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元ゲーマーの私と現役ゲーマーの夫の子育て日記

〜デジタルネイティブ世代の子どもとゲーム事情〜
ゲームと子育ての悩ましい関係について、小学6年生の息子の母であり、ファミコン世代でもある私が、実体験を元に綴る体を張った子育て日記。

※noteの執筆及び公開については、息子と夫の許可を得ています。
※これは首都圏に住む公立小学校6年生の息子についての記事であり、地域、性別(LGBTQ+を含む)、子どもの個性、性格、家庭の状況等により事情が異なることを前提にお読みいただければと思います。


1 はじめに

我が家には、小学6年生の息子がいる。ひとりっ子である。
あれは息子が2歳になったばかりの頃だったろうか。いつものようにEテレの子ども番組を見ていた時、息子がとことことテレビの前に歩いていき、画面のあちこちを右手の人差し指で押し始めた。そして、「ん?」と不思議そうな顔をして私の方を振り向いた。
私ははっと気がついた。そうか、この子はテレビ画面をタッチパネルだと思っているんだ。
これがデジタルネイティブ世代なのだと、初めて実感した瞬間だった。

2016年発売のニンテンドー クラシックミニ
ファミリーコンピュータ

私は、中学卒業まで北海道の片田舎で育った。小学生の頃、発売されたばかりのファミコンが欲しくて、両親に誕生日やクリスマスのたびに買ってほしいとねだったが、すげなく断られ続けた。小学6年生の時に、親にバレないようにこっそり祖母に買ってもらうというインチキ裏技を使って本体を手に入れ、既成事実を作り親を諦めさせ、一日1時間だけという約束で毎日遊んでいた。
街に一つしかない商店に奇跡的に1本だけ入荷したドラゴンクエストⅢを発売日に手に入れた時の嬉しさは、今もはっきりと覚えている。隅々まで遊び倒し、小ネタを見つけては某雑誌に「スヌーピーの恋人」というペンネームではがきを送り、掲載された黒歴史思い出がある。大学時代はダビスタにはまり、重賞合計21冠の牝馬を育成した。

出産後は子育てと家事と仕事のマルチタスクをこなすのに精一杯で、息子を寝かしつけたあとに3DSで世界樹の迷宮シリーズを細々とプレイするのが癒しタイムだった。しかし、2017年に藤井聡太四段(当時)の29連勝をきっかけに将棋沼に落ちてからは、観る将とパーティー将活動でゲームをする暇がなくなり、ガチゲーマーを引退し、息子や夫がゲームをプレイするのを見て満足している。あ、今は将棋を指しているので、そういう意味では現役ゲーマーと言えるかもしれない。

一方、首都圏で生まれ育った夫は、パソコン通信時代からのガジェットマニアで、中学生の頃から秋葉原のパソコンショップに通い、自作PCを組んでいる。休日は中古ショップのリアル店舗やネット店舗を巡り、ジャンク品扱いで安く売っているノートパソコンやSwitchのJoy-Conなどを吟味し、これはというものを買っては分解して直して綺麗に掃除して新品同様にするのが趣味である。時々中国からPCパーツが届き、「日本だと6000円するのが、中国から買うと送料込みで2000円だった」と喜んでいる。

夫が大切に保管している
「秋葉原電脳市場」1992年8月発行

夫はウィザードリィをこよなく愛し、日本で買えるゲーム機はほぼ発売当日に購入している。現在、我が家には、プレイステーション5が1台、Nintendo Switchが3台(通常モデル2台、有機ELモデル1台)、Switchのプロコンが5台ある(中古購入品を含む。以下同じ)。付け加えると、iPadは、この文章を書いている2024年3月時点でApple Storeで購入できるすべてのモデルが揃っている。

ファミコン版ウィザードリィ Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ
1987年から1990年にかけて発売された

うちの子に生まれた以上、遺伝的にも環境的にも、息子がいずれゲーマーになるのは確実だった。

2 息子とゲームとの出会い

息子は、3歳の頃にポケモンにはまり、毎週アニメを見るようになった。当時放送されていたのはポケットモンスターX・Y。私もポケモンは赤・緑からゲームをプレイしていたので、昔を懐かしみながら一緒にアニメを見ていた。

3DS用のゲームソフト「ポケットモンスター サン・ムーン」が発売された2016年11月18日。私はサンを、夫はムーンを購入して、それぞれの3DS LLで遊んでいた。当時4歳だった息子はまだ操作ができず、私や夫が遊ぶのをのぞきこんでいた。
そんな時、絵本を探しに行った古本屋で、サン・ムーンのストーリー攻略本&キャラクター図鑑を見つけた息子は、どうしてもこれが欲しいと言い、本を手放そうとしなかった。
それからというもの、息子は分厚い攻略本と図鑑に熱中し、ポケモンのキャラクター、タイプ、進化形などをものすごい勢いで覚えた。バトルの時に「ママ、この敵はあくタイプだから、フェアリータイプの技のこうかがばつぐんだよ!」と的確な指示が飛んでくるようになり、あっという間に私を知識量で負かした。

そして、気がつくと、息子はカタカナの読み書きを完璧にできるようになっていた。

しおりがわりの付箋や駐車券がはさんである
息子独自の基準で分類したらしい

また、当時、「ポケモンガオーレ」という、ゲームセンターで遊べるアーケード型ポケモンゲームが流行っていた(2020年秋に稼働終了)。1プレイ100円で、ガオーレディスクというポケモンが描かれたプラスチック製のカードを筐体に差し込んでバトルをし、勝利かつモンスターボールを投げて敵ポケモンを捕まえられれば、そのポケモンのガオーレディスクをゲットできる。ただし、そのために追加で100円を投入しなければならないあこぎなシステムである。

息子は、コロコロコミックの付録か何かで手に入れたガオーレディスクを持っていた。ショッピングモールのゲームコーナーで「みんなやってるから、僕もやりたい」と言ってきた時、私は財布から100円玉を2枚出して息子に渡して遊ばせた。そして、息子に問いかけた。
「ガオーレは最初に100円を入れて、新しいカードをゲットするのにもう100円入れないといけなかったよね?」
「うん」
「じゃあ、新しいカードをゲットするのに全部で何円かかったかな?」
「200円」
「そうだね。じゃあ、1000円あったらカードは何枚ゲットできるかな?」
「5枚」
「正解!」「サン・ムーンのソフトは5000円くらいだよね。5000円で、ガオーレのカードは何枚もらえるかな?」
「えーと……1000円で5枚だから……25枚」
「そうだね。カード25枚と、サン・ムーンのソフトだと、どっちがたくさん遊べると思う?」
「ソフト」

それ以来、息子はポケカやデュエマなどの課金系カードゲームに一切手を出していない。

3 神ゲーム「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」

2017年3月3日、Nintendo Switch/Wii U用のソフト「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(通称「ブレワイ」)が発売された。完全オープンワールドの美しいグラフィックと洗練されたストーリー、やり込み要素満載で、世界的に大人気を博した。

小学1年生になった息子は、夫がプレイする横でテレビの画面に釘付けになっていた。ブレワイは操作が難しく、息子が自分で遊ぶのは無理だった。そこで、息子は攻略本を徹底的に読み込み、祠の位置やストーリー展開を把握し、夫に「次はこっちの祠をクリアしたらイベントが起きるよ」などとアドバイスをし始め、夫と二人三脚でブレワイの攻略を進めていった。

息子が読み込んだ攻略本がこちらである。A5版、全495ページ。

ページが取れている、年季の入ったブレワイ攻略本

この経験から、息子が得られたと思われることをまとめてみる。
なお、息子は学習塾に通ったことはない。学校の勉強と宿題のほかは、Z会の通信教育のタブレット学習を1日10分程度続けている。

(1) 漢字の知識

攻略本にはふりがながないが、息子は単語の前後関係や文意から読み方を自然に覚えたようで、難なく読みこなしていた。小学校の漢字テストは、1年生から6年生まで好成績を維持した。

(2) 読書好き

息子は、学校の図書館からよく本を借りてくる。また、私も夫も本好きなので、自宅には大量の本と漫画がある。息子のお気に入りは、小説はハリー・ポッターシリーズ。漫画は「はじめの一歩」「動物のお医者さん」「将棋の渡辺くん」で、漆原教授の「このカシオミニを賭けてもいい」が普通に通じる。

(3) 語彙力と読解力

通知票の先生からのコメント欄には、毎年「読解力に優れている」と書かれている。
小5の夏に受けたZ会の日本語運用能力テストで、聞く力・読む力・書く力・語彙力の総合評価で高校入試挑戦レベルと判定された。

Z会で受検した日本語運用能力テストの結果
小5で高校入試挑戦レベルと判定された

(4) 目標を設定し、達成するための具体的方法や手段を筋道立てて考える力と、うまくいった時の達成感

完全オープンワールドというブレワイの特性上、ストーリー攻略を優先するか、やり込み要素に目を向けるかは、プレイヤーが自由に選択できる。息子はその時々で何をしたいか判断し、①次のエリアに進むためにはこの祠を開放する必要がある、②祠のミッションをクリアするにはどうするか、③リモコンバクダンを手に入れて、ヒビブロックを壊して先に進めばいい、と順序立てて考えることを繰り返していたと思われる。
また、自分で考えた方法で成功した時は、達成感を味わっていたであろう。夫が一緒に喜んでくれれば、達成感は何倍にもなる。

(5) 言語化能力とコミュニケーション能力

息子がブレワイのナビ役をやり始めた当初は、言いたいことが夫にうまく伝わらず、「ちがう!」と泣き出すことがあった。しかし、それでも毎日繰り返すことで、攻略本を読んで頭の中で考えたことを、わかりやすい言葉で伝える力がついたように思う。
また、夫との双方向のやり取りにより、コミュニケーション能力を身につけていった。ブレワイタイムは、父子が楽しく交流する時間でもあった。

4 ゲームを介した友達付き合いとトラブル対策

今は、テレビ本体に大容量の録画機能がついているし、Amazonプライム、ABEMA、YouTubeなど様々な媒体で好きな番組を見たい時に見ることができる。私が子どもだった頃のように、土曜の夜8時に「8時だョ!全員集合」を見るためにテレビの前で釘付けになる必要はなく、月曜に「志村面白かったよな」とクラス全体で盛り上がることもない。

学校での息子と友達との話題は、ゲーム関係が多いそうだ。リアタイに価値があるほぼ唯一のコンテンツはNintendo Direct(任天堂が発売する予定のゲームソフトの情報などを紹介する映像コンテンツ)で、配信がある日は、夜更かししたリアタイ勢と、翌朝早起きして見た勢とで、新作ソフトの話題で盛り上がるという。

また、好きなゲームソフトによって友達グループがゆるやかに形成されている様子がうかがえる。息子の同級生男子だと、スマブラは遊んでいる子が多いが、下位分類はスプラ系、マリオ系などに分かれており、息子は遊ぶ友達によってソフトを変えている。

Switchのソフト。左からスプラトゥーン3、
大乱闘スマッシュブラザーズ、スーパーマリオオデッセイ

何事にも、プラス面があればマイナス面もある。ゲームに関するトラブルの例としてよく挙げられるのは、Switchのアカウントに登録した親のクレジットカードで子どもが多額の課金をしたり、チーム戦で仲間からはぶかれたりといったケースである。
息子が低学年の頃。Switchを持っていない子が、ゲーム目的で友達の家に遊びに行くうちに、玄関に合鍵があることに気づいてそれを盗み、両親が仕事かつ友達が習い事で不在になる時間帯を把握し、勝手に家に上がり込んでゲームで遊んでいたことが発覚して、ちょっとした騒ぎになった。双方の親御さんの気持ちを考え、私はなんともやりきれない思いを抱いた。まさかそこまでやるとは、だれも思っていなかっただろう。しかし、子どもは時に大人の想像をはるかに超えることをやらかす。良い意味でも悪い意味でも。

我が家では、友達の家に遊びに行く時は必ずその子の親が在宅している時にし、うちに遊びに来てもらう時は私か夫のどちらかが家にいる。普段玄関に置いている車の鍵や印鑑は、事前に見えないところにしまう。

個人情報保護の観点から連絡網が廃止されたため、息子の友達の親御さんと連絡を取りたくても連絡先がわからないことが多々あり、授業参観の時に必死に探して声を掛け、挨拶をしてLINEを交換する。別のクラスの子だとそれも難しいので、ゲームで遊ぶ時はうちに遊びに来てもらうようにしている。

息子の友達に、スイミングスクールの送迎バスもクラスも同じで仲良くなった他校の同学年の男子がいる。スイミングの帰りのバスの中で遊ぶ日時を決めて、その時間にSwitchのソフト「フォートナイト」(通称「フォトナ」)にアクセスし、ヘッドホンをつけて会話しながらオンラインで遊んでいた。その子がスイミングをやめる時、私は息子に以後の連絡手段を固定電話にするよう伝え、メモに書いて持って行かせた。それから2年経った今も、毎週固定電話で連絡を取り合い、フォトナをやりながらゲラゲラ笑っている。

こうして、息子は固定電話のかけ方をマスターした。

5 ペアレンタルコントロールとセルフコントロール

我が家では、4で述べたトラブル対策以外にも、スマホやiPadで有害サイトにアクセスできないようにする「フィルタリング機能」、Switchの電源を入れてから1時間半で強制的に電源がオフになる「みまもり設定」など、機器に様々な設定をしている。一般に「ペアレンタルコントロール」と呼ばれるものだ。

しかし、いくらペアレンタルコントロール機能で制限をかけたところで、その気になれば抜け道がいくつもあることを、私は自らの経験上よく知っている。
子ども自身がゲームとの適切な付き合い方を見つけ、自分の欲望をコントロールできるようにならなければ、結局のところ親が止められるものではないのである。

セルフコントロール力を養うために、我が家が採用している方法は次の二つである。

(1) ゲームをするのはやるべきことをやってから

息子が毎日やるべきことをリストアップし、順番とタイミングを息子と話し合い、次のようなルーティンを決めた。
① Z会のタブレット学習は朝登校する前に終わらせる、②宿題はできるだけ学童で済ませる、③帰宅して私が夕食を作っている間に、学童でやり残した宿題と習い事のピアノの練習を終わらせる、④夕食後は自由時間(ゲーム、テレビ、YouTube、読書)〜入浴して午後10時までに布団に入る。
ルーティンを決める時に私が大切にしたのは、親目線の理想のルーティンを押し付けるのではなく、息子の考えや学童での過ごし方をよく聞いて、親子の合意のもとに決めることである。息子は、自分で決めたことは最後までやり通す性格なので、今は私が何も言わなくても自分でルーティンに沿って行動している。

(2) ゲーム関連の親の失敗談を反面教師にしてもらう

私は、高校生の頃、東京に行きたい大学があり、模試でA判定が出ていた。しかし、親に経済的負担をかけたくない気持ちが強かったことや、田舎者の私が東京に出ることへの漠然とした不安感から、誰にも相談せずに、自分で勝手に北海道内の大学を受験することにした(今から考えると浅はかだったと心底思う)。余裕で合格圏内の大学だったこともあり、急激にやる気をなくした私は、センター試験の約1か月前にゲームセンターのルーレットでたまたま大当たりを出し、ゲーセンに入り浸ってコインゲームを延々とやっていた。結果、センター試験は散々で、受験する大学のボーダーラインぎりぎりの点数。担任の先生に「お前どうした?」と聞かれて何も答えられなかった。その上、無駄な受験料を払いたくなくて、滑り止めの私大を一校も受けていなかった。追い詰められた状況で、二次試験までの約1か月間は一日約13時間勉強し、なんとか現役合格した。

思春期の入口にいる息子は、私が説教すると屁理屈を言い返してくるが、失敗談や黒歴史の話は嬉々として聞き、もっと話せとせがんでくる。
反面教師になればと、私は日々身を削っている。

6 おわりに 〜いっしょに楽しもう!〜

2023年10月29日。「ゲームセンターCX 有野の挑戦 inさいたまスーパーアリーナ 20周年大感謝祭」で、私と夫と息子は、よゐこの有野晋哉が扮する有野課長のレトロゲーム生挑戦を見守っていた。3人そろって来場者プレゼントの冷えピタをおでこに貼り、「課長がんばれ!」と叫び、課長がチャレンジに成功すると「すごい!」「やったー!」と拍手して大盛り上がりだった。

「パンチアウト」「キャプテン翼」「魂斗羅スピリッツ」
など因縁の7タイトルに挑んだ勇者、有野課長

我が家の場合は、親子共通で好きなことがゲームだった。
将棋でもサッカーでもなんでもいい。子どもが興味を持ったことの中で、親自身も好きなジャンルがあれば、子どもと一緒に本気で楽しむことが大切なのではないかと、私は考えている。親が子どもに合わせて楽しそうなふりをしても、子どもにはすぐにばれる。

「好きこそ物の上手なれ」というとおり、子どもの好きなことへの集中力はすさまじく、ものすごい勢いで上手になり成長する。いわゆるお勉強以外であっても、好きなことから学べる知識や社会常識はたくさんあり、様々な発展性がある。

今春、中学生になり、本格的な思春期を迎える息子が今後どんなふうに育っていくのか、ほどよい距離感を探りながら見守っていきたいと思っている。

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