【創作大賞2024】約束のキャンバス（キャンパス）

#創作大賞2024

約束のキャンバス

都立港区大和やまと高校の美術室で、高原翔と川原咲さきは出会った。二人はすぐに意気投合し、共に東京藝術大学を目指すことを誓った。翔の力強い油絵と咲の繊細な水彩画は、互いに補完し合うように美術室の壁を彩った。咲の親友である東あゆみも、二人を応援していた。

毎日放課後、翔と咲は一緒に絵を描き、夢を語り合った。咲は翔の描く世界に魅了され、翔は咲の優しい色使いに心を奪われた。二人の間には、言葉にしなくても通じ合う特別な絆が生まれていた。翔は咲を「咲っぺ」と呼び、咲は翔を「翔ちゃん」と呼び合う仲だった。

クラスメイトには、医学部を目指す真面目な柳川や、わんぱくでいつも元気な池田もいた。柳川は勉強熱心で、将来は医師になることを夢見ていた。池田はスポーツ万能で、クラスのムードメーカー。彼らもまた、翔と咲の夢を応援していた。

しかし、運命は二人を試すかのように厳しい現実を突きつけた。咲の家族は突然の転勤で遠く離れた町へ引っ越すことになったのだ。咲は涙ながらに翔に別れを告げたが、二人は再び会うことを誓い合った。

「必ず東京藝大で再会しようね」と、咲は翔に約束の絵筆を手渡した。その絵筆は、二人の夢と希望を象徴する大切なものだった。

時が経ち、咲は新しい環境で懸命に絵を描き続けた。翔もまた、咲との約束を胸に刻みながら努力を重ねた。そして、ついに東京藝術大学の合格発表の日が訪れた。

咲は緊張しながら合格通知を手に取り、翔との再会を夢見て東京藝大上野キャンパスに足を踏み入れた。しかし、そこに翔の姿はなかった。翔は病気で入院しており、大学に通うことができなかったのだ。

咲は翔の病室を訪れ、約束の絵筆を手渡した。翔は涙を浮かべながら咲の手を握り、「君の夢を叶えてくれ」と言った。咲は翔の言葉を胸に、彼の分まで絵を描き続けることを誓った。

大学生活は忙しく、課題や展示会の準備に追われる日々が続いたが、咲は毎日翔のことを思い出しながら筆を走らせた。あゆみもまた、咲を励まし続けた。

ある日、大学の教授である関山先生から大きな展覧会への出展を勧められた。咲は翔との約束を果たすため、この展覧会に全力を注ぐことを決意し、彼女は翔との思い出をテーマにした作品を制作し始めた。桜の花びらが舞う春の日、二人で描いた美術室、そして約束の絵筆。咲の作品には、翔との特別な絆が込められている。

しかし、咲は翔があゆみを好きだと誤解してしまう。ある日、咲は翔とあゆみが親しげに話しているのを見てしまい、胸が締め付けられるような思いを抱き、咲は涙をこらえきれず、美術室で一人泣いてしまった。

その時、咲に横恋慕している大山が現れた。彼は咲の涙を見て心配し、優しく声をかけた。「咲、大丈夫か？何があったんだ？」

咲は涙を拭いながら、大山に誤解を打ち明けた。大山は咲の気持ちを理解し、彼女を励ました。「咲、翔は君のことを大切に思っているはずだよ。誤解を解いて、ちゃんと話し合ってみたらどうだ？」

咲は大山の言葉に勇気をもらい、翔と向き合う決意をする。彼女は翔に自分の気持ちを正直に伝え、誤解を解くことができた。翔もまた、咲への思いを再確認し、二人の絆はさらに深まっていく。

展覧会の日が近づくにつれ、咲の作品は完成に近づいていった。しかし、翔の病状は悪化し、彼が展覧会に来ることは難しいと知らされた。咲は悲しみを抱えながらも、翔のために最高の作品を仕上げることを誓った。あゆみもまた、そんな咲を励まし続けた。

展覧会当日、咲の作品は多くの人々の目を引いた。彼女の絵には、見る者の心を揺さぶる力があった。咲は翔のことを思いながら、作品の前で涙を流した。その時、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

「咲っぺ、君の絵は本当に素晴らしいよ。」

振り返ると、そこには車椅子に乗った翔がいた。彼は医師の許可を得て、展覧会に駆けつけてくれたのだ。咲は翔の手を握りしめ、二人は再会の喜びに涙を流した。

「翔ちゃん、約束を守ってくれてありがとう。」

「咲っぺ、君の夢を叶える姿を見られて本当に嬉しいよ。」

二人は再び絵を描くことを誓い合い、未来への希望を胸に抱いた。咲の作品は展覧会で高く評価され、彼女は翔との約束を果たすことができたのだった。

その後、咲は東京藝大上野キャンパスでの学びを深め、さらに多くの作品を生み出していく。彼女のキャンバスには、いつも翔との思い出と約束が描かれていて、翔もまた、咲の成功を見守りながら、自分の夢を追い続けた。

This story is a fiction, and it doesn't relate to the event of real existence.  この物語はフィクションであり、現実に存在する出来事とは関係ありません。