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【読書】「自分らしく生きる」という無理ゲー社会に生きる現代社会の若者たち


『無理ゲー社会』は、2021年7月末に発売されてから、約7万部を売り上げたという報道があります。 この本は、現代社会の分断と絶望を描いたもので、多くの若者や社会的に不利な立場にある人たちの共感を呼んだと考えられます。 また、コロナ禍の影響で、社会の不公平や不安がさらに深まったことも、本書のヒットの背景にあると思われます。

「無理ゲー社会」橘玲著

私たちは、自分らしく生きることに価値を置くリベラルな社会に生きています。しかし、その裏には、知能や才能、経済や性愛などの格差が深刻化し、多くの若者が絶望や不安にさいなまれている現実があります。

橘玲さんの著書『無理ゲー社会』は、このような現代社会の残酷な構造を鋭く分析し、読者に衝撃を与える一冊です。本書を読んで、私は自分の人生や社会に対する考え方が大きく変わりました。本書の要約と私の感想について、以下に述べたいと思います。

『無理ゲー社会』は、橘玲さんの著書で、現代社会のリアルな分断と絶望を描いています。 本書の主な内容は以下のとおりです。

  • 現代社会は、自分らしく生きることに価値を置くリベラルな社会ですが、それは才能や知能のある者にとってはユートピア、それ以外にとってはディストピアである。

  • 知能格差は遺伝によって大きく左右され、経済格差や恋愛格差にも直結します。 遺伝ガチャで人生はほぼ決まっている。

  • 努力すれば夢は叶うというメリトクラシーの神話は、実際には不平等を正当化するプロパガンダであり、 機会平等は結局不平等を生むものだ。

  • 人生の攻略難易度はここまで上がっており、多くの若者は将来に対して絶望や不安を抱えています。 早く死にたいと思う人も少なくない。

  • このような無理ゲー社会から脱するには、運の平等主義や教育の再構築、安楽死の合法化などの斬新な提案が必要であろう。

本書の第4章では、加藤智大が取り上げられています。彼は2008年に秋葉原で無差別殺人事件を起こした死刑囚です。本書では、彼が事件を起こすまでにどのような経緯があったのか、彼のメールやブログなどの発言から分析しています。具体的には、以下のような点が指摘されています。

1.彼は母親から厳しい教育を受け、高校を中退した後も自宅で勉強を続けていたが、大学には入れなかった。そのため、学歴や知能にコンプレックスを抱いていた。

2.彼は恋愛にも興味があったが、女性との交流は皆無に等しかった。彼は「女神」と呼ぶ運命の女性に出会いたいと思っていたものの、現実には非モテであり、そのため、性愛や結婚に対する憧れや不満を募らせていました。

3.彼は自分の人生に対して絶望感や無力感を抱いており、自分の人生を変えるために努力していたが、なかなか成果が出なかった。また、自分の人生を一発逆転させる方法を探してみたものの、ついに見つけることができなかった。

4.彼は社会に対しても不満や怒りを感じていた。自分が社会の底辺にいると感じており、社会の上層にいる人たちには理解されないと思い込んでいた。そして、社会の不公平や不正を訴えることができなかった。

まとめと感想

本書では、彼のような人物が「無理ゲー社会」の中で生まれやすいと指摘しています。また、彼のような人物が社会に対して暴力をふるうことを防ぐためには、どのような対策が必要なのかについても提言しています。

私は、この問題に対する一つの見解として、社会の分断や絶望を減らすためには、個人の努力や運だけに頼らず、社会全体で支え合う仕組みや文化を作ることが必要だと思います。

例えば、教育や医療などの公共サービスの充実や、極めて実現の可能性は低いですが、ベーシックインカムなどの所得保障制度の導入などが考えられます。

また、人間の幸せや価値は、知能や才能だけではなく、多様な要素によって決まるということを認め、尊重することも大切だと思います。 このような見解は、本書の著者の見解とは異なるかもしれませんが、私は、社会の問題に対して、より建設的で希望的なアプローチを探ることが重要だと考えています。

また、本書は現代社会の残酷な構造を鋭く分析し、読者に衝撃を与える一冊だと思います。 著者は多くのデータや事例を用いて、知能格差や遺伝ガチャのタブーに踏み込み、リベラルな社会の矛盾や問題点を浮き彫りにしています。

一方で、本書はあまりにもネガティブで悲観的な見方に偏っていると感じる部分もあります。 たとえば、遺伝だけで人生が決まるというのは、環境や教育の影響を無視していると思います。

また、努力や学習の意義や効果を否定するのは、自己肯定感や希望を奪うことになりかねません。 さらに、安楽死の合法化などの提案は、倫理的にも実現可能性にも疑問が残ります。

本書は、社会の現状を知るためには参考になると思いますが、解決策や展望については、もっと多様な視点や議論が必要だと思います。 本書を読んだ後には、自分なりに考えることが大切だと感じました。

様々なSNS同様に、余りにもネガティブ感情を煽り不安に陥れるという作者の独断的な解釈に基づく一連の著作は、現実を知るうえで参考とすべき要素が満載ですが、未来を担う若者にとっては、オススメできるものとは到底思えません。

このような世界があることを認知する上で参考に留めおく程度で良いのではないでしょうか。これ以上悲観的な世界を知り得たところで、建設的な改善や対策となるとは思えません。ペシミスト(悲観主義者)やミソジニー(女嫌い)を量産したところで未来が開けて来るとは考えられないからです。

私たちはこの著作より得た、現実の恐怖やディストピア思想を踏まえつつ、前途を悲観しないような生き方を講ずることを考えていきたいものです。


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