉を浴びせられるわけですが・・そこでゲゲゲの鬼太郎で有名な水木しげる先生を紹介してもらい、職場を訪ねたことが人生の転機になります。

ある程度結果が出てしまっている今からすると、名の知れた有名な先生となっている矢口さんですが、当時、銀行員として働き、片手間で作品制作をしている状態。しかも、多くの漫画家のデビューよりだいぶ年齢を重ねており、技術の面でも不安もある。

そんな中で、水木しげる先生や池上遼一さん(当時、水木しげるのアシスタントをしていたそう)に褒め言葉やアドバイスをもらい、自信が芽生えます。
もちろん、プロになるには勤めていた銀行を辞める手続きや家族の説得など、その後も続くわけですが、この出会いが人生の転機になったようです。

現代の社会の風潮を見て思うこと

こうして、のちにご自身の釣り好きも生かして三平が生まれます。

今、世の中を俯瞰してみると
・男性も育児に参加し、子育てをしなければならない
・働きすぎはだめだ
という風潮が強いように思います。

少子高齢化の進行が世界的に見てもトップを走る我が国。
男女平等かつ子供の生みやすい環境を構築しなければ立ちいかなくなるという危機感からそういった政策の方針が作られる事情はわかります。
でも、手塚治虫先生に本書の矢口高雄先生。
今の評価軸からすると、全然「いいパパ」ではないのかも知れません。

休みの日に子供の相手をしない、ある意味家族そっちのけで制作に打ち込んでる。ある意味、その制作意欲には狂気を感じるほど。
狂気といえば、↓に出てくる美術の某先生も狂気(描け〜!!)

もちろん、誰かに過度の負担がかかったりそれにより心身を害するというのは別な話かとは思いますが、なんか今の男女平等やワークライフバランスというのは、過度に各人の自由を奪っているような気もします。

たとえば、育休を取るのが当然だ、取らねばならないという空気感・同調圧力がありますが、家族同意の上であれば、父は稼いで母は家を守るという従来のスタイルを選択する家が合ったっていいし、父がめちゃくちゃ稼いで、そのお金で子育てを支援してもらうという選択肢だってありだと思います。
(育児休職の選択をする方を批判する意図は全くなく、選択肢という観点での発言です)

どういう立場だから、というしがらみにとらわれず各人がもっと自由に選択できる。そんな世の中になればいいなと思う今日この頃でした。

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